2人の伝説的なF1ドライバー、ニキ・ラウダとジェームス・ハント
ライバル同士で両極の存在であった2人の軌跡を描く
時速300kmを体感する臨場感とともに伝える人間ドラマ
緻密で頭脳派のストイックな堅物と、享楽的で才気走るプレイボーイ。両極の性格で対等なライバル、反目しながらも互いに認め合う2人の伝説的なF1ドライバー、ニキ・ラウダとジェームス・ハントの軌跡を描く。出演は2009年の映画『イングロリアス・バスターズ』のダニエル・ブリュール、’11年の映画『マイティ・ソー』のクリス・ヘムズワースほか。監督は’01年の映画『ビューティフル・マインド』でアカデミー賞監督賞を受賞したロン・ハワード、脚本は’08年の映画『フロスト×ニクソン』でハワード監督とタッグを組んだピーター・モーガン。F1を目指すF3時代からトップを競り合うラウダとハントは、1976年のF1ドイツグランプリで過酷な試練のときを迎える。対立する男たちの激しいせめぎ合い、そこから生まれる心情を丁寧に描く。実話をもとに、時速300kmのスピードと風を感じさせるほどのF1レースの臨場感とスリル、ライバル同士の軌跡を丁寧に描く人間ドラマである。
F1参戦を目指すレーサーたちが競う1970年のF3、イギリス出身の人気レ−サー、ジェームス・ハントはオーストリア出身の新人ニキ・ラウダと出会う。ハントはラウダの猛追を受けるも、攻撃的なアタックを仕掛けてラウダがクラッシュ。このときはハントが勝利する。オーストリアの資産家の息子であるラウダは父親の猛反対で勘当されるも、ビジネスマンとしての高い能力を発揮して銀行の融資を獲得し、新人でありながら持参金をもってF1チームに加入。マシンの知識も豊富にもつラウダはF1カーの改良に大きく貢献し、オーナーやチームメイト、エンジニアたちの信頼を勝ち得て、1975年には名門フェラーリのエースドライバーに。一方、酒をあおっては手当たり次第に女を抱く、陽気でスター気質のハントは貴族のヘスケス卿がスポンサーとなり、F1に参戦。スーパーモデルのスージー・ミラーと結婚するもハントは以前と変わらず酒と女に溺れ、妻と不仲になり、ヘスケス卿は資金難でF1から撤退。無所属となったハントは自暴自棄になるなか、古い仲間の売り込みにより、強豪チームであるマクラーレンにドライバーとして加入する。そして1976年、ワールドチャンピオンに向かってラウダが快勝するなか、ハントが追い上げ、8月のドイツグランプリでの戦いに。世界一危険といわれる魔のサーキット、ニュルブルクリンクで悪天候のなかレースが決行。ラウダはクラッシュし、400℃の炎と有毒ガスに包まれて瀕死の重傷を負う。
完璧主義の優等生タイプで周囲から浮きがちなラウダと、はなやかなスター気質で誰からも愛されるハント。伝説的な男2人の対照的な気質と生きざま、その心の動きがよく描かれている作品。車やカーレースに興味がなくとも、実話をもとにした人間ドラマとして楽しめる作品だ。ラウダが瀕死の重傷を負いながらも、過酷な治療を経て42日後にはレースに復帰した、という鬼気迫る実話の裏側をよく伝えている。
ラウダ役はブリュールが生真面目で不器用ながら、レース第一で真剣に取り組む姿を真摯に表現。ブリュールは現在64歳のラウダに会いに行き、打ち解けていろいろな話をしたとのこと。一方、破天荒ながら繊細な面もあり、伝記に“5000人の女性と付き合った”とあるというハント役は、ヘムズワースが美丈夫なプレイボーイとしてわかりやすく演じている。ハントと結婚するモデルのスージー役は『トロン:レガシー』のオリヴィア・ワイルド、ラウダを献身的に支える妻マルレーヌ役は『愛を読む人』のアレクサンドラ・マリア・ララが好演。実生活のロマンスも描き、女性の観客に共感を促すアピールもなされている。
映画化のきっかけは、『ラストキング・オブ・スコットランド』『クィーン』など史実をもとに執筆した作品で知られる脚本家ピーター・モーガンが、ニキ・ラウダから話を直に聞いたことだそう。現在オーストリア在住であるモーガンが地元の英雄ラウダと話したときに、その内容にのめりこみ、脚本を執筆。モーガンから打診を受けたハワード監督は、2人の劇的なライバル関係に惹かれて快諾したそうだ。これまでも映画『アポロ13』『フロスト×ニクソン』で描いてきた’70年代が舞台である本作について、監督は語る。「’70年代は自由と解放を満喫した’60年代からのフリーセックスの空気もまだあり、団塊世代が力をもち始めたことで、権力に屈することなく自分たちの声をもてるようになった時代だった。この映画で、この時代を特殊なアングルから描くことができると思ったんだ」
撮影は、イギリスのサーキットのブランズ・ハッチ、ドニントン、カドウェル・パーク、そして’76年にラウダがクラッシュしたドイツのニュルブルクリンクでも車は’70年代のF1カーのオーナーやドライバーの協力により当時のものが集められ、映画の背景にあわせて改造。劇中でF1カーを運転するドライバーとしてF1で活躍していたヨッヘン・マスが参加し、本作のF1に関する部門を統括。彼のサポートもあり、‘70年代仕様のF1カーが忠実に再現されたそうだ。また『スラムドッグ$ミリオネア』でアカデミー賞を受賞した撮影監督のアンソニー・ドッド・マントルは、1シーンで30台以上のカメラを使用。車の上下、排気管、屋根、ドライバーのヘルメットなどにカメラを取り付け、地面すれすれの車体で時速300kmで走行する臨場感を、高らかに突き抜ける排気音とともリアルに描写している。
ハントは’76年にチャンピオンを獲得した後、’79年にあっさりとF1ドライバーを引退。イギリスのBBCでF1解説者として活躍するなか、’93年に突然の心臓発作により、享年45歳で他界したそうだ。ラウダは’74年、’77年にチャンピオンとなり、‘79年に引退するも’82年に復帰し、‘84年に3度目のチャンピオンを獲得。’85年に36歳で2度目の引退をしたそう。その後は、フェラーリのアドバイザーやジャガーのチームマネージャーを務め、自身でラウダ航空、ニキ航空という2つの航空会社の設立も。’12年にはメルセデスAMGの非常勤会長に就任したとのこと。映画で描かれている現役時代のラウダはタバコも吸わずにストイックだったものの、現在はヘビースモーカーとか。また引退後のラウダには不倫の噂、妻マルレーヌとの2人の息子に加えて非嫡出子の息子がいて、’91年にはマルレーヌと離婚。そして30歳年下の女性と結婚し、’09年には60歳で双子のパパになったとも。映画ではプレイボーイのハントと好対照の生真面目なラウダ、と青年期の2人が描かれているわけだが、F1ドライバー引退後から時を経てシニアとなった今のラウダに、ハントのような私生活があるところはユニークに感じられる。この映画を観たラウダ本人は、こんな風にコメントしている。「本当は2人でこの素晴らしい映画を、ビールでも飲みながら観たかった。私たちはレーサーで、ライバルだったけれど、お互いをリスペクトしていたんだ」
公開 | 2014年2月7日公開 TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2013年 米独英 |
上映時間 | 2:03 |
配給 | ギャガ |
原題 | Rush |
監督 | ロン・ハワード |
脚本 | ピーター・モーガン |
出演 | クリス・ヘムズワース ダニエル・ブリュール オリビア・ワイルド アレクサンドラ・マリア・ララ ピエルフランチェスコ・ファビーノ |
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