ワンダーウーマン

アメコミの女性ヒーローものを女性監督が実写化
痛快なアクションとともに繊細なドラマやロマンス、
メッセージをくっきりと描く、良質なエンタメ作品

  • 2017/08/08
  • イベント
  • シネマ
ワンダーウーマン© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

アメコミの人気作を実写映画化し、すでに2017年6月からの全世界興行成績の合計が779,433,279 ドル(約856 億円/1 ドル110 円)を突破、女性監督作品の興行成績として、映画史上歴代No.2となっている話題作。出演は映画“ワイルド・スピード”シリーズのイスラエル出身の女優ガル・ガドット、“スター・トレック”シリーズのクリス・パインほか。監督は2003年の映画『モンスター』のパティ・ジェンキンスが手がける。プリンセスにして最強の戦士ダイアナは、アメリカ人パイロットとの出会いを機に、世界を救うべく第一次世界大戦下のヨーロッパへと向かう。アメコミのスーパーヒーローものの痛快さに加えて、繊細な人間ドラマやラブロマンス、現代へのメッセージをシンプルにくっきりと描く。年齢性別国籍を問わず、幅広くたくさんの人たちに熱く支持されている作品である。

ガル・ガドット,クリス・パイン

外の世界とは隔離された、アマゾン族の女性だけが暮らすパラダイス島セミッシラ。島の人々は外部からの攻撃に備え、日々鍛錬をしている。好奇心豊かな女の子ダイアナは、島のプリンセスとして母ヒッポリタ女王や仲間たちに大切に育てられている。ダイアナは戦闘訓練を禁止されていたが、一族最強の者のみが持てる剣に憧れを抱き、母の妹で剣士の叔母アンティオペ将軍に頼み込み、母に隠れて特訓を受け、強靭な戦士として成長する。ある日、島に不時着したアメリカ人パイロットのスティーブを助けたダイアナは、生まれて初めて男性を見る。そして彼の話から外界で大きな戦争が起きていると知る。一度島を出ると二度と戻れず、母や仲間たちと会えなくなることを覚悟の上で、ダイアナは決断。外界の混乱を終結し、人類に平和と愛をもたらすべく、スティーブとともに船でロンドンへ向かう。

理想主義にもとづく正義は、戦争という現実にどう向き合うのか。平和であってほしい、人々を助けたい、という素直な正義感と、それだけでは戦争は終わらないし、人々すべてを救うことなど到底できない、という現実。実社会は正義の味方が悪役を殺せば平和になる、という簡単なものではないけれど、それでも社会のためにできることが少しでもあるなら誰かがしなくては、という葛藤を、ヒーローものの構造を取り入れて描く。スーパーパワーを持つ世間知らずで純粋なプリンセスが、人々と出会い戦争の現場に赴き成長していく過程が、観る側に訴えかけてくる内容だ。劇中で後半のクライマックスに、スティーブがダイアナに話すくっきりとした一言が、まさに観客へのメッセージというわかりやすさも観ていて刺さる。アメコミならではの大がかりなアクションはもちろん、笑いあり涙ありのドラマ性がしっかりと練られている。ジェンキンス監督は今回の映画化について語る。「私はTVシリーズを観て、ワンダーウーマンは女の子が憧れるすべてを持っていると思ったの。強くて優しい、エキサイティングでスタイリッシュ、パワフルで効率よく結果を出す。そして男の子にひけをとらない激しさがある。彼女はタフでカッコよく、同時に、複雑な世の中で寛容や博愛のために立ち上がる人。そんな重要な価値観を大切にするスーパーヒーローを描く映画を作れるなんて、本当に光栄だと思っているわ」

ガル・ガドット

アマゾン族のプリンセスであり最強の戦士ワンダーウーマン役は、ガル・ガドットが健康的な美しさで溌溂と。177cmの身長と整ったスタイルを鍛え上げ、戦闘シーンの数々も華麗で迫力がある。兵役義務のある母国イスラエルの国防軍で18歳から2年の兵役をしていた経験があり、今回のトレーニングでもその経験が役立ったようだ。ガルは語る。「ワンダーウーマンは女性であることから、コミックブックのほとんどのスーパーヒーローと区別されます。でも彼女を特別にユニークな存在にしているのは、正義に対する姿勢だと私は思っているの。彼女は悪い奴らを倒して悪を一掃したいだけではなく、誰もがなれる限り最高の自分であるよう、人々を励ましたいと思っている。彼女はそれを愛と希望と優しさで実行しているのよ」
 そしてアメリカ人パイロットであり英国軍のスパイとして活動しているスティーブ・トレバー大尉役は、クリス・パインが率直な男らしさとユーモアのある、経験と場数を踏んだ大人の男として。ダイアナとスティーブの間に生まれる信頼関係やロマンティックな雰囲気を、固すぎず甘すぎず魅力的に表現している。クリスはスティーブを“戦争で疲れ切った現実主義者”と言い、ダイアナとスティーブの関係、ワンダーウーマンの存在についてこのように語っている。「ダイアナのおかげでスティーブがどう変わるのか。世の中の最悪な状態を見てきた男に彼女がもたらすのは、まだ理想主義が入り込む余地があるのではないか、ということなんだ。我々が生きている世界が荒廃し醜悪であるとしても、人々の心の一番いい部分には、互いを尊重し合う気持ちが残っているという希望がある。それを僕たちは信じるべきだし、それこそが彼女が象徴するものなんだ」
 アマゾン族の女王であるダイアナの母ヒッポリタ女王役はコニー・ニールセンが、ヒッポリタ女王の妹でダイアナの叔母アンティオペ将軍役はロビン・ライトが、スティーブの秘書エッタ・キャンディ役はルーシー・デイヴィスが、スティーブとダイアナとともに戦地へ向かうメンバーとして狙撃手のチャーリー役はユエン・ブレムナーが、多言語を操る潜入捜査員のサムイール役はサイード・タグマウイが、闇取引の仲買と輸送を請け負う酋長役はユージーン・ブレイブ・ロックが、彼らを支援するスティーブの上官パトリック・モーガン役はデイビッド・シューリスが、ドイツ軍のルーデンドルフ大佐役はダニー・ヒューストンが、マル博士こと毒ガス爆弾を開発するドクター・ポイズン役はエレナ・アナヤが、それぞれに演じている。

そもそもワンダーウーマンは1941年に、女性初のスーパーヒーローとしてコミックに登場。DCコミックスがブレーンとして招いた心理学者ウィリアム・モールトン・マーストン(「うそ発見器」を発明した人物)が、女性層に向けた新しいヒーローとして生み出し、アニメやドラマでも人気を得たという。
 そして今回は映画史上初、女性監督が製作費1億ドル以上の大作を手がけ、世界で高評価を得ていることも大きな話題に。男社会のハリウッドで女性監督が大きな成功を収めたこと、映画界での女性の道を切り拓いたという意味で、ジェンキンス監督への注目も高まっている。監督は今回の製作と、女性をヒーローとして描く本作への思いを語る。「この映画の実写化は、フェミニズムの軌跡に、大規模な業界が追いついたことを意味していると思います。かつては女性のスーパーヒーローを描くことに多くの障壁があったけれど、今は違う。ワンダーウーマンを、1人の普遍的なキャラクターとして描ける時代が来たのです」

ガル・ガドット

ワンダーウーマンはすでに続編の制作が決定し、全米公開日は2019年12月13日と発表が。ガルの主演は決定、ジェンキンス監督とは現在交渉中とのこと。ガルの演じるワンダーウーマンは、2016年の映画『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』、本作、2017年11月23日に日本公開の『ジャスティス・リーグ』、そして前述の続編と確定していて、今後の展開も楽しみだ。
 ジェンキンス監督は本作のテーマと、観客へのメッセージについてこのように語っている。「もし私たちがみんな、ダイアナと同じように世界を見ることができたら……。彼女は社会の深い闇に気づくけれど、それを超えたところにある人類の能力とすばらしさも見出すの。そして彼女には思いやりに満ちた心とスーパーパワーがある。私たちは彼女のために、豊かで奥行きがあり、誰もが共感できるような楽しいストーリーを創りたかった。これは素晴らしい冒険物語。昔からのファンも新しいファンも、大いに楽しんでもらえたら嬉しいです」

※2017年8月、
『ワンダーウーマン』は世界興行収入797,101,085ドル(約876億円/1ドル110円)を突破し、パティ・ジェンキンス監督は女性監督歴代No.1興行収入を獲得しました。

作品データ

劇場公開 2017年8月25日より丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー 3D/2D/IMAX
制作年/制作国 2017年 アメリカ映画
上映時間 2:21
配給 ワーナー・ブラザース映画
原題 WONDER WOMAN
監督 パティ・ジェンキンス
出演 ガル・ガドット
クリス・パイン
ロビン・ライト
ダニー・ヒューストン
デイビッド・シューリス
コニー・ニールセン
エレナ・アナヤ
ユエン・ブレムナー
ルーシー・デイヴィス
サイード・タグマウイ
ユージーン・ブレイブ・ロック
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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