多田便利軒で行天本人が会うつもりのない実の娘を預かる!?
星からねじ込まれた依頼は、行天の過去に関わりがあり……
脱力した雰囲気、核心を突く会話、生身の感触沁みる人間ドラマ
累計120万部超の三浦しをんのベストセラーを、映画化やドラマ化でさらにファン層をがっちりと掴んだ“まほろ駅前”シリーズ映画版第2弾が完成。出演は前作の映画、ドラマから引き続き瑛太、松田龍平、高良健吾、真木よう子、本上まなみ、麿赤兒、松尾スズキ、大森南朋、岸部一徳、そして本作からの出演に永瀬正敏ほか充実のキャストで。監督は前作の映画『まほろ駅前多田便利軒』(2011年)を手がけた大森立嗣。 多田の便利屋に行天が住みついて2年。行天の別れた妻から、行天が精子提供をした実の娘・はるを多田便利軒で預かってほしいと依頼され……。小汚いのに居心地がいい、使い古した毛布のようなもったりとした手ざわり、台詞というより日常会話そのもののような脱力した2人のダルいやりとり、相手をスッと射抜くような時折の強い思い、感情の爆発。独特の空気感やテンポはもちろん、映画としての内容の濃さもしっかりと楽しめる人間ドラマである。
2013年の大晦日の夜。便利屋の多田の電話に依頼が入る。行天の別れた妻・凪子が、行天が精子提供をしただけの実の娘・はるを預かってほしいというのだ。凪子の状況を聞いた多田は渋々引き受けるものの、子供嫌いの行天がキレて暴れるのでは、と言いだせずにいた。
そんな折、多田便利軒に“まほろのギャング”こと星から、市民団体「家庭と健康食品協会(HHFA)」の調査を無理やりねじ込まれる。そして多田は行天に「自分の姪を預かる」と苦しまぎれに説明し、嫌がる行天を説き伏せ、行天とはるは初めて対面する。
多田のもとに行天が転がり込んで2年。2人の距離感の味わいがよく伝わってくる本作。多田が行天に言いだせなくてうだうだと悩む日常のシーンも、いくつかの人と要素が重なり合って急転し事件へと展開するシーンも、生身の人間の感触が沁みる。また多田と「キッチンまほろ」の未亡人・亜沙子とのその後についてちらりと描かれるあたりも、ファンには嬉しいところだ。
’14年9月29日に新宿ピカデリーにて行われた完成披露試写会にて、大森監督は本作についてこのように語っていた。「この映画は、映画好きには絶対観てほしいです。嫌いな人もぜひ。かつて日本の映画が好きだったけど、今は愛想を尽かしてしまった人にも観てほしいです」
まほろ住人のさまざまな用件をよろず請け負う便利屋の多田役は、瑛太が無骨に心やさしく。飄々としながらケンカはめっぽう強い行天役は、松田龍平がつかみどころなく本能的に。2人のやりとりや支え合い、反発し練られてゆく感覚に、じわじわと惹きつけられる。地元の裏社会で冷徹に立ち回る星役に高良健吾、「キッチンまほろ」を切り盛りする未亡人・亜沙子役に真木よう子、行天の別れた妻・凪子役に本上まなみ、トラブルをこじらせてひどい目に遭いがちなシンちゃん役の松尾スズキ、昔気質の刑事・早坂役に岸部一徳、そしてドラマ版『まほろ駅前番外地』第5話でゲスト出演した時とはまた別の役、地元の暴力団の飯島役として新井浩文が出演し、市民団体の代表・小林役を永瀬正敏が影のある男として演じている。初登場となる行天の娘・はる役は岩崎未来、ドラマから引き続き少年・由良役は横山幸汰。子役たちと多田と行天が動物たちとたわむれる、好感度が一気に倍増するシーンもわかりやすく観ていて和む。
「まほろ〜」シリーズの映画化とドラマ化は、’11年の映画『まほろ駅前多田便利軒』、‘13年のドラマ『まほろ駅前番外地』、そして本作と三度目。この一連の仕掛け人は、カルチャーの発信元として信頼されている出版社リトルモアの代表・孫家邦プロデューサー。本作の製作はリトルモアと、菊地美世志氏が代表をつとめるフィルムメーカーズによるパートナーシップによって行われている。「リトルモア&フィルムメーカーズ」は、’07年の『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』、’13年の『舟を編む』など、数々の良質な映画を手がけている。
原作者の三浦しをん氏が町田市をモデルに、架空の都市「まほろ市」を描いたこのシリーズ。’14年10月4日には町田市の映画館「109シネマズ グランベリーモール」にて本作の先行上映が行われ、三浦氏と大森監督によるトークライブが行われた。小説・映画ともに続編が望まれていることについて、大森監督は「この映画がヒットして、周りから(続編を望む)声が聞こえてきたら、あり得るかもしれません」とコメント。三浦氏はこのように語っている。「小説は(『まほろ駅前狂騒曲』で)完結ですけれど、映画は『寅さん』シリーズのようにいつまでも続いてほしいです!私はそれをノベライズしますね(笑)。(自身の小説で初めて映画化が決まった作品だということもあり)“まほろ”シリーズは特別な存在。『ゲルマニウムの夜』の頃からファンだった大森さんが監督をしてくれて、(映画になるのを)見ていたこの3年間は、幸せな時間でした」。原作者様本人より公の場で、なんて素晴らしい提案か。いちファンとして、大勢のファンとともに今後の展開を楽しみにしている。
公開 | 2014年10月18日公開 新宿ピカデリーほかにてロードショー |
---|---|
制作年/制作国 | 2014年 日本 |
上映時間 | 2:04 |
配給 | 東京テアトル/リトルモア |
監督・脚本 | 大森立嗣 |
脚本 | 黒住光 |
音楽 | 岸田繁(くるり) |
原作 | 三浦しをん |
出演 | 瑛太 松田龍平 高良健吾 真木よう子 本上まなみ 奈良岡朋子 新井浩文 三浦誠己 古川雄輝 横山幸汰 岩崎未来 水澤紳吾 大西信満 原田麻由 宇野祥平 市川実和子 伊佐山ひろ子 麿赤兒 松尾スズキ 大森南朋 岸部一徳 永瀬正敏 |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。