エドガー・ライト監督×サイモン・ペッグ&ニック・フロスト
“1晩で12軒のハシゴ酒”に5人のアラフォー男が再結集!
悪友どもの酔いの果てを描くイギリス製SFコメディ
ビール1杯に命を懸ける!? 『ハングオーバー!』に次ぐ、いわゆる酔っ払いムービーと思いきや……! 映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ ?俺たちスーパーポリスメン!-』の奴らが放つSFコメディ。出演は、『ミッション:インポッシブル』『スター・トレック』シリーズなどで活躍し本作の脚本も手がけるサイモン・ペッグ、『宇宙人ポール』でも息の合った相棒を演じたペッグの親友ニック・フロスト、映画『ホビット』シリーズやTVシリーズ『SHERLOCK(シャーロック)』のマーティン・フリーマン、『007/ダイ・アナザー・デイ』のロザムンド・パイクほか。監督・脚本はペッグ&フロストとの作品をはじめ、2010年の映画『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』など、イギリスを拠点に活躍するエドガー・ライト。学生のころからの付き合いでアラフォーとなった悪友5人衆が故郷の街に再結集、約20年前に達成しそこねた“1晩で12軒のハシゴ酒”を完遂すべく、パブの飲み歩きを始めるが――。バカバカしいほど飲んだくれ、グダグダの人間模様になんだかんだいって友情あり、ラブも少々。今の時世を反映しつつ古今東西よくある状況を盛りだくさんにデフォルメし、共感と笑いをガンガン引き出す、彼らお得意のスタイルが極まれり。ビール飲みながら笑って眺める、イギリス製SFコメディである。
1990年6月、イギリス郊外のニュートン・ヘイヴン。5人の少年たちが高校の卒業祝いに、12軒のパブをめぐりビールを飲み続ける計画を決行。が、ひとりまたひとりと脱落してゆき、リストの最終地点である店「ワールズ・エンド(世界の終わり)」まであと3軒のところで燃え尽きて、そのアホな試みはお開きとなった。それから約20年後、もと悪ガキの筆頭で昔のまま相変わらずフラフラしているゲイリーは、あのときの計画を再決行しよう、とそれぞれに家庭をもち社会人としてまともに暮らしている4人の幼馴染のもとへ押しかける。法律事務所で働くアンディ、ゼネコンで働くスティーヴン、不動産業のオリヴァー、自動車ディーラーのピーターら4人は、ゲイリーの強引さに渋りながらも、悪友や故郷の街、久しぶりにやんちゃをすることに惹かれ、故郷の駅で再会。12軒のパブめぐりをスタートする。そしてちょいと酔いが回ってきた4軒目の店のトイレで、奇妙な若者たちと遭遇。街の様子がおかしい、と違和感をおぼえる。
悪友どもの酔っぱらいコメディから、クラシックな様式のSFへの展開が愉快な本作。「なんで今それ!?」という5人の酔っぱらいたちの行き当たりばったりの言動、どう見てもそれはダメでしょう、という方に流されていく感じ。このスタッフ&キャストの持ち味で、どんな場面においてもキャラクターそれぞれの個性がキッチリたっているところが楽しい。『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』に次いで、ライト監督×ペッグ&フロストによるイギリス映画である本作について、ライト監督は語る。「悲惨な状況に直面した時、高慢かドライになるのが、イギリス人の特徴。この3本はそれを楽しむと同時に皮肉っているんだ。ストーリーもキャラクターも異なるが、すべてに僕とサイモンの伝記的な要素や妄想が込められているよ」
アラフォーになっても悪ガキのまんまのゲイリー・キング役はペッグが、周囲を振り回すモラトリアム野郎を生き生きと。やはりペッグはどんな役を演じても人間臭くユーモラスですみずみまで面白い。禁酒しているアンディ・ナイトリー役はフロストが、生真面目で不運をこうむりがちなキレるタイプとして、金回りのいいオリヴァー・チェンバレン役はフリーマンがそれらしく、オリヴァーの妹でマドンナ的存在のサム役はパイクがくっきりと気持ちよく、バツイチで初恋だったサムとの再会に浮かれるスティーヴン・プリンス役はパディ・コンシダインが熱心に、なにかとゲイリーにイジられていいように利用されるピーター・ペイジ役はエディ・マーサンがお人よしとして、それぞれに演じている。「いるいるこういう人」というキャラクターがわかりやすく、いざトラブルに直面すると、みんながそれぞれに予測できない言動を支離滅裂にするあたり、リアルな人間関係を彷彿とさせて可笑しい。
ライト監督が「同窓会コメディとSFを組み合わせた、無責任なアーサー王物語」と語る本作。ゲイリーのファミリーネームはキングであり、4人の苗字も王に縁(ゆかり)のある者や仕える者を思わせるワードとなっている。監督は今回、イギリスの作家ジョン・ウィンダムによる社会派SF作品、1955年の映画『原子人間』、1967年の映画『火星人地球大襲撃』などの“クォーターマス博士シリーズ”や、1956年の映画『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』、ジョン・カーペンター監督作品などからアイデアを得たとのこと。シンプルでレトロな造形や金属ふうの質感、B級感ただようぎこちない動きに、観ていてほのぼのとする瞬間も多々。激しいバトルやアクションは、ジャッキー・チェンのスタントチーム出身で、映画『キック・アス』『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』も担当したブラッドリー・ジェームス・アランが演出。おバカ盛りだくさんでありながら、クライマックスで、一見すると豊かで整った画一的な支配の強制に対して断固として反旗を翻し、価値観も世界も一気に反転する、というダイナミックさ、そのたとえを“スタバ化”というわかりやすさとイギリス人らしい皮肉ぶりがたまらない。
本作の撮影時、スタッフとキャストはとても仲が良く、俳優たちは自分の出演シーンが終わってもトレーラーや控室に戻らずに現場にいたことも多かったとか。なごやかな様子が目に浮かぶようだ。ペッグはハリウッド大作の出演も増えて実力が大いに認められてきているし、相棒のフロストをはじめ俳優たちもライト監督もそれぞれに活躍して。そうしてまた、原点とも“ホーム”ともいえるメンバーで集っては映画を作っていくのだろう。同世代である彼らの地に足の着いた活躍ぶりを見ていると、個人的に嬉しくなってくる。肩の力は抜けつつフルパワーで、おじいちゃんになってもやり続けてくれるだろう彼らのことが、今後もとても楽しみだ。
公開 | 2014年4月12日公開 渋谷シネクイントほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2013年 イギリス |
上映時間 | 1:49 |
配給 | シンカ/パルコ |
原題 | THE WORLD'S END |
脚本・監督 | エドガー・ライト |
出演・脚本 | サイモン・ペッグ |
出演 | ニック・フロスト パディ・コンシダイン マーティン・フリーマン エディ・マーサン ロザムンド・パイク |
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