47RONIN(フォーティーセブン・ローニン)

キアヌ・リーブスと日本人俳優たちが共演!
「元禄赤穂事件」をモチーフにハリウッドが映画化
ダーク・ファンタジー×アクションのスペクタクル

  • 2013/12/06
  • イベント
  • シネマ
47RONIN(フォーティーセブン・ローニン)© Universal Pictures

『忠臣蔵』として文楽や歌舞伎、映画やドラマで知られる、赤穂浪士47名による吉良邸への討ち入り、「元禄赤穂事件」の史実をモチーフにハリウッドが映画化。出演は『マトリックス』の人気俳優キアヌ・リーブス、そしてハリウッド作品への出演で知られる日本人俳優、『ラストサムライ』の真田広之、『マイティ・ソー』の浅野忠信、『パシフィック・リム』の菊地凛子、国内外の作品に出演している田中泯。今回がハリウッド映画に初出演となるのは、映画やドラマで活躍する柴咲コウ、元KAT-TUNの赤西仁ほか。監督はカンヌ広告祭ほか数々の受賞経験のあるCM界の気鋭、本作がハリウッド映画初監督となるカール・リンシュ。日本語字幕の監修は、『光圀伝』『天地明察』など歴史作品で知られる作家の冲方丁(うぶかた・とう)が手がける。日本では毎年12月14日(討ち入り日)前後に映画や舞台で上演される定番のテーマのひとつが、今年はハリウッドより“世界最速”公開である。

将軍・徳川綱吉の世、鎖国時代の日本。播州赤穂の地は、名君の領主・浅野内匠頭がおさめている。吉良上野介は赤穂を手に入れようと野望を抱き、徳川家の転覆と天下をも狙っていた。少年の頃に赤穂に流れ着き、浅野の温情により郊外の小屋で孤独に育った異端児カイは、浅野の娘ミカとも親しみ、浅野父娘への厚い恩に感謝しながら青年へと成長した。ある夜、浅野内匠頭は吉良の側室である謎の女ミヅキに妖術をかけられ、寝所の吉良に切りかかり怪我を負わせる事件を起こす。綱吉は浅野に切腹を命じ浅野家は取り潰し、家老の大石内蔵助ら家臣たちは浪人に。赤穂は吉良の領地となり、ミカは1年後の喪明けに吉良の妻になることに。そして1年後、大石は地下牢から放たれて妻子と再会し、家臣たちと仇討ちを決意。カイの強さと浅野家への思いを知る大石は、奴隷として売られたカイを奪還すべく出島へと向かう。

真田広之

時代劇でありながら台詞は英語で、CGもりもりの一大スペクタクル。正直、いろいろな意味で難しいことに挑戦した作品だ。これまで、フランス革命を、チベット仏教を、イタリアやスペインの英雄やアーティストのことなどを、ハリウッドの俳優たちが英語で演じてきたわけで。「ちょっとヘン」と思いつつも何の気なしに観てきたことが、自国のこととなると違和感が妙にくっきりと。時代劇が特別に好きだという自覚はなかったものの、家族が好きで子供のころから長く親しんでいたことから、冒頭は抵抗があった。が、観ていれば慣れてくるもので、途中からは別物として、和風テイストのスペクタクルとしてシンプルに鑑賞。日本人俳優がハリウッドをはじめ世界で活躍する流れの勢いが増すかも、と思えたりも。

異端のRONINカイ役はリーブスが、言葉少なに、派手な剣術とアクションで。浅野家の家老・大石内蔵助役は真田広之が誇り高く、確かな演技と殺陣を生かして表現。野心を燃やす吉良役は浅野忠信が悪役としてわかりやすく、吉良の側室の妖女ミヅキ役は菊地凛子がセクシーに。ミカ役は柴咲コウが純真で一本気な姫らしく、メイクや衣装はどことなく『スター・ウォーズ』のパドメ・アミダラの雰囲気も。浅野内匠頭役は田中泯が厳格かつ誠実に、内蔵助役の息子である大石主税役は赤西仁が真面目な若侍として演じている。撮影はキャストも監督もいい雰囲気のなか、丁寧にコミュニケーションをとりながら進んだとのこと。劇中は全編英語なので字幕版で観ると、日本人俳優たちが英語の台詞を流暢に操り、キアヌともども赤穂浪士が討ち入り、というなんとも不思議な感覚が楽しめる。

47RONIN(フォーティーセブン・ローニン)

武士道の鑑であり、古き良き日本人の義理人情を今に伝える、とも言われ、根強い人気を誇る『忠臣蔵』の物語。観る感覚で言うと、この映画はあくまでも「元禄赤穂事件」の史実をモチーフに大幅なアレンジが加えられたフィクションであり、『忠臣蔵』とは趣がまったく異なる、という前提で観るといいだろう。浅野の娘であるプリンセス・ミカや異端の青年カイの存在、浅野が老齢で吉良のほうが年若いこと、妖術が飛び交うダーク・ファンタジー、現実離れしたアクションの数々と、さまざまな肉付けがなされている。この映画を通じて、『忠臣蔵』の武士道精神が世界に向けて伝わるかどうかというと……であるものの(そもそもそれは狙っていない?)、時代劇はあまり、という若い世代には入りやすい内容かもしれない。2013年11月19日に日本で行われた本作のワールドプレミア&舞台挨拶にて、リーブスが語った。「この映画は、名誉、愛、犠牲、そして人生は素晴らしいという事を肯定的に描いている映画です。そして人々は互いに敬意を払うべきだという事も教えてくれます。ぜひそういったメッセージを受け取ってもらえればとても嬉しいです!」

キアヌ・リーブス

ところで、リンシュ監督がこれまでに手がけた有名なCMやショートフィルムの映像では、スタイリッシュなSFふうのスタイルがとても美しい。初の長編映画で自らの得意なスタイルとは対極ともいえる日本の時代劇に挑戦したことはすごいことながら、惜しい気もすこし。今作では妖術や格闘シーンの映像に注目してみるといいだろう。

日本の史実と物語をハリウッドから発信、というひとつの挑戦である本作。そういえば中国では『始皇帝暗殺』『レッドクリフ』のように、中国人監督が世界配給を意識して各国との共同製作で時代物を撮る、ということもしばしばだ。日本の映画では、“世界配給を意識して日本の時勢や精神を伝える”という意味で、今年9月に公開された李相日監督による『許されざる者』がある(アメリカ映画のリメイクであるものの、クリント・イーストウッド監督が黒澤明の『用心棒』に感銘を受けたという話は有名だ)。アジアには欧米とは異なる特有の文化と精神があるので、それをよく理解する監督が世界に向けて丁寧に伝える、というスタイルの映画製作は、日本でもこれからどんどん増えていくのかもしれない。

作品データ

47RONIN(フォーティーセブン・ローニン)
公開 2013年12月6日公開
TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2013年 アメリカ
上映時間 2:01
配給 東宝東和
原題 47RONIN
監督 ポール・グリーングラス
脚色 ビリー・レイ
原作 リチャード・フィリップス
出演 キアヌ・リーブス
真田広之
浅野忠信
菊地凛子
柴咲コウ
赤西仁
田中泯
ケイリー=ヒロユキ・タガワ
羽田昌義
曽我部洋士
米本学仁
山田浩
ヨリック・ヴァン・ヴァーヘニンゲン
出合正幸
中島しゅう
井川東吾
國元なつき
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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