ワールド・ウォー Z

家族を守るため、ひとりの父親が世界を救う――!?
国連の命を受け男は未知のウイルスの調査へ向かう
ブラッド・ピット製作・主演のパニック・ムービー

  • 2013/08/09
  • イベント
  • シネマ
ワールド・ウォー Z© 2013 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

ブラッド・ピット率いるプロダクション「プランBエンターテインメント」製作によるパニック・ムービー。出演はプロデューサーとして本作の製作も手がけるブラッド・ピット、AMCのTVドラマ『THE KILLING 〜闇に眠る美少女』のミレイユ・イーノス、『ホテル・ルワンダ』のファナ・モコエナほか。監督は2001年の映画『チョコレート』、’08年の『007/慰めの報酬』などを手がけ、低予算の良質な作品から大がかりなエンターテインメント作品までさまざまな取り組みで知られるマーク・フォースター。ある日突然、未知のウイルスがパンデミックを引き起こし、世界は壊滅的な状態に陥る。もと国連調査官だった男は妻と2人の娘を守ろうと必死になるなか、国連事務次長から呼び出しを受け……。“家族を守る”人間ドラマをベースに、狂暴なゾンビとの戦いと解決策の模索というパニックを描く話題作である。

いつもの朝。もと国連捜査官のジェリー・レインが妻カリンと2人の娘をのせて車で移動していると、激しく暴れる何かを目撃。それは未知のウイルスによって凶暴化した感染者たちだった。ほかの国の出来事としてニュースで見ていたことが目の前で爆発的に起きたことに衝撃を受けながら、ジェリーは家族を守るため安全なエリアを求めて必死で逃げだす。あてもなく車を走らせていると、旧知の仲である国連事務次長のティエリーから電話が入る。危機を脱してレイン一家が国連の指揮する艦船に乗り込んだところ、ティエリーは家族を艦船で保護することと引き換えに、ジェリーに世界の危険地域へ行きワクチン開発の情報収集をすることを依頼する。

ブラッド・ピット、アビゲイル・ハーグローヴ、ミレイユ・イーノス、スターリング・ジェリンズ

家族との時間を大切にするために危険な仕事を辞めた男が、家族の安全を確保するために最も危険な仕事を引き受ける――という展開から始まる物語。ゾンビが大暴れする映画であるものの、フォースター監督は“ゾンビ映画”とカテゴライズされることにはためらいがあるそうで、「ゾンビについてだけの映画じゃないんだ。たまたまゾンビによって引き起こされる世界の終末を描いているんだ」とコメント。「70年代に流行ったゾンビ映画が好きだった。先行きが不透明で、変革期にあった時代だよ。そして僕らは今ふたたび、変革期の不安のただなかで生きていて、ゾンビが流行っている。ゾンビ映画が流行っているのは、メタファーなんだよ。僕らの無意識や、現実世界に起こっていることを映し出す鏡なんだ。大切なのは、ある意味で無自覚に生きている僕ら人間が、最終的に目覚めさせられること」とも。

ジェリー役はピットがあえて“普通のお父さん”として。大義や正義感から立ち上がるのではなく、家族を盾にとられて仕方なく結果的に……という人間らしさが共感を呼びそうだ。妻が最悪のタイミングで電話を鳴らしてもそのことを責めないとか、夫ジェリーのちょっとした対応に、ピットの実生活であるアンジェリーナ・ジョリーと子どもたちとの暮らしぶりを思わせるシーンにホッとする感覚も。妻カリン役のイーノスは、心細く不安に思いながらも夫を気丈に送り出し、娘たちを守るさまを表現。舞台でも活動するイーノスは、出演映画としては今回がこれまでで一番の大作とのことでいっそうの活躍が期待されている。国連事務次長ティエリー役はモコエナが、友人であるジェリーを保護したいと思いながらも公人として判断しなければならない難しい立場を丁寧に。ジェリーが保護するイスラエル軍の女性軍人セガン役は、本作が映画デビューとなるエルサレム生まれのダニエラ・ケルテスがりりしく、米軍特殊部隊の軍人スピーク役は『ローン・レンジャー』にも出演しているジェームズ・バッジ・デールが勇敢に、ジェリーの娘たちはアビゲイル・ハーグローヴとスターリング・ジェリンズがかわいらしく、そして韓国の軍事刑務所に収容されているもとCIAエージェント、バート役は個性派のデヴィッド・モースが短い出演ながら強い印象を残している。原則としてジェリーが会う現地の人々は現地の役者を起用したとのこと。エルサレムでジュリーを迎えるユルゲン役は、イスラエルで映画監督やプロデューサーとして活躍するルディ・ボーケンがつとめている。エルサレムの場面をはじめ群集シーンでは、ジェリーが最初にパニックに遭うシーンで最大700人、ヘリで艦船に到着するシーンで500人のエキストラが参加しているそうだ。

アーミー・ハマー、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター

原作は’06年に発売されたアメリカの作家マックス・ブルックスによる長編小説の第1作『World War Z: An Oral History of the Zombie War(邦題:ワールド・ウォー・ゼット)』。1972年生まれのブルックスは、じつは父は映画監督であり脚本家のメル・ブルックス、母は1962年の映画『奇跡の人』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したアン・バンクロフトという映画にかかわりの深い人物。’03年に「The Zombie Survival Guide」で作家デビューし、この“Z”の映画化権はピットとレオナルド・ディカプリオが獲得を競ったことでも注目の的に。映画では複数の語り手が証言していく原作のスタイルではなく、ジェリー1人を主人公とした物語となっている。原作では昔ながらの動きの遅いゾンビが、映画では攻撃モードになると機敏に走り獰猛に襲いかかってくる設定に。これまでも映画『ドーン・オブ・ザ・デッド』などにあったものの、劇中のフィラデルフィアやエルサレムのシーンでは攻撃的な動物や虫のような動きにギョッとさせられる。

本国アメリカで(おそらく予想をこえて?)好評価を得て、続編のうわさもある本作。ゾンビものでありながら、UN(国際連合)やWHO(世界保健機関)など実際に社会的な課題に取り組む組織の活躍が描かれていること、いろいろな分野の専門家によるアドバイスを受け、感染病や群れの行動、生理学的な防衛メカニズムにもとづいて、ストーリーそのものやゾンビの習性を練り上げたことから、フォースター監督をはじめスタッフの目指す「起こりうるかも」というリアリティを感じさせる仕上がりとなったのか。個人的にゾンビやホラー、パニックものがあまり得意ではないので、この映画を3Dで観た気分は正直……であったものの、お好きな方は、ブラピのクローズアップと飛び出すゾンビを3Dでどうぞ。

作品データ

ワールド・ウォー Z
公開 2013年8月10日公開
TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2013年 アメリカ
上映時間 1:56
配給 東宝東和
原題 WORLD WAR Z
監督 マーク・フォースター
脚本 マシュー・マイケル・カーナハン
J・マイケル・ストラジンスキー
ドリュー・ゴダード
デイモン・リンデロフ
原作 マックス・ブルックス
製作 ブラッド・ピット
デデ・ガードナー
ジェレミー・クライナー
イアン・ブライス
出演 ブラッド・ピット
ミレイユ・イーノス
ジェームズ・バッジ・デール
ダニエラ・ケルテス
ファナ・モコエナ
マシュー・フォックス
デヴィッド・モース
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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