メリル・ストリープ×トミー・リー・ジョーンズ
一幕物の戯曲さながら俳優たちのやりとりを楽しむ
結婚の先の先、団塊世代の悩み相談をコミカルに描く
メリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズ、大御所のオスカー俳優の共演により夫婦の危機を描く。共演は『リトル・ミス・サンシャイン』のスティーヴ・カレル、監督は『プラダを着た悪魔』でストリープとタッグを組んだデヴィッド・フランケル。ケイとアーノルドは結婚31年目の夫婦。妻ケイの強い希望により、ソームズ夫妻は結婚生活のカウンセリング集中講座に1週間通うことに……。団塊世代の愛と結婚生活の悩みを赤裸々に描き、演技派俳優たちの顔合わせを楽しむコメディである。
結婚してから31年、ケイとアーノルドは毎日ほぼ同じ生活をしている。同じ時間に朝食、出勤、帰宅、夕食、そして同じ会話をして、夫は同じゴルフ番組を見て、夫婦は別々の寝室で眠る。ある晩、ケイが勇気をだしてアーノルドに一緒に寝たいと伝えると、やんわりと拒絶される。夫婦関係を見直したいと考えたケイは、本屋で結婚生活のカウンセリング本を購入して熟読。その著者バーナード・フェルド医師が郊外で行っている1週間の“カップル集中カウンセリング”に申し込む。
3人の俳優がカウンセリングルームで話すシーンを中心に構成され、一幕物の戯曲のように俳優たちのやりとりが楽しめる仕上がり。ただ若い世代にとって、親世代の生々しい話を知りたいかどうかは難しいところ。若い層や独身者には受け入れられにくいかもしれない。主人公の夫婦は子どもたちも独立し、2人だけの生活を送る団塊世代。ターゲットは団塊世代と、いまも元気で注目されている層に向けて明確に発信されているところが興味深い。
妻ケイ役はストリープが一途に世間知らずな様子で、夫アーノルド役はジョーンズが生真面目で無粋な性格を的確に表現。劇中のソームズ夫妻はかわいい純真なおかあさんと頑固一徹な親父さんの組み合わせで、日本の昭和の夫婦をすこし思わせるような感覚も。夫婦にカウンセリングを行うフェルド医師役はカレルが真顔で。コメディで知られるカレルがいかにも医師然としているだけで、そこはかとなく可笑しい。カウンセリングのシーンではリアルさを大切にするためにリハーサルをしないこともあったそうで、カレルはこんなふうに語っている。「想像してみて欲しい。アカデミー賞常連のメリル・ストリープとトミー・リー・ジョーンズの向かいに座って、9ページにもわたるシーンの撮影が始まる。“アクション!”の一声で本番だ。当然、ものすごく怖かったよ。きっとデヴィッド(監督)は、僕の困惑する表情を撮りたかったんだと思うけれど、実は同時に少し楽しくもあった。リハーサルをしすぎないようにしたのは、新鮮で自然な演技を求めていたからだろうね。パターン化してしまうより、自分たちで探りながら進めるほうが、よりリアルになるだろう?」
この映画が製作されたいきさつは、本作のプロデューサーであるガイモン・キャサディの妻で脚本家でもあるロビンが、バーベキュー・パーティーでこの映画の脚本家ヴァネッサ・テイラーと知り合って本作の脚本を渡され、いたく気に入ったことから始まったとのこと。そして夫のキャサディも内容にほれ込み、ストリープが主演と決まり、ほかのメンバーは二転三転しながらも監督にフランケル、共演にジョーンズとカレルと実力派が集まり完成したそうだ。
ハウツーもののようでもあり、ちょっとしたカウンセリング効果があるようにも意図されているかのような本作。欧米の恋人同士や夫婦は言葉や態度などコミュニケーションや愛情表現が大げさで円満、というイメージもあるものの、実際は万人がそうではないのは当然といえば当然で。恋人が夫婦になり家族となった“happily ever after”の後は? というテーマはなかなか奥深い。おろそかになりがちながら、もっと丁寧に考えるべきこと。欧米では夫婦で結婚生活についてカウンセリングを受けることはそれなりにあることのようだが、日本ではあまりあることではなく。意識をしたり話をしたりする流れのために、映画というきっかけは悪くないかもしれない。決して幅広い層へのヒットが期待できる作品ではないながら、大切なテーマをコミカルに伝える明るいドラマである。
公開 | 2013年7月26日公開 TOHOシネマズシャンテほかにて全国順次ロードショー |
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制作年/制作国 | 2012年 アメリカ |
上映時間 | 1:40 |
配給 | ギャガ |
原題 | Hope Springs |
監督 | デヴィッド・フランケル |
脚本 | ヴァネッサ・テイラー |
出演 | メリル・ストリープ トミー・リー・ジョーンズ スティーヴ・カレル |
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