サンバ

『最強のふたり』の監督と主演俳優が再タッグ!
アフリカ人青年がビザ失効でフランス退去を命じられ……
コメディを交えてシリアスなテーマを描く人間ドラマ

  • 2014/12/12
  • イベント
  • シネマ
サンバ©Quad - Ten Films - Gaumont - TF1 Films Productions - Korokoro

ミニシアター向けの作品ながら、2012年の日本公開時に劇場動員数135万人、興行収入16億円という異例のヒットを記録したフランス映画『最強のふたり』の監督と主演俳優が再タッグ。出演は『最強のふたり』のブレイクにより映画『X−MEN:フューチャー&パスト』でハリウッドデビューを果たしたオマール・シー、母ジェーン・バーキンと父セルジュ・ゲンズブールの娘である女優シャルロット・ゲンズブール、’09年の映画『預言者』のタハール・ラヒム、歌手で女優としても活動しているイジア・イジュラン(アルチュール・アッシュの妹!)ほか。監督・脚本は‘11年の映画『最強のふたり』で世界的な評価を得たエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュが手がける。
 セネガルからフランスに来て10年となる青年サンバは、ビザの失効により国外退去を命じられ……。デルフィーヌ・クーランが自身の移民救済活動の経験をもとに書いた小説『Samba pour la France(フランスに捧げるサンバ)』を原作に、監督たちが前作を撮影することによって実際に体験したという“燃え尽き症候群”のテーマを加えて描く。個性的な人々が出会い、支え合いながら難しい立場や局面をともに乗り越えていく姿を明るく描くドラマである。

フランスに来て10年、料理人の叔父と暮らし、レストランの皿洗いをしていたアフリカ人の青年サンバはようやく料理人として採用されることに。が、念願の滞在許可証をもらおうと県庁を訪れると、うっかりビザを失効していたことから収容所送りになってしまう。フランスに留まって働き、アフリカで暮らす家族に仕送りを続けたいサンバは、移民支援協会に相談。具体的な対策は「1年後に再び申請書を提出するまでひっそりと暮らす」くらいであることにいら立ちながらも、ガードマンや工事現場などの日雇いの仕事をはじめる。

シャルロット・ゲンズブール,オマール・シー

シリアスなテーマにコメディを交えて誠実に描くことを得意とするトレダノ&ナカシュ監督の最新作。監督は自分たちの経験から、日々に忙殺されていくうちに、“人生のための仕事”のはずが“仕事のための人生”にすり替わってしまうことがあると気づいたとのこと。そして“移民問題”と“燃え尽き症候群”は、同じ根をもつひとつのテーマである、と本作のテーマについて語る。「仕事だけが人間の存在意義なのか? 僕たちは、この疑問を世間にぶつけたいという想いでいっぱいだった」。そしてトレダノ監督は、「大勢の人がこういう映画を必要としていると感じた」とコメントしている。

サンバ役はシーが青年らしく、その場の状況や感情に動かされていく感覚で。実はシーが『最強のふたり』でセザール賞を受賞した数日後、トレダノ&ナカシュ監督と会って話し、次回作でもタッグを組み、企画の段階から参加することが決まっていたそうだ。そして移民支援協会のスタッフであるアリス役は、ゲンズブールはアンニュイな持ち味で。劇中、どんなふうに燃え尽きたかを話すシーンが楽しい。彼女にとってコメディは自信がもてないジャンルだそうで、本作はひとつの挑戦だったようだ。サンバの友人となる移民仲間のウィルソン役はタハール・ラヒムが陽気に楽しく、移民支援協会の研修スタッフであるマニュ役はイジア・イジュランがサバサバした今どきの女性として演じている。

オマール・シー,シャルロット・ゲンズブール,イジア・イジュラン

監督・脚本を共同で手がけるエリック・トレダノは1971年、フランス、パリ生まれ。オリヴィエ・ナカシュは1973年、フランス、オー=ド=セーヌ生まれ。1995年に短編映画『Le jour et la nuit』の監督・脚本を共同で手がけて以来、チームを組んでいるとのこと。映画『最強のふたり』はフランスの歴代興収第3位を記録し、ヨーロッパ各国、アメリカ、日本でも大ヒットに。現在はハリウッドでのリメイクが進行中で、コリン・ファース、ケヴィン・ハートが出演予定だそうだ。

サンバ

この映画をほめておけば映画通、というイメージもある本作。
 個人的な感想は必要ないかもしれないと思いつつ、ほんの少しだけ。この内容はアリスの立場にいる女性が観て、気持ちのいい作品だろうか。シャルロット・ゲンズブールが“燃え尽き症候群のアラフォー女性”にハマりすぎで、キャラクターの感覚に引きずられただけかもしれないけれど、筆者はアリスの“燃え尽き”感が自分に重なり、複雑な気分になった。ふと、「あなたはみじめなの?」という、映画『紙の月』で小林聡美さん演じる銀行員・隅より子の台詞が浮かんだり。とはいえ、こうした感覚は当事者以外の多くの人にとっては気にならないことだろうし、そもそもフィクションに多くを求めてはいないだろうし。軽く楽しむ物語ということでいいのだろう。
 本作の製作にあたり、トレダノ&ナカシュ監督は移民に関するさまざまな資料に目を通し、ボランティア団体の活動にも参加したとのこと。ただし、と、トレダノ監督は本作についてこんな風に語っている。「政治的なメッセージを送ろうとしたわけではない。あくまでコメディとして、軽い気持ちで見てほしい」

作品データ

サンバ
公開 2014年12月26日公開
TOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかにて全国順次公開
制作年/制作国 2014年 フランス
上映時間 1:59
配給 ギャガ
原題 SAMBA
監督・脚本 エリック・トレダノ
原作・脚本協力 デルフィーヌ・クーラン
脚本協力 ミュリエル・クーラン
出演 オマール・シー
シャルロット・ゲンズブール
タハール・ラヒム
イジア・イジュラン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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