劇場版 MOZU

“ダルマ”とは。倉木の妻子が死んだ理由とは?
人気ドラマが充実のスタッフ&キャストで劇場版に
ハードボイルドなサスペンス・アクションのシリーズ完結編

  • 2015/10/23
  • イベント
  • シネマ
劇場版 MOZU©2015劇場版「MOZU」製作委員会 ©逢坂剛/集英社

作家・逢坂剛による累計240万部超の警察小説「百舌(もず)シリーズ」をTBS×WOWOW共同制作でドラマ化し、平均視聴率11.0%、最高視聴率13.8%という異例の記録をマークした『MOZU』シリーズ完結編が劇場版に。出演はドラマから引き続き西島秀俊、香川照之、真木よう子、池松壮亮、伊藤淳史、杉咲花、阿部力、長谷川博己、小日向文世、本作から新たに伊勢谷友介、松坂桃李、そしてビートたけしほか豪華メンバーが集結。監督は『海猿』『暗殺教室』、そして『MOZU』ドラマシリーズを手がけた羽住英一郎。
 公安警察官・倉木が妻子の死の謎を追い続けるなか、東京で高層ビル占拠爆破とペナム大使館襲撃という2つの大規模なテロが同時発生し……。“ダルマ”とはいったいなんなのか。倉木の妻と娘、それぞれの死んだ理由とは? スケールアップしたアクション、明かされてゆく謎……実力派のスタッフ&俳優陣が引きつける、ハードボイルドなサスペンス・アクションのシリーズ完結編である。

公安警察官の倉木尚武は、同じく公安の女性警察官・明星と捜査一課の刑事・大杉とともに、一連の『MOZU事件』で警察内部の闇を暴いた。しかし倉木の妻と娘の死については不明のまま、彼は頑としてその真実を追い続けている。そんななか、東京で高層ビル占拠爆破とペナム大使館襲撃という2つの大規模テロが同時発生。この事件を引き起こしたテログループが日本犯罪史の重大事件の背後に常にあった“ダルマ”とつながり、今も極秘裏に犯罪計画を進めていると判明する。事件に巻き込まれ人質となった関係者を奪還すべく、倉木たちは灼熱の地・ペナム共和国へと降り立ち……。

西島秀俊

“ダルマ”とはいったいなんなのか。倉木の妻と娘、2人が死んだ理由とは? いくつかの重要な謎が明かされ、スクリーンで迫力のアクションを堪能できる本作。主要キャラクターひとりひとりの見せ場がしっかりとあるので、ドキドキハラハラしながらも気分としては、歌舞伎の「待ってました!」「○○屋!」とか、ホラーの「くるぞくるぞくるぞ……来た!」という感覚も。ハードボイルドなサスペンスでありながらエンターテインメント大作、という期待に応える仕上がりとなっている。

妻子の死の真実を追う公安の捜査官・倉木尚武役は、西島秀俊が今回もクールかつ熱く。車のボンネットに飛び乗り一本背負い、屈強なマッチョと肉弾戦、さらにさらにとズタボロになっていくなか、肉を切らせて骨を断ち、石にかじりついてでもあきらめない男のギリギリの心情と、あやうい判断と言動を“らしく”表現している。警視庁を辞職し探偵となった大杉役は、香川照之が義理人情に篤い昔気質の男であり不器用な父親として。ペナム共和国で車に寄りかかり倉木と大杉が話すシーンは西島&香川の2ショットで、あまりにもしっくりとくるおなじみの組み合わせに、なぜか心地よさをおぼえるほどの安定したバディぶりだ。そして失踪した父親を思う公安の女性捜査官・明星役は、真木よう子が凛として。今回は有能な刑事としての面に加え、抑えていてもチラ見えする“女の顔”という大人の色気も伝わってくる。

2つのテロ事件を計画した犯罪プランナー高柳役は伊勢谷友介が冷徹に、実行部隊を率いる殺し屋・権藤役は松坂桃李が残虐に、そして黒幕“ダルマ”役にビートたけしというキャスティングがハマっていて。羽住監督も西島さんもドラマの撮影をしていた時から、「ダルマ役を演じられるのはたけしさんしかいない」と話していたとのこと。監督はこのように語っている。「たけしさんありきで台本を作り始めて、最終的に本が固まる前にオファーしたんですけど、もしダメだったら“ダルマ”をメインにするストーリーをやめようと考えていたくらいです。だから今回オファーを受けていただいて本当に良かったですね。ダルマの説得力がものすごく増しましたから」

西島秀俊,香川照之,伊藤淳史

死んだ暗殺者・百舌こと弟の新谷宏美にかわり、アイスピックを武器に殺人を続けてきた兄・和彦役は、池松壮亮が長くはない出演ながら印象深く、警察の内部調査などを行う津城警視正役は小日向文世が沈着に、交番勤務でコンピューターの使い手として大杉をサポートする鳴宮役は伊藤淳史が軽妙に、大杉の娘・めぐみ役は杉咲 花が物怖じしない高校生として、公安の村西役は阿部 力が倉木たちとともに捜査する若手刑事として、ドラマから引き続きそれぞれに演じている。なかでも見ものは、暗殺者・百舌のもと雇い主であり裏の仕事の請負人・東役の長谷川博己。シリアスな緊張感の続く本作で、お笑いや脱力感の担当としてある種ほほえましいほど。芝居がかった挙動でふりきれ気味、深みのある変態っぷりを清々しく披露している。限定的な例えであるもののバットマンでいうジョーカー役の風情も。

爆破ありカーチェイスあり、大規模なアクションシーンが見どころの本作。日本では規制によって許可が下りない内容も撮影できることもあり、フィリピンのマニラを中心に海外ロケが行われた。なかでもトレーラーと軍用車のカーチェイスはかなりの迫力。白昼の街中で8車線を封鎖して激しいカーアクション、そしてロケットランチャーを発射して爆破。撮影中、予定外に車がスピンしかけたところをドライバーが立て直すという状況も実際にあったそうでスリリングだ。またフィリピンでは本物の拳銃(空砲)を使用するガン・アクションも撮影。拳銃を使う西島、長谷川たちキャストは撮影前に地元警察で銃の扱い方の講習を受け、撮影時には日本とフィリピンのクルーが拳銃のダブルチェックをして慎重に行ったそうだ。

西島秀俊

“MOZUらしさ”について、羽住監督は語る。「全貌がとらえられないことじゃないですかね。見えるようで、なかなか見えてこないのが『MOZU』なのかな、と。僕自身はドラマ版からずっと観てくれている方も、劇場版から初めて観る人も、グルグル作品を回れるといいなと考えているんです。劇場版を見て、あらためてドラマ版を観ないとわからない部分は戻って観てもらったり、そうしたらまた劇場版が観たくなったり……という感じで、無限ループになるようなコンテンツ作りを目指していました。そういう意味では、出口のない作品は作れたのではないかと思います。それに、劇場版が終わっても完結しない部分は残したいと考えていました」

監督による“無限ループ”や、あえて余白を残してあるせいか、まだ続きそうな感覚もあるものの、これで完結、というこのシリーズ。スピンオフドラマは『大杉探偵事務所 美しき標的編』がTBSで2015年11月2日より、『大杉探偵事務所 砕かれた過去編』がWOWOWで2015年11月15日より放送予定とのこと。いち視聴者としてはこれからも引き続きスピンオフを期待したい。
 最後に、2015年9月5日の深夜〜翌6日の昼に行われた、ドラマ版全15話を16時間かけてイッキ見するイベント“「MOZU」15話耐久ノンストップMOZUラリー”にサプライズ・ゲストで登壇した西島さんが語った、本作についてのメッセージをどうぞ。「皆さんを代表とする、連続ドラマからのファンの皆さんのお力で今回、劇場版を作る機会を与えてもらいました。この作品に対して全スタッフ、愛情と情熱を持っていて、今回、本当の最後ということで、とにかくやりきるためにオールスタッフ全力でやりました。きっとドラマを見てくださった方はもちろん、見ていない方も楽しんでもらえる作品になっていると思います。ぜひ劇場に足をお運びください」

作品データ

劇場版 MOZU
公開 2015年11月7日より全国東宝系にてロードショー
制作年/制作国 2015年 日本
上映時間 1:56
配給 東宝
監督 羽住英一郎
原作 逢坂剛
脚本 仁志光佑
出演 西島秀俊
香川照之
真木よう子
池松壮亮
伊藤淳史
杉咲花
阿部力
伊勢谷友介
松坂桃李
長谷川博己
小日向文世
ビートたけし
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。