ローン・レンジャー

不思議な白馬とネイティブ・アメリカンに導かれ
ひとりの男が黒マスクのヒーローとして立ち上がる!
西部開拓時代のアメリカを舞台に描く冒険アクション大作

  • 2013/08/02
  • イベント
  • シネマ
ローン・レンジャー©2013 Disney and Jerry Bruckheimer, Inc. All rights reserved.

頭上にカラス、顔は白塗りに黒いライン。ジョニー・デップが奇抜なメイクと扮装でまたまた個性派キャラクターに! アメリカで1930〜50年代に大人気を博した作品をリメイク。共演は『ソーシャル・ネットワーク』のアーミー・ハマー、『英国王のスピーチ』のヘレナ・ボナム=カーター、『フィクサー』のトム・ウィルキンソン、『ダークナイト』のウィリアム・フィクトナーほか。監督は『パイレーツ・オブ・カリビアン』3部作を手がけたゴア・ヴァービンスキー、製作は『パイレーツ〜』をはじめヒット作を多数手がける名プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー。コマンチ族の悪霊ハンター、トントの導きにより、若き検事ジョン・リードが黒マスクの孤高のヒーロー“ローン・レンジャー”となる経緯を描く。白馬で駆け巨悪を討つ、アメリカ西部を舞台にヒーローコンビの誕生秘話と活躍を描く冒険アクション大作である。

西部開拓時代のアメリカ、テキサスの荒野を走る機関車の車中。人々が平和に旅を楽しむなか、逮捕され列車で護送中の無法者ブッチ・キャヴェンディッシュが脱走。乗り合わせていた新米検事ジョン・リードが阻止しようとするも失敗し、機関士が殺された列車が暴走。ジョンは成り行きからもうひとりの囚人、コマンチ族の悪霊ハンターであるトントとともに最悪の惨事をギリギリのところで回避する。その後ジョンは、地域を守るテキサス・レンジャーの一員である兄ダンとともにブッチ一味を追うが……。

ジョニー・デップ

個性派俳優たちの共演、暴走列車のアクション、昔ながらの西部劇とアメリカの原風景、テーマ曲「ウィリアム・テル序曲」のアレンジなど、見どころをたっぷり詰め込んだエンターテインメント作品。が、7月3日に公開した本国アメリカでは批評家の反応は芳しくなく、興行収入ランキングでは公開1週目に2位、2週目に5位、3週目以降はランク外という現状。その理由とは? 西部劇は万人受けしない、ディズニー作品なのに残虐な描写がある、ジョニー扮するキャラクターがシリアスで暗め……総じてファミリー層の支持を集めにくい、ということが考えられる。なかでも先住民と入植者との対立については、アメリカ史のなかでも慎重に扱われることであり、娯楽作品の一端とされることはアメリカ人にとって複雑な思いがあるのかもしれない。個人的には、復讐にとらわれる人間がスピリチュアルな力をまっとうに生かせるのか、と人物設定に気になる面が。とはいえ、いち娯楽作品として、俳優たちの体を張ったアクションや大がかりで手の込んだ美術セット、美しい白馬のユーモラスな活躍は存分に楽しめるはずだ。

ジョン・リードことローン・レンジャー役は、プロデューサーのブラッカイマーに抜擢されたというハマーが純朴な様子で。ハマーは身長196cm、劇中では“日活スター”のようにレトロな風貌がよく似合っている。じつは曽祖父は石油王のアーマンド・ハマー、父親はビジネスで成功を収めているマイケル・アーマンド・ハマーという御曹司で、4歳年上の妻ひとすじの愛妻家という好青年。ますますの活躍が期待されている俳優のひとりだ。トント役はデップがミステリアスに。デップ自身がネイティブ・アメリカンの血をひくことから先住民への思いがあることでも知られ、旧シリーズでは主人公の助手だったトントが本作では相棒として対等な立場となり、デップが演じることで確かな存在感を示している。このことについては、マイナビニュースのインタビューでよく語られている(http://news.mynavi.jp/articles/2013/07/31/jd/)。無法者ブッチ役はフィクトナーが凶悪犯として演じ、殺人シーンの残酷さはなかなかどぎつい。また可動式テントの歓楽街を営む赤毛の女主人レッド役はボナム・カーターが妖艶に。ならず者を相手に、細工を施した象牙の義足で銃弾を放つ姿が痛快だ。鉄道王レイサム・コール役はウィルキンソンが地方の名士として、ジョンの兄ダン役はジェームズ・バッジ・デールが勇敢なレンジャーとして、ダンの妻レベッカ役はルース・ウィルソンが気骨のある母として、兄夫婦の息子である少年ダニー役は本作が映画デビューとなるブライアン・プリンスが初々しく演じている。

アーミー・ハマー、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター

そもそも『ローン・レンジャー』は1933年にアメリカで連続ラジオドラマとしてスタートし、その人気からコミックブック、映画(1956年、1958年、1981年)、テレビドラマ(1949〜1957年、全211話)となった作品。1929年の世界恐慌から続く不況のなか、20年以上アメリカで愛され続けた物語だ。日本では1958年から6年間、日本語吹替版が放映されたとのこと。資料を読みながらふと、差別や用語についてあいまいだった30数年前、バラエティやコミックで多々引用されていた決まり文句「インディアン嘘つかない」は、ここからだったのか! とも。

ジョニー・デップ、アーミー・ハマー

見どころは、走る機関車での激しいアクション。デップとハマーは時速約64キロで実際に走る列車の屋根の上を走り、ブッチ役のフィクトナーは列車から並走する馬に飛び移り、レベッカ役のウィルソンは列車の側面で逆さ吊りに、という迫力のスタントを俳優たち本人が演じているのでぜひ注目を。そして個人的にツボだったのは笑いを誘う小ネタの数々。主人公なのに無様に馬に引きずられる、聖なる馬がボリボリと●●●をむさぼる、某所を移動中のトントが果物をひと口パクリと食べる、列車に並走して馬を走らせるシーンで、テーマ曲「ウィリアム・テル序曲」の導入部分が「いつもより長くまわしています」風のこてこてのアレンジでファンファーレさながら高らかに鳴り響く……などなど。「ハイヨー! シルバー!」というローン・レンジャーの決め台詞を最後の最後のあたりにだして、逆光を浴びて絵にかいたようなシルエットで放った1カット後の“間”もなかなか。このあたりはヴァービンスキー監督の遊び心が生かされているようだ。

まったく異なる背景をもつ正反対の男2人によるバディ・ムービーでもある本作。これからの各国の公開で、「キモサベ(本作では間違った兄弟の意、または友へ親しみをこめて呼びかける)」はどれくらい増えるのか。観客の支持があれば続編の可能性もあるそうで、これからの動きを見守りたい。

作品データ

ローン・レンジャー
公開 2013年8月2日公開
新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー1ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2013年 アメリカ
上映時間 2:30
配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
原題 THE LONE RANGER
監督 ゴア・ヴァービンスキー
脚本 ジャスティン・ヘイス AND
テッド・エリオット & テリー・ロッシオ
スクリーン・ストーリー テッド・エリオット & テリー・ロッシオ & ジャスティン・ヘイス
製作 ジェリー・ブラッカイマー,p.g.a.
ゴア・ヴァービンスキー,p.g.a.
出演 ジョニー・デップ
アーミー・ハマー
トム・ウィルキンソン
ウィリアム・フィクトナー
バリー・ペッパー
ジェームズ・バッジ・デール
ルース・ウィルソン
ヘレナ・ボナム=カーター
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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