gifted/ギフテッド

数学の特別な才能をもつ少女と、家族や周囲の思いとは
迷い対立しながらも、一番大事なことは何かを模索する
マーク・ウェブ監督が描く、心温まるヒューマン・ドラマ

  • 2017/10/30
  • イベント
  • シネマ
gifted/ギフテッド©2017 Twentieth Century Fox

長編映画デビュー作の『(500)日のサマー』、2012年の『アメイジング・スパイダーマン』などで高い評価を得たマーク・ウェブ監督が、ひさしぶりに大作からはなれて製作したアットホームなヒューマン・ドラマ。出演は『キャプテン・アメリカ』シリーズのクリス・エヴァンス、2016年の映画『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』の子役マッケナ・ グレイス、2014年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のリンゼイ・ダンカン、今年11月に日本公開の映画『彼女が目覚めるその日まで』のジェニー・スレイト、『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜』のオスカー女優オクタヴィア・スペンサーほか。叔父フランクと暮らす7歳のメアリーは学校に通い始め、担任の先生から数学の天才的な能力を指摘されるが……。特別な才能をもつ子ども、家族や周囲の人間たち、それぞれの思いとは。迷い悩み対立しながらも、何が一番大事なのかを模索してゆく。海辺の街を舞台に印象的な風景とともに描く、心温まるヒューマン・ドラマである。

フロリダの海辺の街。ボート修理の仕事を請け負うフランクは、他界した姉の娘である7歳の姪メアリーと、かしこい片目の猫フレッドと穏やかに暮らしている。メアリーが学校に通いだすと、担任の先生ボニーから数学の天才的な能力を指摘され、校長からも“ギフテッド教育”の有名校への転校を勧められるが、フランクは拒否。ずっと疎遠だったフランクの母でメアリーの祖母、イブリンにメアリーの能力が伝わると、優れた数学者だったメアリーの母ダイアンのように育てるべく、専門的な教育をする手続きを強引に話を進めようとする。が、“普通の暮らし”を求めていたダイアンの遺志を守り、フランクが“特別扱い”を拒むなか、メアリーの親権をもつことをイブリンが主張しフランクを訴え、祖母と叔父での裁判が始まる。

クリス・エヴァンス,マッケナ・グレイス

特別な才能をもつ少女と彼女を大切に思う大人たち、それぞれの心情を生き生きと描き、心温まる人間ドラマである本作。どう生きていきたいかは人それぞれで、よりよい形を真剣に模索してゆくさまを時にはコミカルに、時にはシビアに映している。ウェブ監督は脚本をとても気に入り共感したそうで、映画化についてこのように語っている。「シンプルで温かみがあって、エネルギーを感じさせる内容だった。長い年月、大作に取り組んでいたから、私が映画を好きな理由の根本に返ったような作品、つまり登場人物の心情を深く描いたものを求めていた。そんな時に、この脚本に出会ったんだ」

メアリーを育てるフランク役は、クリスがメアリーを大事に育てる叔父として。他界した姉への思いや母親との確執を繊細に、シングルとして気ままに過ごしたいと思いながらも、メアリーをのびのびと育てようと心を砕くさまをよく表現している。メアリーの世話を焼く隣人ロバータ役は、オクタヴィアが心優しい女性として、メアリーの祖母イブリン役はリンゼイ・ダンカンが厳格に、メアリーの担任の先生ボニー役は、ジェニーが熱心で実直な教師でありフランクと惹かれ合う女性として、それぞれに演じている。また製作の数学アドバイザーとして参加したウイスコンシン大学教授のジョーダン・エレンバーグ博士が、劇中で数学の教授として出演も。
 数学の天才的な能力をもつ少女メアリー役は、マッケナがくっきりと利発かつとてもかわいらしく。ウェブ監督は「ぴったりのメアリーを見つけない限り、本作を作ることはできない」という考えから、100人以上の子どもたちのなかからマッケナをオーディションで選出。やや子どもばなれした美しい目鼻立ちに、『レオン』のナタリー・ポートマンのような大人びた雰囲気と凛とした目力、『アイ・アム・サム』のダコタ・ファニングとエル・ファニング姉妹のような天真爛漫なかわいらしさがあり、新たな子役スターとしてさらなる活躍が楽しみだ。現在11歳のマッケナは本作のテーマである家族、子どもの育つ環境についてこのように語っている。「完璧な家族とは、お母さんとお父さん、大きな家にたくさんのお金があることだと人は言うわ。でも私は、愛と思いやりのある人と暮らすことだと思うの」

マッケナ・グレイス,クリス・エヴァンス

そもそもはベテランの脚本家トム・フリンが、売ることをまったく意識せずに書いたのが、本作の脚本とのこと。物語に登場する片目の猫のモデルは、実際に彼が妻と飼っている片目の猫フレッドのことだという。映画の撮影は物語の舞台であるフロリダのセント・ピーターズバーグに似ている、ジョージア州サヴァンナのタイビー島などで行われた。映画『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のように、どこか郷愁を誘う海辺の景色が人間ドラマに効果的に用いられているところも見どころのひとつだろう。なかでも夕日を背景にフランクとメアリーがぽつぽつと会話しながら、メアリーがフランクによじ登ったりぶら下がったりと楽しそうに過ごすシーンは、個人的に胸にくるものがあった。

メアリーを普通の子どもとしてかわいがるフランクとロバータも、弟フランクにあることを託すメアリーの母ダイアンも、高度な教育こそが子どものためと信じるフランクとダイアンの母でメアリーの祖母イブリンも、それぞれの思いがあって。ウェブ監督は本作のテーマについて、このように語っている。「これは人生の豊かさを感じてもらう映画です。人々を刺激するだけの作品を作るのは簡単なこと。本作の意図は温かい気持ちになり、観客に人と人のつながりを祝福してもらうことです。本物と思える作品になったと思うよ。かなり稀なことだけれどね」

作品データ

gifted/ギフテッド
劇場公開 2017年11月23日よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2017年 アメリカ映画
上映時間 1:41
配給 20世紀フォックス映画
原題 GIFTED
監督 マーク・ウェブ
脚本 トム・フリン
出演 クリス・エヴァンス
マッケナ・グレイス
リンゼイ・ダンカン
ジェニー・スレイト
オクタヴィア・スペンサー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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