累計1億部超ベストセラーとなった官能小説を映画化
特殊な嗜好のセレブ青年と恋愛未経験の文学少女
2人の出逢いとはじまりを描く、倒錯ワンダーランド第1章
ロンドンで暮らす一般女性が投稿したオンライン小説が評判となり、累計1億部超(電子書籍を含む)のベストセラーとなったE.L.ジェイムズの『Fifty Shades of Grey』の映画化。
内気な大学生のアナは有名企業のCEOで若き億万長者のグレイに取材。後日に再会した時、特殊な嗜好をもつグレイはアナにある契約書を提示する――。出演はモデル出身で2006年の映画『マリー・アントワネット』のジェイミー・ドーナン、俳優ドン・ジョンソンと女優メラニー・グリフィスの娘で映画『ソーシャル・ネットワーク』のダコタ・ジョンソンほか。監督は写真家やビジュアル・アーティストとしても活動している、映画『ノーウェア・ボーイ ひとりぼっちのあいつ』のサム・テイラー=ジョンソン、脚本は映画『ウォルト・ディズニーの約束』のケリー・マルセル。
日本での映倫区分は「R15+」で15歳以上は閲覧可能、原作者、監督、脚本家とすべて女性、“女性による女性のための”と謳い、後半からよりセクシーなシーンをメインに展開する映画である。
大学生のアナ・スティールは、風邪をひいたルームメイトの代理で、起業家であり有名企業のCEO、若き億万長者クリスチャン・グレイのインタビューへ。内気でこれまでに恋愛経験のないアナは、傲慢さと男性的な魅力をもつグレイに圧倒され惹かれながらも、別世界の人として、なんとか取材時間の10分とすこしの時間を終える。後日、多額の寄付者としてアナの大学の卒業式や、ただの買い物としてアナのバイト先の雑貨店にグレイは現れ、互いに惹かれ合っていると知る。
ある日、グレイの住む超高層ビルのペントハウスに招かれたアナは、2通の契約書を提示される。それは、これから2人の間に起こるどんな些細なことも決して口外してはならないという秘密保持契約の書類と、グレイと付き合う女性が守るべきルールが詳細に定められた契約書だった。
世界50ケ国以上で出版され、原作者すら予想外というほどの一大ヒットとなった話題作の映画化。この作品はアメリカでもシークレット戦略で公開前に詳細は不明、日本では日米同時公開前夜に1回きりの試写として、プレスに初お披露目となった。
原作はシリーズ3作の『Fifty Shades of Grey』『Fifty Shades Darker』『Fifty Shades Freed』でトリロジーとなっているこの作品。今回の映画はシリーズ第1作目の映画化のため、ストーリーとしては伏線を敷いたのみ、という状態。最近、連続テレビドラマが中途半端に終わり、続きは映画で、という流れがしばしばあるなか、それによく似ている。グレイの過去と精神的な呪縛、アナの初めての恋愛と女性としての成長、支配と自立という意志の対立、そして2人の関係の行方などなど、第1弾である本作ではストーリーというほどの内容はなく前ふりのみ、まだまだ序章、というところだ。
グレイが提示した契約書に記されているのは、行動・食事・服装・睡眠・エクササイズの方法から、避妊のためにピルを飲むことや性的な関係の詳細にいたるまで、身も心も彼に絶対服従、という内容で。原作にある性的にハードな内容がどこまでどのように映像化されているのか、というところは……日本版ではしっかりと修正がかけられている。
サム・テイラー=ジョンソン監督は'90年代初頭から写真家やビジュアル・アーティストとして活動していることもあり、絡み合う2人がどこかスタイリッシュな画(え)になるポージングになっているシーンも少なくない。映画では後半から大半が性的なシーンになり、ひたすら修正が入り続け、時には画面の1/2がブラックアウトしたりするので、観ていてちょっと可笑しくなったりも。日本の宣伝担当氏によるとアメリカでは無修正でそのまま公開、R指定で上映されているそうだ(17歳未満は、親か成人の保護者の同伴がない限り入場することができない)。それはそれで驚きもあるものの、要するに人の体なのだし、と妙に納得したりも。
撮影についての資料がなく詳細は不明であるものの、主演2人はかなり体を張って、まさに体当たりで挑んでいる本作。クリスチャン・グレイ役はドーナンが、すべてを支配して当然、という傲慢さとアナに強く惹かれる自分に戸惑うグレイを演じている。アナ役のジョンソンは、初めての恋愛で相手の特殊な性癖に困惑しながらも受け入れようとする一途さを表現している。そしてグレイの義妹ミア役はイギリスのシンガーソングライターのリタ・オラが、グレイの義母グレース役はオスカー女優のマーシャ・ゲイ・ハーデンが、グレイのボディガードであるテイラー役はマックス・マティーニが演じている。
原作者のE.L.ジェイムズとはどんな人物か。この映画の原作である、'12年4月にアメリカのメジャー出版社から出版された処女作が世界的なヒットとなり、同年にタイム誌の「もっとも影響ある100人」に選出、'13年にフォーブス誌の「もっとも稼いだ作家ランキング」1位に。1953年イギリスのロンドン生まれ、元テレビ局の役員で、夫と2人の息子がいるとのこと。そもそも彼女は吸血一族の美青年と恋愛未経験の少女の恋愛小説を映画化した『トワイライト』を'08年に観てから原作を読み、触発されて小説を書き始め、彼女の書いたトワイライトシリーズのファン・フィクション(同人小説)がファンの間で好評を得たとのこと。その後、“フィフティ・シェイズ”のアイデアが浮かび、毎週1章ごとにインターネットで書き、オーストラリアの出版社で出版されたのち、アメリカの大手出版社から出版されたそうだ。
著書のヒットについて、E.L.ジェイムズはこんなふうに語っている。「これだけの現象になるとはまったく思っていませんでした。トワイライトのファン・フィクションとしてスタートしたので、誰かにコピーされる前に出版した方が良いのでは、というくらいの気持ちでした。この爆発的な人気は、自分では想像もしていなかったことです。こんなにも世界中の読者の心を動かしたことは身に余る光栄であり、(急激な変化に)戸惑ったこともありました」
ハリウッドのメジャー・スタジオ製、倒錯ワンダーランドの世界へ。性的な面を熱心にフィーチャーしたハーレクイン・ロマンスや少女漫画のような、非現実的でありえないフィクションの世界。なんというか、経済的にも立場的にも何もかも思い通りになる男性で、女性を道具としか見ていない人は残念ながら実際にいて、そういう人が簡単に変わることはまずないことで。未経験でレベル0からスタートした彼女が、関係をもった途端に手練手管の遣い手になったかのように駆け引き上手になることや、純粋だからこそ男性を翻弄し惹きつけるとか、現実味があまりにもなさ過ぎてツッコミどころが満載だ。とはいえ観方として、ストーリーを求めるのではなく、ある種の予定調和や様式美のように“そういうもの”として眺めるものなのだな、と。
E.L.ジェイムズは原作がベストセラーとなった理由について、このように語っている。「文章は一人称の現在形で、読者はアナになりきることができます。また、ファンタジーとして逃避できる情熱的なロマンス、非常にお金持ちの人と出会うこと、あまりにも違う世界で果たして2人が上手くいくのかという展開、そうしたすべてが上手くいった理由だと思います」。
原作は三部作なので、2人のその後である『フィフティ・シェイズ・ダーカー』『フィフティ・シェイズ・フリード』の映画化はどうなるか。このままのスタッフ&キャストでいくのか、方向性が変わるのかなど、すべては世界中の原作ファンの反響次第ということもありそうだ。原作ファンの反応と、今後の映像化の行方が気になるところだ。
公開 | 2015年2月13日公開 TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 2:06 |
配給 | 東宝東和 |
映倫区分 | R15+ |
原題 | Fifty Shades of Grey |
監督 | サム・テイラー=ジョンソン |
脚本 | ケリー・マーセル |
原作 | E.L.ジェイムズ |
音楽 | ダニー・エルフマン |
出演 | ジェイミー・ドーナン ダコタ・ジョンソン ジェニファー・イーリー マーシャ・ゲイ・ハーデン マックス・マティーニ ルーク・グライムス リタ・オラ エロイーズ・マンフォード ヴィクター・ラサック |
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