ターザン:REBORN

雄大な景観と最新CGで魅せる新生ターザン
ハリポタのイェーツ監督と実力派キャストによる
アクション・エンターテインメント

  • 2016/08/05
  • イベント
  • シネマ
ターザン:REBORN© 2016 Edgar Rice Burroughs, Inc. and Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

「ハリー・ポッター」シリーズの後期4作品を手がけたデイビッド・イェーツ監督が、かのターザンをオリジナル・ストーリーで映画化。出演は、アメリカの映画サイト「TC Candler」による「世界で最も美しい顔」(2013年2位、2014年12位、2015年4位)にたびたび選出されているスウェーデン出身のアレクサンダー・スカルスガルド、映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『スーサイド・スクワッド』のマーゴット・ロビー、『イングロリアス・バスターズ』『ジャンゴ 繋がれざる者』のオスカー俳優クリストフ・ヴァルツ、『アベンジャーズ』『ヘイトフル・エイト』などのサミュエル・L・ジャクソンほか。英国首相から官邸に呼ばれたジョン・クレイトン3世は、外交のためコンゴへ赴くことに。幼い頃、コンゴのジャングルで動物にターザンとして育てられたジョンは、妻ジェーンとともに約10年ぶりにアフリカに渡る。元のストーリーとは異なり、今はイギリスで貴族として生きるジョンが、義のため愛のため自発的にジャングルへ戻る、という展開で描く。実際の映像をCGで編集したアフリカの風景が美しい、アクション・エンターテインメントである。

19世紀のイギリス。英国首相から官邸に呼ばれた貴族院の一員、5代目グレイストーク伯爵ことジョン・クレイトン3世は、ベルギー国王レオポルド2世の招待をアフリカで受ける、という外交の案件をもちかけられている。それはジョンが約10年前までアフリカのジャングルで動物に育てられた青年ターザンとして見込まれてのことであり、貴族としてイギリスになじもうとしている今は気乗りしないことだった。しかし同席していたアフリカ系アメリカ人のジョージ・ワシントン・ウィリアムズから「部族民が奴隷として使役されている疑いがあり、その証拠を見つけたい」と懇願され、ジョンはジョージとともにコンゴへ赴くことに。アフリカで出会い結婚したジョンの妻ジェーンにどうしても一緒に行くと押し切られ、ともにコンゴへと向かう。

アレクサンダー・スカルスガルド,サミュエル・L・ジャクソン

アメリカの作家エドガー・ライス・バロウズが100年以上前の20世紀初頭に生み出したキャラクター“ターザン”を、新しいオリジナル・ストーリーとして描く本作。劇中には19世紀に実在した人物をモデルにしたキャラクターが登場し、コンゴを統治していたベルギー王、兵士から人道主義者となったジョージ・ワシントン・ウィリアムズ、レオポルド2世のもとで豪腕を揮うレオン・ロムなど実際の史実に関わる内容となっていることも注目だ。脚本は『ハッスル&フロウ』のクレイグ・ブリュワーと、『エージェント:ライアン』のアダム・コザッドが執筆。ブリュワーは本作の内容について熱心に語る。「僕はエドガー・ライス・バロウズの小説の大ファンだったから、ターザンとジェーンはもちろん、バロウズの名作に登場するキャラクターや設定のいくつかをこの映画に盛り込むことは不可欠だと思ったんだ。そして僕たちはこのストーリーを、レオポルド2世のコンゴ統治にまつわる史実に根づかせたいとも思った。だから、あの時代と場所に結びつく人々を、ターザンたちに関わらせるのは興味深かったよ」
 イェーツ監督は脚本の魅力を語る。「この映画のストーリーは、当時のコンゴで実際に起きていた歴史的な背景の範囲内で展開する。そこが私はとても魅力的だと思った。また、私がつねに惹かれるテーマも盛り込まれていたんだ。それは、自分が何者であり、ほんとうの居場所がどこかを見極めようとし続けているキャラクターを描いているという点だ。そして何よりも重要だったのは、初めて脚本を読んだときに、私にはその中にとても大きな、生き生きとした鼓動をもつ何かを感じとれたということだった」

グレイストーク伯爵ことジョン・クレイトン3世であるターザン役は、アレクサンダーが体を筋骨隆々に作り込んで好演。194cmの長身に彫刻のような肉体、美しいお顔、何があっても愛する妻を守り抜く忠実さを魅力的に表現している。現実には、無人島でも生きていけるほどのワイルドな野性味と、貴族としてのエレガントさや知性、地位と気品、大胆な行動力や驚異的な身体能力と、繊細に女性に触れるやさしさや思いやりなどの相反する要素をオールラウンドに兼ね備える人間など存在しないわけだが(いるとしてもおそらく全人類の1%未満)、フィクションならではのありえない盛り感で女性にアピールするキャラクターとなっているのが面白い。ちなみに雄叫びはかの「ア〜アア〜〜〜」ではなく感情の発露としてもっと雄々しく、つるを次々とつかんでジャングルを飛び回る迫力のシーンは、ボディや動きはCG、顔と表情はアレクサンダー本人で表現されている。
 アフリカで出会い恋に落ちたジョンの妻ジェーン役は、マーゴットが自己主張をはっきりとする自然体の女性として生き生きと。ジョンと一緒にコンゴへ向かうジョージ役はサミュエルが冒険に不慣れながらもジャングル行きに同行するアフリカ系アメリカ人として、ターザンの宿敵であるコンゴの部族の族長ムボンガ役はアフリカ出身のジャイモン・フンスーが神秘的かつ猛々しく、イギリスの首相役はジム・ブロードベントが、それぞれに演じている。
 そしてベルギー国王のもとで働く白スーツの男レオン・ロム役は、クリストフ・ヴァルツが相変わらずの濃い存在感でネッチリと。冒頭で族長ムボンガと出会うシーンや、妻ジェーンと食事をするシーン、そしてラスト近くのクライマックスなど、コテコテの悪役としてさまざまに魅せてくれる。今回の役が当時の実在の人物にもとづいていることについて、クリストフは語る。「それによって、この映画は歴史に根を下ろすことができている。こういうアドベンチャーではあまりないことだ。そしてこの映画の場合、その部分がすっきりと盛り込まれている」
 先日アメリカの映画情報サイト「GeekTyrant」でクウェンティン・タランティーノが自身の作品から選んだベスト・キャラクターとして、クリストフが2009年の映画『イングロリアス・バスターズ』で演じたナチス将校ハンス・ランダ大佐を選んだことも話題に。イェーツ監督も本作でクリストフを熱く称えている。「クリストフとは、レオン・ロムというキャラクターを練る上でずいぶん時間をかけた。彼はたくさんのアイデアを出してくれて、私たちはそれを歓迎したよ。彼の直感はキャラクターだけに留まらない。常にストーリーと文脈を頭に入れているので、フィルム・メイキングにおいて頼りになるパートナーなんだ」
 そして製作のデイビッド・バロンも彼を称賛する。「クリストフがスクリーン上に登場したとたん、観客は引き込まれる。ロムは間違いなく冷酷なんだが、クリストフは意外な形で役にユーモアを吹き込むんだ。彼は強烈に頭がよく、性格もとてもいいんだよ。そして総合的なチームプレーヤーでもある。これ以上望めないような俳優だ」

アレクサンダー・スカルスガルド,ほか

撮影の際、野生の領域にスタッフやキャストが大勢で行って撮影をするのは、物資などの輸送面で難しく環境保護的にもよくないことから、俳優たちはイギリスを中心に撮影したとのこと。ストーリーの主要な舞台となったアフリカ中西部の国ガボンへはイェーツ監督とカメラマンらが行き、そこで6週間撮影したアフリカの雄大な景観を背景として、別に撮影した俳優たちの映像と合成することで、本作の迫力ある映像が完成したそうだ。
 一方、イギリスのリーブスデン・スタジオの2つのサウンドステージでは、大量の熱帯植物とそれを保持する特殊な照明と灌漑システムが導入され、人工の木などのセットを織り交ぜながら大規模なジャングルを美術チームが制作。セット内には実際の滝をモデルに、高さ約30メートルの山頂の崖から流れ落ちる大きな滝を有し、俳優たちも大規模なセットに圧倒されていたとも。また撮影はイギリス各地のロケーションでも。イングランド中央部のダービーシャーにあり、現在はナショナルトラストが管理する18世紀に建造されたケドルストン・ホールは、グレイストーク伯爵邸として。TVシリーズ『ダウントン・アビー』で知られるハンプシャー州のハイクレア城の敷地にある大きなスギの木は、ジョンとジェーン夫妻がひと時を過ごすシーンで登場する。
 野生動物を保護する観点と最新CGの技術の進歩により、動物はすべて作り込まれたCGで、本物の動物は一切登場していない。視覚効果監修のティム・バークは、多種多様の動物を本物そっくりにスクリーン上で描くために、数多くのVFX会社とコラボレーションをした。スタッフたちはドキュメンタリー映像で野生の環境に暮らす動物たちの行動を研究し、ゴリラ、ライオン、象、ガゼル、シマウマ、カバ、ダチョウ、ヌー、ワニなど本作の野生動物をCGアニメーターたちが忠実に再現したそうだ。また族長ムボンガが全身に纏っているヒョウの頭や革も本物の動物のものではなく、別の素材で作ったとも。
 個人的に好みなのは、アフリカで出会ったジョンとジェーン夫妻がクバ族の人々と再会し、部族の人々に歓喜の歌で歓迎されるシーンだ。その時の歌と大部分のセリフはアフリカ中西部に50ほどある言語のうちのひとつである“リンガラ語”で、俳優たちは難しいながらも熱心に覚えてあのシーンを完成させたとのこと。言語がわかる人が聞けばつたないシーンかもしれないが、クバ族の協力を得て撮影しているためか独特の大らかな一体感とぬくもりがあり、観ていてどこかなつかしい気分になる。イェーツ監督は語る。「この映画で私たちは、とくにクバ族に象徴される小さな地域社会を称えたかった。だから長い時間をかけて部族をまとめたんだ。彼らは、この撮影の体験に温かみをもたらしてくれた。彼らのエネルギーはすごく特別なものだった。スタジオの屋外撮影所に作られた村のセットに足を踏み入れると、別の場所に送り込まれたとすぐに感じたよ」
 ガボンでのガイドと、アフリカに関するテクニカル・アドバイザーとして製作全体の相談役は、ガボンで野生生物と天然資源の保存を15年継続して行っているジョシュ・ポンティ氏が務めたとのこと。イェーツ監督は語る。「この映画は、観客をアフリカの最深部での冒険に導く。それは、この地球上のどこにも負けないくらいエキゾチックで畏敬の念がわき上がるような体験だ。私たちは、スリル満点であると同時に、家族と地域社会というテーマにも触れ、自然界の保護を喚起するような映画を作りたかった。あの景観の荘厳さ、あの地で生きる人々の威厳と品格、そして動物たちの驚異を称える作品なんだ。このストーリーには多くの側面があるので、映画館では豊かで心を躍らせられる体験ができると思う」

アレクサンダー・スカルスガルド,マーゴット・ロビー

監督をはじめスタッフたちの尽力、俳優たちのアンサンブル、野生のままの自然の映像、作り込まれた動物たちのCG映像と美術セット、時代背景を投影したストーリーなどが相まって楽しめるアクション・エンターテインメントである本作。ストレートに夏休み向き、ファミリーでもデートでも気軽に楽しめる本作について、イェーツ監督は語る。「映画作りのすばらしさには、アフリカのような神秘的な場所へ観客をいざなうことができるという点がある。すごくわくわくするよ。観客は自ら旅をする必要はない。彼らはただ映画館の中へ足を踏み入れるだけで、想像したこともないような別の時代、別の世界へ運ばれる。そんな体験を提供できることは、フィルムメーカーの大きな役得だよ」

作品データ

ターザン:REBORN
公開 2016年7月30日より、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほかにて2D/3D全国ロードショー
制作年/制作国 2016年 アメリカ
上映時間 1:50
配給 ワーナー・ブラザース映画
原題 The Legend of TARZAN
監督・製作総指揮 デイビッド・イェーツ
ストーリー・脚本 クレイグ・ブリュワー
アダム・コザッド
出演 アレクサンダー・スカルスガルド
サミュエル・L・ジャクソン
マーゴット・ロビー
ジャイモン・フンスー
ジム・ブロードベント
クリストフ・ヴァルツ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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