怪盗グルーのミニオン危機一髪 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
怪盗グルーのミニオン危機一髪

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悪党から足を洗い良きパパになったグルーのもと
謎の女エージェントが現れ、ミニオンが次々と姿を消し…
家族と仲間と陰謀に立ち向かう! 3Dアニメのコメディ第2弾

2010年の映画『怪盗グルーの月泥棒 3D』の続編が、’13年7月13日の全米公開から1ヵ月弱で全米アニメ映画史上第5位の興行収入をマーク! 前作で三姉妹を引き取り、悪党から足を洗ったグルーだが……。声の出演は前作に引き続き、アメリカのコメディアンで俳優、映画『31年目の夫婦げんか』のスティーヴ・カレル、イギリスのコメディアンで俳優のラッセル・ブランド、コメディエンヌで女優のクリステン・ウィグ、シンガー・ソングライターのミランダ・コスグローヴ、そして本作の新キャストとしてテレビや映画で活躍するアメリカ人俳優のベンジャミン・ブラット、イギリスのコメディアンで俳優のスティーヴ・クーガンが参加。子ども嫌いだったはずが孤児の3姉妹をひきとったグルーは、娘たちの良きパパに。平穏に暮らすグルーのもとへ、見知らぬ女エージェントがやってくる。泥棒やマッド・サイエンティスト、謎の黄色いクリーチャーたち日陰者が大暴れするコメディにして、家族や仲間同士のあたたかい関係もさりげなく。ジョークやアイテムに子どもウケする下ネタを含みつつ、カラッと笑ってほのぼのと楽しめる3Dアニメーションのコメディ作品である。

3姉妹をひきとり悪党から足を洗ったグルーは、ミニオン軍団たちとともに子育てにいそしむ毎日。マイホームパパとしてあたたかな生活を送るなか、グルーはいきなり見知らぬ女性エージェントに連行される。じつは彼女は世界の悪と戦う超極秘組織「反悪党同盟」の捜査官ルーシーで、グルーの泥棒の腕前を見込んだ彼女の上司から、研究所ごと盗まれた特殊な薬品PX41を取り戻してほしいと依頼される。グルーは即座に断りいつもの平和な暮らしへ戻るも、ルーシーに押し切られて薬品PX41の探索を一緒にすることに。そんな折、ミニオンたちが次々と誘拐されてしまい……。

前作ではひねくれ者で子ども嫌いの悪党が、子どもをひきとりデレデレの親バカになり、本作では女嫌いのグルーにロマンスが? 苦手なもの、トラウマの克服にこそ幸せの種が、という裏テーマがなかなか深い怪盗グルーのシリーズ第2弾。黄色いクリーチャー、ミニオン軍団のおバカなかわいさ、意外としっかりしているドラマ性、欠陥だらけの身近な感覚で感情移入しやすいキャラクター、ファミリーはもちろん子どもから大人まで幅広い層が素直に楽しめる良質なアニメーションだ。

怪盗グルーのミニオン危機一髪

本作はユニバーサル・スタジオとイルミネーション・エンターテインメントが製作。イルミネーション・エンターテインメントは、20世紀フォックスで重役を13年つとめたクリス・メレダンドリが’07年にユニバーサル・ピクチャーズと共同で設立した映画製作会社で、3DCGアニメーションを中心に製作。’10年の『怪盗グルーの月泥棒 3D』に始まり、’11年の『イースターラビットのキャンディ工場』、’12年の『ロラックスおじさんの秘密の種』、そして本作を打ち出し、数年でピクサー・アニメーション・スタジオ(’06年よりディズニーの子会社)に次ぐ全米で第2位の興行成績を誇るアニメーション製作スタジオに成長したそうだ。ヒーローやプリンセス、キュートなキャラクターが活躍する昔ながらの王道のディズニー作品と比べてみると、うさぎがかわいいのは当然なのでさておき、泥棒やおじいさんというアニメーションでは確実に脇役となるキャラクターをあえて主人公に、というイルミネーションのユニークで斬新な試みが大きな成功を収めていることは興味深い。これはイルミネーションの監督や脚本家、製作陣の力量があってこそのことだろう。

監督は前作と同様にクリス・ルノーとピエール・コフィン。ルノーはマーヴェルとDCコミックスに勤めたのち、20世紀フォックス下のブルー・スカイ・スタジオへ移りストーリー・アーティストとして活動。『怪盗グルーの月泥棒 3D』で長編デビューし、『ロラックスおじさんの秘密の種』の監督も手がけた人物。コフィンはフランスのソルボンヌ大学を中退してアニメーションスクールに学び、スティーヴン・スピルバーグのアニメーションスタジオ、イギリスのアンブリメーション(1989-1997)でジュニア・アニメーターとして1年働いたのちに帰国し、フランスの大手アニメーション会社エクスマクナに入社。アニメ部門のトップとして活動後、アニメーション監督としてパッション・ピクチャーズに移り、数々のコマーシャルを製作。最近はオアシスのPVやフランスのアヌシー・アニメーション・フェスティバルのTBシリーズ部門特別賞を受賞した『Pat et Stanley』の監督を手がけ、ハリウッドでの活動はまだ浅いものの、フランスでは実力が認められている人物だ。グルーのシリーズの独特の味わいは、アメリカのハリウッド風味とフランスの陰影やエスプリがうまく融合したものなのだろう。脚本を手がけるシンコ・ポール&ケン・ダウリオは、メレダンドリがフォックス在職中に『ホートンふしぎな世界のダレダーレ』を執筆した脚本家チーム。これまでイルミネーションが製作した4作品すべての脚本を手がけ、ハリウッドで注目を集めているそうだ。

声の出演は前作から引き続きハマり役のメンバーを中心に。グルー役はカレルが軽妙に。ムスッとした無愛想なひねくれぶりも残しつつ、不器用ながらも娘たちにデレデレの良きパパぶりがほほえましい。やり手で明るい、ちょっとドジな美人捜査官ルーシー役は、前作でミス・ハッティ役だったウィグがキュートに。強く賢く情に厚く、同性からみても感じのいいキャラクターだ。マッド・サイエンティストのネファリオ博士役はブランドがわが道をゆく感覚で、伝説の怪盗エル・マッチョ役をブラットがクドさ全開でコミカルに(この役は『ゴッドファーザー』のアル・パチーノが決まっていたものの全米公開2ヵ月前に急遽降板)、三姉妹の長女マーゴ役はコスグローヴがしっかり者でおしゃまに、次女のイディス役はダナ・ガイアーが個性的に、末っ子のアグネス役はエルシー・フィッシャーがかわいらしく演じている。日本語吹き替え版は前作同様にグルー役を笑福亭鶴瓶、アグネス役を芦田愛菜、そして今回のキャストとしてルーシー役にシンガーの中島美嘉、エル・マッチョ役に中井貴一という充実の配役となっている。

怪盗グルーのミニオン危機一髪

このシリーズの見どころのひとつは、奇妙な黄色い生物ミニオンたちのゆかいな生態。バナナが大好物でイタズラ好き、飲んで食べて歌っていつでもゴキゲン、という彼らがとってもたのしい。動物番組を見ているようなおもしろさやのんびりと癒される感覚だ。これはBBC1のミニシリーズ『Polar Bears』のアニメーションを手がけて“動物コマーシャル監督”として知られるコフィンの感性が存分に生きているようだ。そしてもうひとつの注目は音楽。マンゴ・ジェリーの「In the summertime」やエミネムの「Without me」など有名なわかりやすい曲がバンバン入ってくるところや、ミニオンたちが名曲を替え歌で大合唱するところがたまらない。ミニオンたちが歌うのは「Y.M.C.A.」「Another Irish Drinking Song」、そしてなんといってもAll 4 Oneの名曲「I Swear」のサビを「underwear(下着)〜♪」とキメキメに気取った様子で熱唱するシーンのおもしろさ! 本作の公式HPではサウンドをONにすると、1961年のリジェンツの曲であり、1965年のザ・ビーチ・ボーイズのカヴァーで知られる「バーバラ・アン」の歌詞を「バ、バ、バ、バ、バナナ〜♪ ポテト〜♪」と替え歌にしたコーラスが楽しめる。またロック・ユニットN.E.R.D.のフロント・マンでありグラミー賞受賞アーティストのファレル・ウィリアムスが参加し、監督たちや音楽担当の作曲家ヘイター・ぺレイラとしっかりと話し合い、3曲のオリジナル楽曲「Fun Fun Fun」「Happy」「Just a Cloud Away」を制作・提供していることも話題となっている。

ところで近ごろフジテレビ制作の映画を観るときに、「なんでミニオンたちがオープニング映像に?」と思ったひともいるのでは。フジテレビは’12年にイルミネーション・エンターテインメントと国際的戦略提携を結び、企画の提案からいずれは共同製作も視野に入れているとのこと。そのつながりから’12年の映画『踊る大捜査線 THE FINAL新たなる希望』より、ユニオンたちがフジテレビ制作の映画のオープニングロゴに登場しているそうだ。イルミネーションは2010年に浦沢直樹のコミック『PLUTO』を実写で映画化する権利を得ていることもあり、この提携がどのように展開していくのか気になるところだ。まずは今回の大成功により、怪盗グルーのシリーズ第3弾は確定の予感。グルーとミニオンたちを筆頭に、イルミネーション・エンターテインメントの今後にますます注目したい。

『怪盗グルーのミニオン危機一髪』
2013年 アメリカ映画
データ
2013年8月30日更新
怪盗グルーのミニオン危機一髪
オフィシャルサイト
『怪盗グルーのミニオン危機一髪』

2013年9月14日〜16日に先行上映
2013年9月21日より
新宿ピカデリーほかにて3D・2D
全国ロードショー


■2013年 アメリカ映画
■上映時間1:38
■東宝東和配給
■原題/『Despicable Me 2』
■監督/クリス・ルノー
ピエール・コフィン
■プロデューサー/
クリス・メレダンドリ
ジャネット・ヒーリー
■脚本/
シンコ・ポール&ケン・ダウリオ
■オリジナルソング&テーマソング/ファレル・ウィリアムス
■音楽/ヘイター・ペレイラ
■声の出演/スティーヴ・カレル
クリステン・ウィグ
ベンジャミン・ブラット
ミランダ・コスグローヴ
ラッセル・ブランド
スティーヴ・クーガン
ケン・チョン
■声の出演(吹替版)/笑福亭鶴瓶
芦田愛菜
中島美嘉
中井貴一




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを担当。2015年よりフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を、2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。インタビュー記事の執筆も。
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