全世界の売上800万部を超えたベストセラーを映画化
10歳の少年の挑戦と成長、彼の影響でポジティブに
変化してゆく家族や友人をユーモアとともに丁寧に描く
遺伝子の疾患でほかの人とは異なる顔で生まれてきた少年と、彼を取り巻く子どもたちの目線から見えてくるものとは。出演は映画『ルーム』で高く評価された人気子役のジェイコブ・トレンブレイ、『エリン・ブロコビッチ』のジュリア・ロバーツ、『グランド・ブダペスト・ホテル』のオーウェン・ウィルソン、『バトルフロント』のイザベラ・ヴィドヴィッチほか。原作はもとグラフィックデザイナーのアメリカの作家R・J・パラシオが、初めて書いたデビュー小説『Wonder』、監督・脚本は自ら執筆した小説を自身で映画化した『ウォールフラワー』や、実写版『美女と野獣』の脚本家として知られるスティーヴン・チョボスキーが手がける。これまで自宅学習をしてきたトリーチャー・コリンズ症候群のオギーは、ママの提案で学校に通い始めるが、偏見により孤立してしまい……。仲良しのパパとママと姉、学校の同級生や先生たち、それぞれの立場や視点から、10歳のオギー少年との関りによって変化してゆく心情を描く。きれいごとだけではなく、オギー本人の苦しみや前向きな心、オギーと関わる人たちの大変さ、それを大きく上回る楽しさや幸せをユーモアとともに丁寧に描き出す、あたたかなヒューマン・ドラマである。
オーガスト・プルマンことオギーは、遺伝子疾患による頭蓋顔面異常の症状をもっている10歳の男の子。これまで自宅学習をしてきた彼は、ママの提案で小学校5年生から学校に通い始めるが、ほかの人と異なる顔であることからいじめられ孤立する。しかし賢さやユーモアといったオギー本来の魅力により、友だちが少しずつ増えていく。息子を熱心にサポートするママ、ユーモアをもって家族のつながりを支えるパパ、控えめで心優しい姉ヴィアに見守られ、オギーは学校生活を充実させてゆく。そしてオギーの成長に触れ、家族や友人たちも変化してゆき……。
フィクションでありながら、ノンフィクションのようなリアルさや力強さを感じる物語。内容は“難病もの”ではあるものの、病と本人と周囲の人々という構造で感動的な音楽や演出とともにシリアスに描くといったストーリーではなく、本人や家族の葛藤や苦悩、周囲の人たちの戸惑いや反発、少しずつなじみ受け入れられてゆく様子について、主人公の空想を交えながら、ユーモアとともに明るく実直に描く演出が魅力的だ。原作者のパラシオ氏は映画化にあたり、チョボスキー監督への信頼についてこのように語っている。「スティーヴンは、私が“泣き笑い”と呼ぶ要となる感情を、ちゃんと脚本に取り入れてくれたの。大人から子どもまで、私が想像した通りの登場人物がスクリーンのなかにいるわ」
人と違う顔で生まれてきたオギー役は、ジェイコブ・トレンブレイが自然体で好演。「なぜ僕は醜いの?」と煩悶しながらも自分らしく成長していく姿を、ひたむきかつさわやかに。ジェイコブは役作りとして、両親とともにオギーと同じ症状を持つ人々をサポートする組織「チルドレンズ・クラニオフェイシャル・アソシエーション(CCA)」の家族研修会に一家で参加したり、そうした子どもたちと会って彼らの見解を聞いたりしたとも。そして美術スタッフにより敬意をもって作りこまれた人口装具を顔全体に取り付け、撮影に臨んだそうだ。
オギーのサポートに熱心に取り組むママ、イザベル役はジュリア・ロバーツがタフに愛情深く、ユーモアと理解とともに家族のつながりを支える父ネート役はオーウェン・ウィルソンが深みのある明るさで、オギーの姉のヴィア役はイザベラ・ヴィドヴィッチが忍耐強く思いやりのある女の子として。ヴィアを特別にかわいがる祖母役はソニア・ブラガが深い理解のあるシニアとして、オギーが通う学校のトゥシュ校長役はマンディ・パティンキンが、オギーの担任のブラウン先生役はダヴィード・ディグスが、ヴィアの幼なじみのミランダ役はダニエル・ローズ・ラッセルが、ヴィアと親しくなる少年ジャスティン役はナジ・ジーターが、それぞれに演じている。オギーが通う学校の子どもたちは、オーディションで選出。オギーの最初の友だちとなるジャック役はノア・ジュプが、オギーをいじめる裕福な家庭のジュリアン役はブライス・ガイザーが演じている。
そして後半の校長のスピーチのシーンには、原作者のパラシオと彼女の家族もエキストラとして参加。またオギーの空想シーンに登場する『スター・ウォーズ』の人気キャラクター、チューバッカは、ルーカスフィルムとディズニーからこの物語への理解と許可を得て、登場させることができたそうだ。
原作である2013年のパラシオ氏の小説『Wonder』は、全世界の売り上げが800万部を超えたベストセラー。パラシオ氏が実際にアイスクリーム店の前で特徴のある子どもと出会ったことをきっかけに、患者の家族から体験談を聞いて、オリジナルの物語として執筆。パラシオは原作のテーマについて語る。「他人に優しくすることがいかに大切か、それがわかる例をたくさん書いたわ。“最高の自分でいるために最善を尽くす”ことは、誰にでもできることよ」
2018年5月31日に東京で行われた来日記者会見にて、チョボスキー監督は監督を引き受けた理由と、原作の魅力についてこのように語った。「原作を読んだときに、ここ25年くらいの間でもっとも優れた作品だと感銘を受けました。世界中の人たちに伝えたくなるようなこの物語を、ぜひ監督したいと思ったのです」
そして映画の製作にあたり、この小説の読者でありオギーと同じ症状を実際にもつ12歳の少年ナサニエル・ニューマンが、56回目の手術の後にコンサルタントとして参加。パラシオ氏はナサニエル少年を称えて、このように語っている。「ナサニエルは、私がイメージしているオギーと風貌も話し方も似ているの。彼には素晴らしい両親と、兄弟が1人いて、何度もの手術に耐え、山積みされた問題に対処してきた。そしてオギーのように、言葉では言い尽くせないほど優しくて面白くて、勇気ある少年なの」
「ヴィアの家族は宇宙みたいね。サンを中心に家族という惑星が回っている(太陽のSUNと息子のSONをかけている)」
「あの子のことはたくさんの天使が守っているから。あなたのことは私が一番に愛しているわ」
この映画の特徴のひとつは、会話やセリフが印象的なこと。もうひとつは、オギー本人の目線に加え、彼の周囲の子どもたちそれぞれの目線がしっかりと描かれているところだ。特に弟にかかりきりの両親のそばで寂しい思いをしている姉ヴィアに、祖母が何度も繰り返しやさしく語りかける言葉には、とても響くものが。オギーの同級生のジャックやジュリアン、ヴィアの幼なじみでプルマン一家に特別な思いをもっているミランダなど、みんなそれぞれに事情や抱えているものがあり、観客が彼らのオギーへの思いや関わり方を知ることで新しい視点が加わってゆき、視界がどんどん開けてゆくというユニークな感覚がある。監督は前述の記者会見でこの物語の大切なテーマについて、このように伝えた。「人は見た目を変えられないけれど、見方を変えることができるのです」
チョボスキー監督は来日記者会見にて、観客へのメッセージをこのように伝えた。「ご覧になる皆さんにはエモーショナルな旅をしていただきたいですし、それが安い涙ではいけない。リスペクトを勝ち得なければいけない。それでこそ感じられる親切、共感力、思いやり、愛、そういったものをしっかり作らなければと思いました」
観終わると、ポジティブですがすがしい気分になる本作。ファミリーにもカップルにも幅広く、多くの人に薦めたくなる作品だ。オギー少年のようにいいことがたくさん起きることは現実にはそうないと、誰もが知っている。それでも希望や善意は信じられるものだと映画で描くことは、やっぱりいいことだな、と素直に思うから。
劇場公開 | 2018年6月15日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2017年 アメリカ |
上映時間 | 1:53 |
配給 | キノフィルムズ 木下グループ |
原題 | Wonder |
原作 | R・J・パラシオ |
監督・脚本 | スティーヴン・チョボスキー |
出演 | ジュリア・ロバーツ ジェイコブ・トレンブレイ オーウェン・ウィルソン イザベラ・ヴィドヴィッチ ダヴィード・ディグス マンディ・パティンキン ダニエル・ローズ・ラッセル ナジ・ジーター |
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