ダンケルク

窮地の兵士40万人を撤退させた英国の実話を
クリストファー・ノーラン監督がIMAXで映画化
没入感と臨場感とともに描くサスペンス・スリラー

  • 2017/08/29
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ダンケルク© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

『ダークナイト』『インセプション』のクリストファー・ノーラン監督が初めて実話をもとに、フランスのダンケルクから英仏軍を撤退させるべく英国が発動したダイナモ作戦を、陸・海・空の兵士たちの視点で描く。出演は本作が映画デビューとなるイギリスの若手俳優フィオン・ホワイトヘッド、現在活動休止中のイギリスの人気グループ“ワン・ダイレクション”のメンバーで今回が俳優デビューとなるハリー・スタイルズ、監督や脚本家としても活躍するベテランのケネス・ブラナー、ノーラン作品の常連キリアン・マーフィー、『ブーリン家の姉妹』などのオスカー俳優マーク・ライランス、『レヴェナント:蘇えりし者』トム・ハーディほか。1940年、ダンケルクの海岸に追い詰められた英仏軍40万人は、迫りくるドイツ軍80万人から逃れて故郷へ戻ることはできるのか。当時の兵士たちと同世代である10〜20代の俳優たちを起用し、陸・海・空それぞれの戦いや兵士たちの思いを臨場感とともに描くサスペンス・スリラーである。

フィオン・ホワイトヘッド

1940年5月、第二次世界大戦下のフランス北端の町ダンケルク。40万の英仏連合軍の兵士たちは80万のドイツ軍に海岸まで追い詰められ、背後からは敵の陸軍、海中からはUボート、空からは爆撃機で容赦なく攻撃され続ける。いつ総攻撃されてもおかしくない厳しい戦況のなか、大型船で脱出しようとしても魚雷や空爆で沈没させられ、空では空軍同士の激しい戦闘が展開し、海岸には脱出を試みる兵士たちであふれている。そしてイギリスは、英仏軍の兵士たちを救出すべく“ダイナモ作戦”を発動。イングランド南部の海岸から小型艇や輸送船などの民間船までもが動員され、激戦地であるダンケルクへ救助に向かう。

イギリスでは“ダンケルク・スピリット”という言葉があるほど有名な第二次世界大戦下の逸話を、ノーラン監督がIMAXで映画化。ダンケルクの浜辺からイギリスまでわずか42kmながら、遠浅の海では英国の大型艦船は浜辺に近づけず兵士たちを救出することができずにいた。そこで撤退作戦の援護として、民間の小型船舶で構成された船団がイングランド南部の海岸からダンケルクへと向かった、それが“ダイナモ作戦”だ。第二次世界大戦の実話をもとにしながら、残虐な戦闘シーンが全編に描かれているわけではないことについて、2017年8月24日に東京で行われた来日記者会見にてノーラン監督はこのように語った。「ダンケルクは他の戦いと性質が違います。これは撤退作戦、逃げていく話なので、サスペンス・スリラーの形をとりました。従来の戦争映画は、いかに戦争が恐ろしいかをホラーとして、時に目を背けたくなるような映像で語ります。『ダンケルク』はサスペンスなので、背けるどころか釘付けになるように緊張感を持たせました。あくまでも爽やかな話であり、ジリジリと迫る敵の存在と時間がサスペンス感を担っています」

トム・ハーディ

市街戦から命からがら脱出した少年兵士トミー役はフィオン・ホワイトヘッドがひたむきに、浜辺でトミーが出会う兵士ギブソン役はアナイリン・バーナードが寡黙に、2人が防波堤で出会う若い兵士アレックス役はハリー・スタイルズが自然体で表現。「ハリーが俳優デビューした映画」として本作が世界的に注目され騒がれていることが予想を超えていて、ほかの出演者たちが少し困惑しているというニュースも。ノーラン監督はあくまでも役に合っていたからオーディションでハリーを選出しただけのことで、彼が1Dのメンバーと知ってはいたけれど、そこまで騒がれるほどとは思っていなかったとコメントしている(アメリカのウェブサイト「Entertainment Tonight」より)。
 撤退作戦を成功させようと心を砕く上級士官のウィナント大佐役とボルトン中佐役はジェイムズ・ダーシーとケネス・ブラナーが、救出作戦に加わる小型船のひとつムーンストーン号のオーナーで船長のミスター・ドーソン役はマーク・ライランスが、その息子ピーター役はトム・グリン=カーニーが、ピーターの友人ジョージ役はバリー・コーガンが、そして砲弾ショック状態で海に取り残された“謎の英国兵士”役はキリアン・マーフィーが、戦闘機スピットファイアを操るイギリス空軍のパイロットで最年少のコリンズ役はジャック・ロウデンが、コリンズの先輩パイロットであるファリア役はトム・ハーディが、それぞれに演じている。トム・ハーディは祖父が実際にダンケルクにいたそうで、祖父から話を聞いていた、というのも感慨深い。

撮影は実際にダンケルクの海岸でも行われ、デジタル効果やCGIは極力使わない、アクションもできる限りその場で撮影、というノーラン監督の方針は本作でも。監督は自身の妻であり長年の製作パートナー、そして本作のプロデューサーであるエマ・トーマスとともに、1990年代半ばに監督の小型船でドーバー海峡を実際に渡ったとのこと。その航海は約19時間もかかり、いかに困難なエリアであるかを実感したという。劇中で小型船団が海峡を渡るシーンでは、ドーバー海峡に62隻の船が結集。そこには1940年に実際にイギリスからダンケルクへ航海し、兵士たちを救出した船が何隻か含まれている。その船の名はカロニア、エルビン、エンデバー、ヒルフレイナー、メアリー・ジェーンほか、ダンケルク・リトル・シップス協会(Association of Dunkirk Little Ships)によって管理されている船だそうだ。
 ノーラン監督は始めて実話にもとづく映画を製作するにあたり、『Forgotten Voices of Dunkirk』の著者ジョシュア・レビンを迎えて時代考証をし、リサーチを入念に行った。前述の来日記者会見にて監督は語った。「史実に基づく映画は初めてだったのでリサーチを重ねて、実際にダンケルクにいらっしゃった方々の証言を入念に調べました。観客が、自分がまるで当事者であるかのように感じる、緊迫感あふれる映画を作りたかったので、徹底的に。実際にダンケルクに派兵された方にご存命の方を紹介していただき、直接話を聞くことができて、心揺さぶられるものがありました。彼らの実際の体験が、この映画に反映されています。脚本を書く上では、そう行った体験談をフィクショナルな人物に語ってもらう手法を取りました」

フィオン・ホワイトヘッド

全編をIMAXカメラと65ミリ・フィルムの組み合わせで撮影し、没入感と臨場感を実現している本作。そして陸・空・海という3つの視点を取り入れたことについて、監督は2017年8月24日に行われたトークイベントにてこのように語った。「ストーリーの主観的な視点に観客を立たせたいと思いました。兵士の気持ちになり、彼らの感覚を味わってもらう。あるいは彼らが持つ情報を知ってもらう。そこでこの構成に至りました。ただ同時に、大きな全体図で何が起きているのかを把握できるようにもしたかったのですが、そのために地図や政治家の話などは入れたくありませんでした。あくまでも人間的な視点を大事にしようと思い、陸・空・海という3つの違う視点を作ったのです」
 2017年8月23日にはジャパンプレミア、24日には前述の記者会見とトークイベントにて、『ダンケルク』について熱く発信したノーラン監督。最後に、観客に向けた監督からのメッセージをご紹介する。「このストーリーの本質はとてもユニークで、戦闘についての話ではなく撤退の物語です。越えられない壁を越える。窮地から勝利を勝ち取る。非常にヒューマンなストーリーです。全員で協力すべきことの偉大さ、個人ではなし得ないことを全員で力を合わせれば逆境を乗り越えられるというテーマは、イギリスだけでなく世界中に訴求できる、どんな文化圏でも共感してもらえる物語だと思っています」

作品データ

劇場公開 2017年9月9日より丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2017年 アメリカ映画
上映時間 1:46
配給 ワーナー・ブラザース映画
原題 Dunkirk
監督・脚本・製作 クリストファー・ノーラン
出演 フィオン・ホワイトヘッド
トム・グリン=カーニー
ジャック・ロウデン
ハリー・スタイルズ
アナイリン・バーナード
ジェイムズ・ダーシー
バリー・コーガン
ケネス・ブラナー
キリアン・マーフィー
マーク・ライランス
トム・ハーディ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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