殿、利息でござる!

みんなの1千両(約3億円)で町ごと貧乏大脱出 !?
庶民が知恵と才覚で経済危機を乗り切った実話をもとに
知られざる秘話を描く、涙あり笑いありのヒューマンドラマ

  • 2016/04/18
  • イベント
  • シネマ
殿、利息でござる!© 2016「殿、利息でござる!」製作委員会

約250年前の仙台藩にて、町人たちが力を合わせ8年かけて懸命にコツコツ貯めた1千両(約3億円)を元手に、経済的な困窮を長年に渡り鮮やかに乗り切った実話をもとに描く痛快な作品。出演は阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、竹内結子、寺脇康文、きたろう、千葉雄大、西村雅彦、重岡大毅(ジャニーズWEST)、松田龍平、草笛光子、山ア努ほか充実の俳優陣が顔をそろえ、本作が映画初出演となる宮城県出身のフィギュアスケート選手・羽生結弦の友情出演も。原作は2010年に映画化された小説『武士の家計簿』などで知られる歴史学者で作家の磯田道史の著書『無私の日本人』の一編「穀田屋十三郎」、監督・脚本は『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンスランバー』『ポテチ』など宮城を舞台にした伊坂幸太郎の小説を映像化してきた中村義洋。小さな宿場町・吉岡宿では重税に苦しむなか、ひとりの知恵者が藩に大金を貸し付けて利息を得る、という秘策を思いつき……。崖っぷちの困窮に庶民みんなで力を合わせて知恵と才覚と根性で立ち向かい、見事に成し遂げるまでの経緯を描く。笑いあり涙あり、史実に基づき知られざる秘話をテンポよく鮮やかに、あたたかい人情がしみじみと伝わるヒューマンドラマである。

妻夫木聡,阿部サダヲ,瑛太

約250年前の江戸時代。仙台藩の小さな宿場町・吉岡宿では、きょうも夜逃げの一家が荷車をひいて町を出てゆく。重税があるうえに、宿場町の運営・費用負担でお上の物資を運搬する“伝馬役(てんまやく)”があり、この地域が仙台藩の直轄領ではないため助成金もない、という三重苦にあえいでいるのだ。そして住民は夜逃げで減り続け、残された住民の負担は増える一方、という悪循環に。造り酒屋の十三郎が状況を悲観し思いつめていると、茶師で知恵者の篤平治はふと思いつきで、藩に大金を貸付けて利息を受け取る=搾取される側の町人が搾取する側に回る、という逆転のアイデアを話す。やりようによっては打ち首確実の発想ながら、窮状に疲弊していた吉岡宿の有志は宿場町の存続と住人たちの未来のため、この危険な賭けに打って出ることに。十三郎と篤平治のもと口コミで集まった9人の町人たちは、千両(約3億円)という大金を水面下で集めるべく、私財を投げ打ってまで活動を開始する。

ポップな殿、利息でござる!とポスターイメージから軽い感覚のコメディ時代劇と思いきや、軽快さや笑いがありながらも、胸に深く染み入る実話ベースのエピソードを描く本作。単に奇策を成功させたということだけではなく、もともと権力も地位もあるわけではない人々が力を合わせて経済的な危機を大胆に乗り切ることができたこと、宿場の存続と町人たちの生活を長年に渡って守るという“無私”の心で大きな一手を8年がかりで成就させながら、計画の中心人物9人は「つつしみの掟」という規範を自ら定め、おごることのなきよう長きに渡って努めたという事実。そのためこのエピソードが史実の中で秘話となっていた、という経緯まで丁寧に描かれているのが胸に沁みる。関係者のなかにも自慢したがる人や張り合う人や出し渋る人がいたり、家族の因縁がからんできたりと、そうした問題をみんなで寄り合って乗り越えていく、という群像劇としての見ごたえもたっぷりと楽しめる内容だ。

竹内結子,阿部サダヲ,瑛太

造り酒屋の穀田屋十三郎役は阿部サダヲが真面目一徹で熱心な男として、茶師で知恵者の菅原屋篤平治役は瑛太が軽妙なやり手として、十三郎の弟であり造り酒屋で質屋も営む吉岡宿一の大店・浅野屋の甚内役は、妻夫木聡が淡々と仕事をこなすケチと評判の人物として。しっかり者の飯屋の女将とき役に竹内結子、村民を代表する村役人の肝煎(きもいり)・遠藤幾右衛門役に寺脇康文、村をまとめる大肝煎・千坂仲内役に千葉雄大、十三郎の叔父でみそ屋の穀田屋十兵衛役にきたろう、両替屋の遠藤寿内役に西村雅彦、十三郎の息子・音右衛門役に重岡大毅、冷徹な仙台藩の出入司(財政担当の役人)・萱場杢役に松田龍平、十三郎と甚内の父で先代の浅野屋甚内役に山ア努、その妻で兄弟の母であるきよ役に草笛光子と、充実の俳優陣がそれぞれに演じている。中村監督作品といえばお約束の俳優・濱田岳はナレーションとして、彼らしいのんびりとした口調で参加。友情出演の羽生結弦は、撮影当日まで誰が登場するか出演者たちにも知らされていなかったサプライズ出演だったそうで、第七代仙台藩主・伊達重村役で若きお殿様として、堂々と登場している。

磯田氏による原作の著書『無私の日本人』に収められた「穀田屋十三郎」が原作である本作。江戸時代中期(1766〜)の吉岡宿にて“庶民たちによる窮民救済事業”の資料をまとめた記録集である古文書『國恩記』を読んで涙し、「この話は『庶民の忠臣蔵』だ。この国にはすごい人々がいたものだ。若い人に伝えなくては」と思い、書き上げたとのこと(『國恩記』を執筆した龍泉院の和尚・栄州端芝は映画にも登場している)。そして中村監督が「こんな人がいた、ということを伝えねばならない、今の日本を辛うじて救っているのは、こうした精神なのではないか」と思い、磯田氏に会いに行って映画化を申し入れ、決まったそうだ。
 この映画について磯田氏は、「ただの人情映画ではありません。資本・価値・貨幣・家族・共同体・権威・支配……いろんな問題を問うた大きな作品です。この映画を観てください。そして感じたことを人に語ってください。ぼんやりとした何かを変えるために」と語り、中村監督は「脚本を一途に書いた思いに応えるかのように、頼もしいキャストの方々が集まってくれました。とはいえ、そこはエンターテインメント。武士より武士らしかった百姓たちと、私欲や保身しか頭にない武士との対決です。なんだ、今の日本と(うちの職場と)ちっとも変わらないじゃないか、なんて思いながら観て頂けたら嬉しいです」とコメントしている。

阿部サダヲ,竹内結子,ほか

2016年5月14日の全国公開に先駆けて、5月7日に宮城県で公開となる本作。主人公・穀田屋十三郎の家は現在も宮城で酒屋を営んでいて、'16年3月16日に行われた宮城先行完成披露試写会ではその末裔の方々も観覧された、というエピソードもほのぼのとしている。エンディングにはRCサクセションの「上を向いて歩こう」で忌野清志郎のヴォーカルが気持ちよく流れ、爽快感がさらに盛り上がって。最後に映画ファンへのメッセージとして、'16年4月13日に楽天イーグルスVS千葉ロッテ戦の始球式で、穀田屋十三郎として着物+ちょんまげで投球した阿部サダヲさんの愉快なコメントをご紹介する。「こんにちは!穀田屋十三郎です。私は約250年前の江戸時代、仙台藩・吉岡宿、今でいう大和町に実在した人物です。まずは5月7日にここ宮城で先行公開致します。そして、14日に全国公開です。殿様にお金を貸して、その利息で町を救った格好良い9人の男たち、9人の男たちが頑張る……野球でございます!ぼくは野球が大好きでございます!ありがとうございます。ハラハラドキドキしながら、最後には感動する、そんな映画ができあがりました。ぜひ皆さんご覧ください!」

作品データ

殿、利息でござる!
公開 2016年5月7日より宮城県先行公開、5月14日より丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2016年 日本
上映時間 2:09
配給 東宝
監督・脚本 中村義洋
脚本 鈴木謙一
原作 磯田道史
出演 阿部サダヲ
瑛太
妻夫木聡
竹内結子
寺脇康文
きたろう
千葉雄大
橋本一郎
中本賢
西村雅彦
山本舞香
岩田華怜
重岡大毅
羽生結弦
松田龍平
草笛光子
山ア努
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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