LUCY/ルーシー

リュック・ベッソン監督全作品で興行収入の自己ベストを更新!
スカーレット・ヨハンソンが、頭脳が100%覚醒した超人類に!?
知能に関する事実、超自然的な物語と映像で描くSFアクション

  • 2014/08/22
  • イベント
  • シネマ
LUCY/ルーシー©2014 Universal Pictures

リュック・ベッソン監督の全作品のなかで興行収入NO.1の最高記録となり、スカーレット・ヨハンソンにとっても単独主演映画として初の興収1億ドル突破をマークした話題作。出演はヨハンソン、2014年の映画『トランセンデンス』のモーガン・フリーマン、’03年の映画『オールド・ボーイ』の韓国人俳優チェ・ミンシクほか。ごく普通に過ごしていた女性ルーシーは、台北でマフィアの麻薬取引に巻き込まれる。体内に埋め込まれた麻薬が漏れ出したことから、脳が急激に覚醒し……。一般的に10%しか使われていない人間の脳が、もし100%覚醒したら?
ノーベル賞を受賞した著名な科学者たちへの取材に基づく脚本と、超自然を思わせる映像とストーリー展開というキレのある演出で魅せる、ベッソン流のSFアクションである。

台北に滞在中、クラブで知り合った男に呼び出されたルーシーは、マフィアによる薬物の闇取引に巻き込まれる。薬で眠らされたルーシーはいつのまにか腹部に手術で麻薬を埋め込まれ、密輸の運び屋として海外へ送りこまれることに。が、暴力をふるわれたことで体内に埋め込まれた物質が漏れ出し、ルーシーは心身に異変をきたす。その直後、ルーシーは脅されて怯えて言いなりになるしかなかった状態から、数秒で迅速かつ冷徹に判断を下し、形勢を逆転。違法な新しい薬物の大量摂取により、脳が覚醒したことを、ルーシーは理解する。脳科学の権威ノーマン博士と連絡をとり、パリへと向かうルーシーに、台湾マフィアの追手が迫っていた。

モーガン・フリーマン,スカーレット・ヨハンソン

能書きなしで率直に言うと、「なにがなんだかよくわからなくてもすっごくおもしろい」タイプの作品。脳についての調査や分析、仮説や推測、哲学的な思想、スピリチュアルな感性、映像的な面白さなどがベッソン・ブレンドでキレよくミックスされている。個人的には(おそらく)細胞がてっとり早くリニューアルされる過程や、時空を超えて人類の起源にアクセスするところ、脳が100%覚醒したときの終盤の表現に、わくわくした。これらのシーンには、超自然をイメージして疑似体感させるアート映像のような感覚も。
 この物語を作ったきっかけはベッソンが、“よく覚えていないけれど10年前くらい”に知能についての話を思いついたことだそう。ベッソンは語る。「当時は私自身の知能が足りず、脚本を1本書くのに10年もかかったんだ。専門知識について、多くの著名な科学者たちに話を聞いた。その内の12人はノーベル賞受賞者で、彼らは全員パリにある『脳・脊髄研究所』のメンバーだ。美しい施設だったよ。彼らと一緒に時間を過ごして、夢中でいろいろな情報を聞いて、その内のいくつかは映画に取り入れたし、使えなかったものもあった。そうやって映画の材料を探していったんだ」

ルーシー役はヨハンソンがクールに好演。普通の女性から、無敵の超人類としてどんどん進化し、常識を逸脱した能力を次々と得て、マフィアのいかつい構成員たちと堂々と渡り合うさまは観ていて痛快だ。ベッソンはルーシーについて、「彼女は普通の女の子だ。そんな彼女がある日、この世で一番の知識をもつことになる。愚かだが知性がある。そんなキャラクターが好きなんだ。どちらの側面もある、そういう表現をするのはとても楽しいね」とコメントしている。
 脳科学の研究者ノーマン博士役はフリーマンが淡々と。『トランセンデンス』然り、こういう役多いですよね、と思いつつ、いつも通りハマっている。ベッソン曰く、物語の中で「博士が話していることの90%は事実」とのこと。「そこにルーシーが登場してくるというバランスが面白いんだ。彼女の登場は映画的で、まさにエンターテイメントだ。でも博士の言うことは事実。だから、その二つの要素を素早く混ぜ合わせると、何が本当で何が嘘かわからなくなる。ノーマン博士の存在は映画に信ぴょう性を与え、映画を成り立たせている。長年夢見ていながらも実現しなかったものが、突然目の前に現れたときの彼の反応を見るのも面白い」とも。
 そして期待通りのダーティな存在感を放っているのは、台湾マフィアのボス役をマッチョに演じるミンシク。個性的な演技派として知られるミンシクらしく、韓国映画を思わせるコテコテのアクションや見せ場で彼の濃い個性がよく生かされ、ベッソンの遊び心が感じられる仕上がりだ。

スカーレット・ヨハンソン

『Esquire』誌の“世界一セクシーな女性”に史上初、2度の選出(’06年と’13年)をしたことでも知られるスカーレット・ヨハンソン。美貌とグラマラスな肢体の持ち主というばかりではなく、インディペンデント作品からエンターテインメント大作、ウディ・アレン作品のような人間味あるドラマから、『アベンジャーズ』シリーズのような人間離れしたアクションもイケる、魅力的な女優であることは周知のとおりだ。ヨハンソンは最近の映画ではたまたまなのか、人智を超越した役柄が続いている。本作の脳が覚醒した超人類、’13年の映画『her/世界でひとつの彼女』の近未来のパソコンの自律型OS、2014年10月4日に日本公開となる『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』の地球外生命体などなど。個人的にはストーリー云々とはまた別に、超越した存在として毎回どことなく納得させられるところが面白く。その説得力こそが、女優としての力量なのだろう。’14年7月17日に本作のプロモーションにより、ヨハンソンがTwitterでユーザーの質問に答えたときに、ルーシーというパワフルなヒロインについて、こんなふうに語っている。「映画界にすごくカッコいい女性のスーパーヒーローを誕生させることができて、本当に幸運だと思うわ。ブラック・ウィドウ(『アベンジャーズ』でヨハンソンが演じた役)のような女性登場人物の人気が高まり成功を収めたこと、ジョス・ウィードンやリュック・ベッソンのような監督の功績もあり、映画監督が強い女性の主人公を称え起用することで、今後の映画界において成熟した登場人物に平等な機会が与えられることを願っています」

スカーレット・ヨハンソン

監督デビュー33年目のベッソンが、これまでに手がけた全作品のなかで、史上最高のオープニング成績となり、55歳にして自己記録を塗り替えたニュースもなかなかシビれる本作。娯楽作品であり、調査や事実、知識に基づいた情報を取り入れて感性に刺激を与えるベッソン監督作品が、今後もとても楽しみだ。ベッソン監督は映画についてこんな風に語っている。「旅をしてもらいたいんだ。“どこへ向かってるんだ?”と感じてほしい。流れに身を任せてほしい。身を任せたら映画は乗り物になる。もし途中で現実に戻って考え始めたら、普通の映画になってしまう。でも流れに身を任せて、それを楽しもうと思えばきっと素晴らしい体験ができるんだ」

作品データ

LUCY/ルーシー
公開 2014年8月29日公開
TOHOシネマズ 日本橋ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2014年 フランス・台湾・アメリカ合作
上映時間 1:29
配給 東宝東和
年齢区分 PG12
原題 Lucy
監督・脚本 リュック・ベッソン
出演 スカーレット・ヨハンソン
モーガン・フリーマン
チェ・ミンシク
アムール・ワケド
ジュリアン・リンド=タット
ピルウ・アスベック
アナリー・ティプトン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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