マリアンヌ

ブラッド・ピット×マリオン・コティヤール共演
秘密任務で知り合い結婚した夫婦に、ある疑惑が…
クラシックな趣のサスペンスにしてラブ・ストーリー

  • 2017/02/03
  • イベント
  • シネマ
マリアンヌ© 2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

ブラッド・ピットと『エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜』のマリオン・コティヤール共演、『フォレスト・ガンプ/一期一会』『フライト』のロバート・ゼメキス監督が大人の愛を描くサスペンス。共演は映画『リンカーン』のジャレッド・ハリス、『グランド・イリュージョン 見破られたトリック』のリジー・キャプラン、『フューリー』のダニエル・ベッツ、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』のマシュー・グードほか。1940年代の第二次世界大戦下、秘密任務の遂行のためタッグを組んだ諜報員マックスとフランスのレジスタンスのマリアンヌは、互いに惹かれ合い…。戦時下の混乱と緊張のなか、愛と疑惑が深まってゆく。クラシックな趣のサスペンスであり、熱いラブ・ストーリーである。

1942年、モロッコ。イギリスの特殊作戦執行部(SOE)の緊急任務のため、諜報員のマックスはドイツ大使を暗殺するべく占領下のカサブランカにパラシュートで降り立つ。作戦執行のため、マックスは初対面であるフランスのレジスタンスの女性マリアンヌと長年連れ添った夫婦として暮らし、実行の時を待つ。生真面目でお堅いマックスと洗練され社交的なマリアンヌは、ともに銃器類の扱いから情報の収集・分析など実戦経験に富み、冷静かつ判断力に優れることから対等に認め合う。重要な任務のパートナーとして距離をおいていたものの互いに惹かれ、任務遂行の数週間後にロンドンで結婚する。

ブラッド・ピット,マリオン・コティヤール

ブラッド・ピットとゼメキス監督の初タッグである本作。戦時下を舞台にした見ごたえのある大人のラブ・ロマンスであるものの、ストーリーより何より、“ブラッドとアンジーの離婚の発端となった作品”として有名になっているのは周知の通りだ。しかしマリオンは夫であるギョーム・カネとの間に5歳になる息子もいて、ブラッドとの不倫報道をきっぱりと否定していることも然り。一般的に、キャストやスタッフの騒動が映画の宣伝時期に重なるのは、宣伝として効果的になるかその反対となるかは、映画の質にもよると思うが、この映画にとっては大きな不運だったように思える。ブラッドに関わる真偽不明のさまざまな情報が飛び交い、元妻アンジー側からプレッシャーをかけられ続けたことはおそらく彼にとってかなり辛く、火種のひとつとなったこの作品との関わりを最小限にとどめたのではないだろうか。プレス資料からしても、ほかのキャストやスタッフのコメントは紹介されているのに、主役であるブラッドのコメントが一切ない、という異様な状態。ブラッドがアンジー側をこれ以上刺激しないよう、かなり過敏に配慮しているように受け取れる。ハリウッドのビッグ・カップルの泥沼離婚のきっかけとなり、プロデューサーや俳優として愛されているブラッドが宣伝に関わらないようにしているだろうことで、この作品は大きな後押しを失った形になっているのかもしれない……と個人的に思う。

秘密諜報員マックス役は、ブラッドが生真面目で物静かな男として表現。方言指導のコーチから“ケベック訛りのフランス語”の訓練を受け、可能な限り時系列順に撮影できないかとゼメキス監督に相談したとも。フランス語を話すシーンも多く、不器用で実直なキャラクターと相まって、ブラッドの新鮮な一面が楽しめる。マックスが子どもをあやし、かいがいしく世話をするシーンはとても楽しそうで堂に入っていて、ふとブラッドの実生活の親権問題を思い出し、観ていてしみじみとするのものが。フランスのレジスタンスのマリアンヌ役は、マリオンが知的で溌剌と、自らの情愛と信念をブレずに貫く女性として。ブラッドとの相性も良く、豊かな表現力で厳しい情勢下に生きる女性を魅力的に演じている。マリオンはこのストーリーについて語る。「『マリアンヌ』はサスペンスであると同時に悲劇的な愛の物語です。ロバートは娯楽映画を作る古典的な手法から始めて、そこに彼独自の現代的で洞察に満ちた要素を加えています」
 特殊作戦執行部でのマックスの上司であるフランク・ヘスロップ大佐役はジャレッド・ハリスが、マックスの妹ブリジット役はリジー・キャプランが、マックスの同僚ジョージ役はダニエル・ベッツが、マックスが以前に作戦で関わったガイ・サングスター大佐役はマシュー・グードがそれぞれに演じている。

マリオン・コティヤール,ブラッド・ピット

1940年代を舞台に、フランスの支配下にあるモロッコ、激しい爆撃にあえぐイギリスのロンドンなどを描く本作。作り込まれた舞台セットとゼメキス監督の持ち味のひとつであるVFXで、モロッコの広大な砂丘をはじめ、さまざまな美しさやスケール感、迫力のある映像が楽しめる。なかでも監督は、当時の活気ある国際都市カサブランカに特に思い入れがあり、映画ではカナリア諸島で撮影した映像に、スタジオセットとデジタル・エフェクトを融合したそう。ゼメキス監督は1942年の名画『カサブランカ』へのオマージュについて語る。「この映画は私たちが古典的名作『カサブランカ』ですでに知っているカサブランカの街を思い起こさせるものにしたかったんだ。あの映画は当時のカサブランカを見事に映し出していたからね。戦時下にありながらとても優雅でスタイリッシュで、洗練された都市だった」
 またゼメキス監督は本作で愛とサスペンスのほかに、戦時下でも怯えて屈することはしない、ロンドンの様子を描くことも大切なことだったと語る。「ロンドンは何度も夜に爆撃を受けていたが、人々は都市の生活を続けていた。続けていくこと自体がスローガンでさえあったんだ。これこそ今回描きたかったことだ。戦争がたとえ目の前で繰り広げられていても、人々がある種ゆだねて暮らしている世界だ。彼らは人生がいつでも終わりを迎え得ると気づいていて、そのふるまいにも街の光景にも、ある種の運命論的な感覚があった。私は映画にもデザインにもその雰囲気を込めたいと思ったんだ。愛が危険を生み、結婚してもそこから逃れられないマックスとマリアンヌを含み、人々が常に死に抗おうとする世界をね」

ブラッド・ピット,ほか

アカデミー賞にノミネートや受賞経験のある製作陣とキャストでありながら、2017年1月24日(現地時間)に発表された今年のアカデミー賞では、衣装デザイン賞のみのノミネートにとどまった本作。マリアンヌの砂漠の色調に映えるドレスや、ロンドンでのボヘミアン風のスタイル、マックスのフォーマルなスーツなども見どころのひとつだ。諸事情から賞レースからはずれ、大がかりなプロモーションなどはほぼなくとも、役者たちが魅力ある演技で惹きつけ、製作陣が熱心に作り込み、ドラマとして良質な作品であることは確かだ。そもそもこの物語は、脚本家のスティーヴン・ナイトが実話から着想を得て執筆したとのこと。第二次世界大戦時、カナダ人のスパイと元教師であるフランス人のレジスタンスが恋をして結婚したが、ひとりに二重スパイの疑いがかけられたという。諜報員は男女で夫婦を装うことも多く、諜報機関の推奨しない結婚をすることもしばしばあるそう。そして本作の企画を進めている段階で、ナイトの執筆した脚本を気に入ったゼメキス監督が、自ら監督に申し出たそうだ。ゼメキスは本作のストーリーの魅力と監督したいと思った理由について語る。「脚本は感動的で壮大で、ロマンティックな感触があった。そして監督として私が最もやりたいのは、観客の心を揺さぶることだ。今回のように力強く、様々に感情が入り乱れる物語は、その願いを実現させる大きなチャンスだからね」

作品データ

マリアンヌ
公開 2017年2月10日よりTOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2016年 アメリカ
上映時間 2:07
配給 東和ピクチャーズ
原題 ALLIED
監督 ロバート・ゼメキス
脚本 スティーヴン・ナイト
出演 ブラッド・ピット
マリオン・コティヤール
ジャレッド・ハリス
リジー・キャプラン
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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