アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅

マッドハッターを救うため、アリスは再び不思議の国へ
チェシャ猫や白うさぎ、赤と白の女王たちとの再会
時間をめぐる冒険を鮮やかな映像で描くファンタジー

  • 2016/07/01
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アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅© 2016 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ティム・バートンが監督から製作に回り、前作『アリス・イン・ワンダーランド』から6年ぶりに続編が完成。出演は前作から引き続きミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、アン・ハサウェイ、ヘレナ・ボナム=カーター、新メンバーとして2006年の映画『ポラット/栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』で知られるコメディアンで俳優のサシャ・バロン・コーエンほか。脚本は前作から引き続きリンダ・ウールヴァートン、監督はティム・バートンの大ファンでイギリス出身、『ザ・マペッツ』のジェームズ・ボビンが手がける。悲しい過去に心を奪われたマッドハッターを救うため、アリスは禁断の手段で時間をさかのぼり……。時間と家族、喪失と希望をモチーフに、カラフルな衣装や美術セット、最新のビジュアル・エフェクトで、アリスの摩訶不思議な冒険を描くファンタジー・アドベンチャーである。

ミア・ワシコウスカ,ほか

アンダーランドという名のワンダーランドでアリスが救世主として戦った冒険から3年。亡き父から帆船を継ぎ船長となったアリスは、3年の航海を終えてロンドンへ戻ってくる。すると周囲の人々が船を手放し船長をやめさせようとする厳しい現実に直面。追い詰められるなか、アリスの前に青い蝶が現れる。かつてアンダーランドで出逢った芋虫アブソレムが変身し、友人マッドハッターの危機をアリスに告げに来たのだ。アブソレムに導かれるままアリスは鏡を通り抜け、アンダーランドへ到着。マッドハッターの元を訪ねると、家族の衝撃的な悲劇を思い出した彼は過去に心を奪われて悲しみ続け、命の火が消えかけていた。なんとしてもハッターを救いたいと思ったアリスは、白の女王から“時間をさかのぼり過去を変える”禁断の方法を聞く。そしてアリスは時間の番人タイムから時を操る重要な道具を奪い、タイムの追跡を振り切ってワンダーランドの過去、そのはじまりであり仲間たちの子供時代へと向かってゆく。

大ヒットした『アリス・イン・ワンダーランド』のシリーズ第2作。原案はイギリスの作家で詩人、数学者であるルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』の続編『鏡の国のアリス』であるものの、ストーリーは大きく異なる。原作『鏡の国のアリス』の物語はチェスの駒の動きをもとに展開し、映画向きではないことから今回は【時間】をモチーフにしたまったく新しいストーリーを創作したとのこと。’16年6月20日に東京で行われた来日記者会見にて、ボビン監督は本作についてこのように語った。「この映画は1作目でティム・バートンが作った世界観が基礎になっている。その上で、原作にあるジョン・テニエルの挿絵のようなビクトリア朝の雰囲気を取り入れたんだ。だから、1作目とは年代も地理も設定が変わっている。ルイス・キャロルの原作に頼るだけでなく、映画によりストーリーをつけることに力を入れた。例えば今作から登場するタイムというキャラクターは、原作の一節からヒントを得て、想像を膨らませたりした。原作通り、チェスのシーンもあるから原作ファンの人にも喜んでもらえると思うよ」
 またプロデューサーのスザンヌ・トッドはこの物語について、来日記者会見でこのように語った。「前作同様、ワンダーランドはアリスの潜在意識の中、要するにアリスの心自身なの。時間の番人タイムという新しいキャラクターは、時間の大切さを教えてくれる存在。この映画を見た人は、愛する人たちと過ごすことがいかに大切かと気付くと思うわ」

アン・ハサウェイ,ジョニー・デップ,ミア・ワシコウスカ

アリス役はミアが成長した大人の女性としてはつらつと好演。前述の来日記者会見でミアは、6年ぶりのアリス役についてこのようにコメントしている。「今作ではアリスは自立した女性として、亡き父の残した船にのり船長として活躍しているの。私もこの役と出会い、このスタッフたちと出会って、役者として多くのことを学んだわ。アリスと重なる部分が(私自身に)あったことは演技に役立ったと思う」
 マッドハッター役はジョニーが、喪失に向き合う姿を不思議の国の住人らしく。ハッター“らしさ”はそのままに、喪失の悲しみから仲間たちのサポートを得て立ち上がる姿を演じている。現在、妻アンバー・ハードとの離婚問題が報道されている彼が、家族の喪失に向き合う役を演じるのは皮肉な面もあるものの、現地時間’16年5月23日にアメリカのロサンゼルスで行われたUSプレミアにて、今回の役と家族についてジョニーはこのように語った。「今作でも家族の絆が描かれているけど、やはり子供がいると、それ以上に強いものはないよ。もちろん、身内の母親、父親、兄弟ももちろん重要だけど、子供は自分の人生にとって切り離すことのできない存在だからね」
 白の女王役はアンがおっとりと天然ふうにかわいらしく。彼女は’16年3月に第一子を出産し2か月後に本作のUSプレミアに参加したことも話題となった。巨大な頭をもつ赤の女王役はヘレナが相変わらずの勢いでワンマンかつユーモラスに、時間を司るタイム役はサシャが持ち前の濃い存在感とコメディセンスでユニークに演じている。またワンダーランドの愛らしいキャラクターたち、チェシャ猫、白うさぎ、双子のトウィードルダムとトウィードルディーら人気キャラクターたちも活躍。冒頭に登場する芋虫から蝶に変身した賢者アブソレム役は、’16年1月に他界したアラン・リックマンが声のみの出演をしており、おだやかでスモーキーな低音ヴォイスでアリスをワンダーランドへと誘(いざな)う。彼は筆者も個人的に好きな俳優のひとりで、69歳というやや早い死をとても残念に思う。本作はアランの遺作であり、エンディングには「我らが友アラン・リックマンに捧ぐ」と添えられている。

ヘレナ・ボナム=カーター,ミア・ワシコウスカ

ティム・バートンから人気シリーズの監督を継ぐというハードルの高い挑戦をしたボビン監督に拍手しつつ、バートンに製作だけではなく監督もしてほしかったと思うのは、世界中に大勢いるバートン・ファンのうちのひとりとして筆者も同じ気持ちで。バートンは本作について現地時間‘16年5月10日にイギリスのロンドンで行われたワールドプレミアにて、このように語った。「同じキャストが戻ってきてくれたのは良かったし、監督のジェームズに会った時にすごく良いエネルギーや考えをもっているのを感じたんだよ。この映画は原作の素晴らしい世界観に、新しい要素を加えることのできる場所になったんだ。今作のストーリーは前作の数年後のアリスの姿から始まり、またワンダーランドへの旅に戻るところから始まる。サシャ・バロン・コーエンをはじめ新しいキャストや要素が加わっているから、新しい一面も見られるしね。男女問わず、アーティスティックかつ情熱的で、現実世界で溶け込めないような人が、問題解決のために頭の中のファンタジーワールドへ逃亡するには、すごく共感してもらえる映画だと思うよ」
 またプロデューサーのスザンヌ・トッドも、バートンとは映画にかかわる音楽やビジュアル、あらゆることを話し合ったとコメント。サウンドトラックはほとんどのバートン監督作品や製作作品を担当している作曲家ダニー・エルフマンが手がけ、“らしい”世界観の一端を担っている。ボビン監督は前述のロンドン・プレミアでこのように語った。「今作に参加できたこと、そしてジョニーとともに映画を作れたことはとても光栄だよ。彼はとてもすばらしい俳優で、多くの素晴らしいアイデアを持っており、共同作業にとても協力的なんだ。この作品は色々なレベルで考えることができるんだけど、なかでも一番受け取ってもらいたいメッセージは<タイム(時間)>についてだね。もし我々が時間の捉え方を変えたら、我々の人生はもっと満たされるし、後悔もなくなる。過去は変えることはできないけれど、そのことから学ぶことはできるからね」
 最後に、ジャパン・プレミアにてミアが本作について、ファンに伝えたメッセージをご紹介する。「私自身、映画のアリスというキャラクターが本当に大好き。とっても素敵で強く、原作のアリスが持っている自立心や好奇心が強く感じられるし、アリスへの思いはとても大きいものです。皆さんが困難にあったとき、<ありのままの私でいいんだ>というメッセージをこの映画から受け取ってくれたら嬉しいわ」

作品データ

アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅
公開 2016年7月1日より、TOHOシネマズ日劇ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2016年 アメリカ
上映時間 1:53
配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
原題 ALICE THROUGH THE LOOKING GLASS
監督 ジェームズ・ボビン
製作 ティム・バートン
スザンヌ・トッドほか
脚本 リンダ・ウールヴァートン
キャラクター原案 ルイス・キャロル
音楽 ダニー・エルフマン
出演 ジョニー・デップ
アン・ハサウェイ
ミア・ワシコウスカ
ヘレナ・ボナム=カーター
リス・エヴァンス
サシャ・バロン・コーエン
声の出演 アラン・リックマン
スティーヴン・フライ
マイケル・シーン
ティモシー・スポール
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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