29歳の姿のまま106歳となった彼女の出逢った恋は――
ファッション・アイコンのブレイク・ライヴリー主演
クラシカルでモダン、ファンタジーでSF、そしてロマンティックな物語
29歳で不老となった彼女の、数奇な恋の物語とは?
出演は、アメリカのTVシリーズ『ゴシップガール』で人気女優となり本作が出産後の復帰作となったブレイク・ライヴリー、TVシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のオランダ人俳優ミキール・ハースマン、映画『エアフォース・ワン』のハリソン・フォード、『キルトに綴る愛』のエレン・バースティンほか。監督は2012年の映画『セレステ∞ジェシー』が評価され本作が長編4作目となる32歳のリー・トランド・クリーガー、脚本は映画『かけがえのない人』のJ・ミルズ・グッドルーによるオリジナル。
サンフランシスコの中央資料館で働く物静かな女性は、本当の名前を名乗らなくなって久しい。なぜなら過去に事故に遭って以来なぜか不老となり、もう70年以上も29歳の姿のままで――。母と娘のつながり、恋人との関係、孤独と向き合うことについて。クラシックにしてモダン、ファンタジーでありSF、主軸はラブ・ロマンス、というさまざまな要素をスタイリッシュかつロマンティックに紡いだ作品である。
ジェニー・ラーソンという偽名を名乗る女性は、「スーザン・フライシャー」名義の偽造パスポートを購入。その後、特別なことでもない様子で、勤務しているサンフランシスコの中央資料館に出勤する。業務の傍ら過去の新聞記事を見て自身の人生に思いを馳せる彼女は、1908年1月1日生まれのアデライン・ボウマン106歳。21歳で建設技師と結婚し娘フレミングを出産、夫が事故死した1937年にアデラインは車の運転中にスリップし車ごと川に転落。からくも命は助かるも、この事故時に不可思議な現象が重なり、なぜかアデラインの老化は停止したままとなった。中年になっても外見が29歳のままだったことから警官に怪しまれFBIに拉致されかけ、危機を感じたアデラインは娘の安全を守るため、つらくても別々の人生を送ることを決意。それから10年ごとに名前と住居、外見を変える逃亡生活を70年以上も続けていた。
親しい友だちをもてず一人娘も80歳を過ぎ、飼い犬の死を何度も看取り孤独と向き合う日々。盲目で高齢の親友レーガンはアデラインを自分と同世代と思っていて、そこにアデラインが安心感を抱いて心を許して付き合っていることも不思議な説得力がある(目が見えなくても肌を触れば年齢が若いことはわかるはずとかそういうのは置いといて、レーガンには目に見えない真実が見えているという表現がいいなと)。基本的には一定の距離を保って人と付き合うようにしているアデラインが、魅力的な男性エリス・ジョーンズと出逢い、彼女が避けても断ってもエリスが熱心に通い口説き続けることでストーリーは展開してゆく。映画全体の雰囲気としては、デヴィッド・フィンチャー監督の2008年の映画『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』を思い出す感覚も。
アデライン役はブレイクがエレガントに表現。1908年生まれで1世紀以上生きてきたこともあり、控えめで昔気質で知的で、さまざまな年代のスタイルをミックスするファッションを上品に着こなす洗練された女性として演じている。起業で成功後、人道支援活動に尽力するエリス役は、ミキールが知性とユーモアとキュートさ、温かみとやさしさと頼りがいをもつ、絵に描いたような現代女性の理想の男性像そのものとして。エリスの父親ウィリアム役はハリソンが情の深い男性として、アデラインの娘フレミング役はエレン・バースティンが29歳の姿の母親を思いやる82歳の娘として朗らかなユーモアを交えて演じている。
また出演シーンは少ないものの、ユニークなのはウィリアムの若い頃を演じたアンソニー・イングルーバー(Anthony Ingruber)だ。クリーガー監督は彼のキャスティングについて、このようにコメントしている。「若い頃の“ハン・ソロ”(『スター・ウォーズ』でハリソンが演じた役名)を誰が演じるべきかを話題にしているウェブサイトで、アンソニーがハリソンの真似をしている映像が投稿されていたんです。映画を観てもらうとわかる通り、彼は不思議なほどハリソンにそっくりだったので、私たちは驚いて彼を捜しました。(そしてこの作品で)アンソニーは素晴らしい仕事をしてくれました。観客が彼を発見するのを待ちきれません」
ファッション・アイコンであるブレイクが、1900年代〜現代のワードローブを着こなすエレガントなスタイリングも見どころである本作。アデライン用にデザインされた衣装は50点以上、ブレイクがミューズをしている関係でGUCCIからの衣装提供も実現したとのこと。シックなドレスはもちろん、現代のファッションに'30年代の靴やバッグなどのヴィンテージ・アイテムをあわせたミックス・スタイルの数々も粋で素敵だ。アデラインの姿はファッションとともにヘアメイクも作り込まれ、ヴィジュアルでも時代性を丁寧に表現している。
本作のテーマについて、クリーガー監督は語る。「ブレイクのように魅力的な風貌でずっと若いままでいる……“もしも願いが叶ったら”という発想で、観客をからかおうとちょっとだけ思いました。アデラインの物語を通して私たちが学ぶことがあるとすれば、それは相当な犠牲が強いられる、ということ。近しい人たちが年老いて死んでも自分はそうならず、自分の子どもが年老いて晩年を迎える姿を見て、間もなくその子も死ぬと知るということ。女性に限らず、永遠に29歳のままで(30歳にならずに)いられたら、という多くの人たちが抱く願望が、違った角度から見られるようになるといいなと思っています」
20代のまま不老で美貌と知性をもち、106歳にして遂に出逢った素敵な男性と恋に落ちたら――? ある意味で、多くの女性が抱く願いや妄想や欲望を満たし、望む幸せのすべてを手に入れたとしたらどうなるか、という検証のような。あるわけないけれど、運命のいたずらでもしそんなことが起こったら、それは幸せだと思う? と問いかけるかのような面もある本作。かといって皮肉で教訓めいた、逆説的なお説教のようにとらえる必要はなく、女性の欲望に応えるかのような盛りまくりの設定も茶目っ気やユーモアくらいにとらえて、単純にフィクションの世界を楽しむのもアリでは、と個人的に筆者は思う。
全体を流れるクラシカルでロマンティックな雰囲気、数奇な設定と展開、母と娘の情、美しいヒロインと洗練されたスタイリング、見た目も心映えも優れた魅力的な男性との出逢いと恋愛。映画を見るひとときはシンプルに、現実から離れてファンタジーに浸り楽しむための時間であってもいいと思うから。
公開 | 2015年10月17日より新宿ピカデリーほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2015年 アメリカ |
上映時間 | 1:53 |
配給 | 松竹 |
原題 | THE AGE OF ADALINE |
監督 | リー・トランド・クリーガー |
脚本 | J・ミルズ・グッドルー |
出演 | ブレイク・ライヴリー ミキール・ハースマン ハリソン・フォード エレン・バースティン |
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