ソダーバーグが映画界に復帰し、米国で配給も開始!
カントリー版『オーシャンズ』なんて侮れない
スリルあり笑いありの痛快なクライム・サスペンス
2013年の『サイド・エフェクト』を最後に映画界から引退し、TVに活躍の場を移したスティーヴン・ソダーバーグが映画製作にカムバック。出演は、『マジック・マイク』のチャニング・テイタム、6代目ジェームズ・ボンドのダニエル・クレイグ、『スター・ウォーズ』シリーズのアダム・ドライヴァー、エルヴィス・プレスリーの孫娘ライリー・キーオ、トム・クルーズの前妻ケイティ・ホームズ、『ミリオンダラー・ベイビー』のオスカー女優のヒラリー・スワンクほか。脚本は本作が処女作にしてデビュー作である新鋭レベッカ・ブラント。不運続きのジミーとクライドのローガン兄弟は、全米が夢中になるカーレースのイベントの最中に、その売上金すべてを盗もうと企てる。素人強盗の危うさあり、家族や仲間や地域愛のエピソードあり、スリルあり笑いありの痛快なクライム・サスペンスである。
ウェストヴァージニア州の田舎町。“不運は連鎖する”というローガン家のジンクスの通り、父は借金、母は病気に、高校時代からアメフトのスター選手だった兄ジミーは膝を故障してプロを断念、弟クライドはイラク戦争で左腕を失い帰国した。それでもジミーは離婚した元妻との幼い愛娘セイディと面会日に過ごせるだけで幸せだったが、引きずる足のせいで炭鉱の仕事をクビになり、携帯電話の料金も支払えない状態に。堅実な夫と再婚した元妻ボビーから、セイディを連れて遠くの街に引っ越すと聞き、せめて娘と定期的に会えるくらいの生活を送りたいという切迫した思いから、ジミーは強盗を計画する。バーテンダーの弟クライド、車の運転が得意な美容師の妹メリー、伝説の爆破師ジョー・バング、元覚醒剤中毒であるジョーの弟たちフィッシュとサムという、身内と知り合いによる即席の強盗団6人で準備を開始。そしてノースカロライナ州のシャーロット・モーター・スピードウェイで開催される全米最大級のストックカーレースの当日、会場の地下にある金庫を襲撃するが……。
田舎を舞台にした素人強盗団によるなんちゃって『オーシャンズ』ふうの本作。二番煎じのカントリー版と見せかけておきながら実は独自の魅力もあり、ハートウォーミングな父娘のつながりや、主要な登場人物たちすべてにとって新たな展開やそれなりに満たされるものがあるなど、あたたかく胸のすくストーリーとなっている。ソダーバーグ監督は語る。「僕は、物語がスタートした時点では彼らが犯罪者でないことも気に入っている。『オーシャンズ』の面々と違い、ジミー・ローガンたちは“仕事”をしながら学んでゆく。この物語は、僕が安心して手がけられるタイプの映画に近く、それでいて僕を興奮させるのに十分なほど今までの作品と違う点もあったんだ」
強盗を計画する兄ジミー・ローガン役はチャニングが、金なし、職なし、家族なしというどん底からの脱出をはかる労働者階級の男として。脚本家のブラントは友人であるチャニングの経歴に着想を得てジミーの人物像を作り上げていったという。「私にとってジミーは、チャン(チャニング)のストーリーの別バージョンなの。チャンは南部の小さな町の出身で、アメフトの奨学金を得てフロリダでプレイすることになっていたけれど、シーズン開始前に膝を壊してしまい、それで彼は男性ストリッパーになった。『もしチャンがストリッパーにならず故郷に帰っていたら…』と考えたのが『ローガン・ラッキー』なのよ」
ジミーの弟で右腕1本のバーテンダーであるクライド役は、身長189cmのアダムが兄を慕う哀愁のある男として、ドライブ好きのスピード狂で美容師の妹メリー役は、キーオがあっけらかんとタフに、爆破師のジョーの弟で元覚醒剤中毒のフィッシュ役とサム役はジャック・クエイドとブライアン・グリーソンが、ジミーの元妻ボビー役はケイティが、ジミーとボビーの娘セイディ役はかわいらしい子役のファラ・マッケンジーがそれぞれに演じている。
そして爆破スペシャリストのジョー・バング役としてダニエルがガッツリと活躍し、後半からの少ない登場ながらFBI捜査官サラ・グレイソン役としてヒラリーが出演するなど、シリアスなドラマの主役クラスの役者をいつもとは違う感覚で堪能できるという贅沢も。
また本人役としてミュージシャンのリアン・ライムス、NASCARのレーシングドライバーであるジェフ・ゴードンが出演している。
本作はアメリカ最大のモータースポーツ統括団体NASCARの全面的支援を得たことから、NASCARのレーシングドライバーたちのカメオ出演も多数。配達員役にライアン・ブランリー、レース会場の警備員役にブラッド・ケセロウスキーとジョーイ・ロガーノ、ウェストヴァージニア州警官役にカール・エドワーズ、ハイウェイパトロールの警官役にカイル・ブッシュ、そしてリムジンの運転手役としてカイル・ラーソンが出演している。
そして劇中のカーレースのシーンは、本物の会場にて撮影。物語の舞台となるノースカロライナ州のシャーロット・モーター・スピードウェイにて実際にレースや観客のシーンを撮影したのはもちろん、アトランタ・モーター・スピードウェイでレースのシークエンスを撮影した時には、ソダーバーグがポルシェ・カイエンの助手席に座り、時速177キロでサーキットを走ったというエピソードも。
本作で4年ぶりに映画界に復帰した理由について、ソダーバーグ監督はこのように語っている。「技術的な理由とクリエイティブ上の理由が合わさった結果だ。技術的には、今のデジタル環境ならメジャースタジオの手を借りなくても、小さな会社が映画を作って広く公開できること。この脚本が僕のところにきた時、ちょうど今後の長編映画の配給のありかたについて話し合っていたところだったんだ」
そしてクリエイティブ上の理由は、監督が脚本をとても気に入ったからとのこと。ソダーバーグ夫妻の友人である新人ブラントから「どの監督に持ち込めばいいかアドバイスしてほしい」と頼まれて本作の脚本を読んだ時のことを、ソダーバーグ監督は語る。「(脚本を読んでから)2週間くらい経った時に認めたよ。この作品を他人に監督させたくないと思っていることをね。これは、『オーシャンズ』シリーズの従兄弟のような作品だ。でもそれと同時に、主人公たちにはお金も最新技術もなく、経済的にかなりの苦境にある、という点で『オーシャンズ』の逆をいく作品でもあった」
またソダーバーグによる独立系映画製作のニューモデルである本作は、メジャースタジオとは一切関わりなく資金を調達。本国アメリカ内の配給は、復帰に際してソダーバーグが設立した新会社フィンガープリント・リリーシングが、映画会社ブリーカー・ストリート(『はじまりへの旅』『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』)の協力を得て展開。2017年8月18日のアメリカでの公開から高い評価を得ている。企画から公開までクリエイティブのすべてを自身がコントロールする新たな挑戦について、メジャースタジオの干渉に妥協することなく大規模公開するビジネスモデルの試運転でもある、とソダーバーグは語る。「これはちょっとした実験なんだ。この配給セオリーを試すために、映画スターたちが出演する商業映画が必要だった。僕がすべてに関して絶対的なクリエイティブ・コントロールをもつことができる形での大規模公開を正当化するためにね」
ウェストヴァージニア州への郷愁を歌うジョン・デンバーの名曲「Take Me Home, Country Roads(邦題:故郷に帰りたい、カントリー・ロード)」が印象的に用いられている本作。後半のあのシーンはとてもオーソドックスながら、染みるものがある。脚本家ブラントの存在についてはいろいろな憶測もあるようだが、こうしたストレートで素直な表現は、ウェストヴァージニア州ローガン郡にて代々地元の炭鉱で働いてきた家庭で育ったというブラントの気質を反映しているのだろうし、今後の彼女の活躍も大いに楽しみだ。
ソダーバーグはこの作品に込めた思いと物語の魅力について語る。「純粋に面白いエンターテインメントとして、消耗品でない映画として、観客が楽しんでくれたら、と思っているよ。ハリウッド映画には、見終わった途端に頭から消え去るものも多いけれど、『ローガン・ラッキー』は簡単に消えたりしない、現実世界に根差した作品だ。この映画を見て過ごす2時間よりもずっと長い間心に響く――それだけのものが浸透している映画だと思うよ」
劇場公開 | 2017年11月18日よりTOHOシネマズ 日劇ほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2017年 アメリカ映画 |
上映時間 | 1:59 |
配給 | ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
原題 | Logan Lucky |
監督 | スティーヴン・ソダーバーグ |
脚本 | レベッカ・ブラント |
出演 | チャニング・テイタム アダム・ドライヴァー セス・マクファーレン ライリー・キーオ ケイティ・ホームズ キャサリン・ウォーターストン ドワイト・ヨーカム セバスチャン・スタン ブライアン・グリーソン ジャック・クエイド ヒラリー・スワンク ダニエル・クレイグ |
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