スター・トレック イントゥ・ダークネス

テロ事件の犯人を追いクルーは荒廃した惑星へ飛び立つ
対立や摩擦を経て友情や恋、チームとしての成長を描く
J.J.エイブラムスが3Dで魅せるスター・トレック第2弾

  • 2013/07/19
  • イベント
  • シネマ
スター・トレック イントゥ・ダークネス©2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

2009年に大ヒットした新生『スター・トレック』の続編が完成。出演は前作に引き続き、キャプテン・カーク役でブレイクしたクリス・パイン、若きミスター・スポック役のザッカリー・クイント、スポックの恋人である通信士ウフーラ役のゾーイ・サルダナ、そしてイギリスのTVドラマ『シャーロック』のベネディクト・カンバーバッチほか。監督はハリウッドを牽引するヒットメーカーで、2015年公開予定の『スター・ウォーズ エピソード7(STAR WARS:Episode VII)』の監督に先ごろ指名されたJ.J.エイブラムス。地球でロンドンの宇宙艦隊データ基地が爆破され、犯人は艦隊士官のジョン・ハリソンと判明。カークたちはハリソンの捕獲を命じられ、惑星クロノスへと向かう。友情や恋、チームとしての成長を丁寧に描く人間ドラマと、IMAXカメラの撮影による最新3D映像で魅せるSFエンターテインメント大作である。

西暦2259年。ジェームズ・T・カーク率いるUSSエンタープライズは、未開の惑星ニビルの探査中に激しい地殻変動に巻き込まれる。原住民と副長スポックを救うため、カークは独断で重大な規則違反を犯す。地球に戻るとカークは船長を解任。ロンドンでは大規模な爆破テロが起こり、犯人は艦隊士官のジョン・ハリソンと判明。カークたちはハリソンの捕獲を命じられ、惑星クロノスへと向かう。

たたみかけるように次々と事件が起こり、歯切れよくドラマが展開。犯人ハリソンの狙いとは? 事件の真相とは? ギリギリの選択をしていく中でカーク率いる若きチームの混乱と成長、カークとスポックの信頼と友情、スポックとウフーラの痴話げんかなど、人間模様もしっかりと描かれ、期待通り見ごたえのある仕上がりだ。

ザッカリー・クイント、クリス・パイン

キャプテン・カーク役のパインは、ガキ大将からリーダーとしての在り方を意識し始め、副長ミスター・スポック役のクイントは、恋や友情を通じて理性的なバルカン人だけではない人間としての豊かな感情を受け入れてゆく。ともに自身の新しい内面を自覚してゆく姿を好演。個人的には、激昂してブチ切れる、全力疾走して前髪がたなびくミスター・スポックがめずらしくてツボだったり。カンと本能にまかせて動く情の厚い肉体派のカークと、冷静に規則を重んずる秀才の理屈屋スポック、正反対ゆえ反発しながらも惹かれあい補い合うところがよく描かれている。スポックの恋人の通信士ウフーラ役はサルダナがキュートに、仕事は一流ながら任務がシビアな局面でも恋愛問題がからむあたりはリアルで面白い。USSエンタープライズの乗組員、ドクター・マッコイ役はカール・アーバンが、機関主任のスコッティ役はサイモン・ペッグが、操縦主任スールー役は ジョン・チョウが、エンジニアのチェコフ役はアントン・イェルチンがそれぞれに演じている。カークが父のように慕う上司パイク提督役はブルース・グリーンウッド、犯人の捕獲を命じるマーカス提督役はピーター・ウェラーとベテランが演じ、初登場となる科学者キャロル役はイギリスの女優アリス・イヴが生き生きと演じている。注目は映画オリジナルのキャラクターである謎の男ハリソン役のカンバーバッチ。この役はハリウッドで探しても見つからず、エイブラムス監督が直々に彼を抜擢したとのこと。ダークなオーラをたたえた力強い存在感を役に吹き込んでいる。ベネディクトは今回を機にハリウッドでますます注目を集め、2013年にアメリカ公開予定のメリル・ストリープ、ジュリア・ロバーツ共演による映画『August: Osage County』をはじめ公開待機作品がひかえている。また今回も前作に引き続き、旧スポック役のレナード・ニモイが出演する1シーンをお見逃しなく。

ベネディクト・カンバーバッチ

“リアリティを重視することから3D化には慎重だった”というエイブラムス監督が、満を持してIMAX撮影による3Dでみせる本作。監督は語る。「もし今回の作品をIMAXで撮れるのなら、このチャンスを生かさない手はないと思ったんだ。結果、このドラマの雄大なスケール感を上手く表現することができた。観客にとっては驚くほどスリリングな体験になるだろう」。冒頭に登場する赤い火山の惑星ニビル、ハリソンを追ってカークたちが降り立つ荒廃した惑星クロノス、後半にサンフランシスコの街中で展開される追跡劇も迫力だ。個人的にIMAXシアターでの3D上映では船酔いのような感覚がきて、目や頭に負担を感じる場合もあるものの、本作のスムーズな映像と迫力には驚いた。劇中に“いる”かのような感覚がたまにあるのが面白い。監督は語る。「こういう映画を作っていると、自分があらゆるレベルで以前よりも進歩しているかどうか、毎日のように試されることになるんだ。映画の中でカークと同じように、そういう機会を与えられたことに感謝している」。撮影はロケ現場と作成したセットを中心に、グリーンバックとCGはどうしても必要なときのみ、という前作からの方針はそのままに、視覚効果とアニメーションはILM(インダストリアル・ライト&マジック)が担当している。

クリス・パイン、ゾーイ・サルダナ、ザッカリー・クイント

『スター・トレック』生みの親である故ジーン・ロッデンベリーは、かつてシリーズについてこう語ったとのこと。「ほぼすべての作品は、人類の未来は明るいという私の思いから生まれている。我々はまだスタートラインに立ったばかりで、これから驚くべきことが待っているだろう。逆にそうでないなんて、想像もできない」。結末に関わるため詳しくは書けないものの、テロの脅威をはじめ現実に起きた事件に関する出来事を避けずにフィクションとして描き、ラストにくっきりとメッセージを打ち出すという筋の通し方、その迷いのない演出にエイブラムスの力量が感じられる本作。エイブラムス監督は5月2日(現地時間)にロンドンで行われたワールドプレミアで本作について語った。「それまでの作品を観ていなくても楽しめる作品を作るということ、そして続編であると感じつつも、独立した作品であると思ってもらうのは、我々にとって重要なことだった。我々のとってのゴールは、エモーショナルで、ロマンチックで、楽しい映画を目指し、家族として一致団結すればどんな邪悪な相手でも倒すことができるということを描くことだ」。製作のブライアン・バーグは語る。「このシリーズがこれほどさまざまな人々を惹きつける理由は何か。それは人類が勇敢にも地球をあとにして、異星から多くを学ぼうとする“センス・オブ・ワンダー”だ。地上から戦争がなくなり、どんな問題も協力し合って解決できる、そんな未来に我々はあこがれる。それこそが『スター・トレック』のヴィジョンであり、この作品で危機にさらされるものなんだ」。『スター・トレック』第3弾はすでに企画が進んでいるとのこと。エイブラムスが『スター・トレック』を手がけているため一度は断った『スター・ウォーズ エピソード7』の監督を引き受けたことから、『スター・トレック』第3弾は製作のみかという噂もあったものの、次回も監督するかどうかについてエイブラムス自身が「可能性はまだある」と語っているとも。できることならエイブラムスで……と世界中のファンと気持ちはおなじ。現在はほかの監督候補の名前も聞こえてきているものの、果たしていかに。

作品データ

スター・トレック イントゥ・ダークネス
公開 2013年8月16日、17日、18日より先行公開
8月23日よりTOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2013年 アメリカ
上映時間 2:12
配給 パラマウント ピクチャーズジャパン
原題 Star Trek Into Darkness
監督・製作 J.J.エイブラムス
脚本・製作 デイモン・リンデリフ
アレックス・カーツマン
ロベルト・オーチー
製作 ブライアン・バーク
出演 クリス・パイン
ザッカリー・クイント
ゾーイ・サルダナ
ベネディクト・カンバーバッチ
ジョン・チョウ
サイモン・ペッグ
カール・アーバン
ピーター・ウェラー
ブルース・グリーンウッド
アリス・イヴ
アントン・イェルチン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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