検察側の罪人

木村拓哉×二宮和也 初共演、原田眞人監督作品
事件捜査で被疑者に対峙する検事らの葛藤、
捜査と冤罪、正義と罪について投げかけるミステリー

  • 2018/08/20
  • イベント
  • シネマ
検察側の罪人©2018 TOHO/JStorm

どこまでが正義で、どこからが罪なのか。『犯人に告ぐ』の作家・雫井脩介が2013年に発表した『検察側の罪人』を映画化。出演は、初共演が話題の木村拓哉と二宮和也、映画『ユリゴコロ』の吉高由里子、『アウトレイジ 最終章』の松重豊、『関ヶ原』の平岳大、そして『モリのいる場所』の山﨑努ほか。監督・脚本は映画『日本のいちばん長い日』の原田眞人が手がける。東京で老夫婦の刺殺事件が発生。事件を担当する東京地検刑事部のエリート検事・最上は、1人の容疑者の名前に気づき……。原田監督の脚本と演出、充実の俳優陣により観る側を引きつける、重厚な社会派ミステリーである。

吉高由里子

都内で老夫婦刺殺事件が発生。東京地検刑事部のエリート検事・最上と、刑事部に配属されたばかりの若手検事・沖野が事件を担当することに。事件の捜査を進めるなか、最上は複数いる容疑者のうちの1人の男・松倉に狙いを定め、執拗に追い詰めていく。松倉は、過去に時効を迎えたある未解決殺人事件の最重要容疑者だった。沖野は容疑者に自白させるべく取り調べに力を入れるが、松倉は犯行を頑として否認。沖野は最上の捜査方針に疑問を持ち始める。

木村拓哉と二宮和也の初共演による話題作、という万人にわかりやすいキャッチフレーズとはいい意味でそぐわない、罪と正義について、容易には呑み込めないような内容をガッツリと描く本作。時効廃止以前の殺人、捜査機関による冤罪といった司法制度の問題を投げかけつつ、そうした社会派の作品があまり得意ではない観客にとっても、役者がそれぞれのキャラクターにハマッていること、そして原田監督の剛柔自在でいてメッセージがクリアな演出により、幅広い層の観客をどんどん引き込むだろう仕上がりとなっている。

松重豊

東京地検刑事部のエリート検事・最上役は木村拓哉が、自分の信じる道を突き進む人物として、入庁5年目で刑事部に着任したてのの沖野啓一郎役は二宮和也が、入庁時の研修で教官だった最上を尊敬し事件の捜査に真摯に取り組む若手検事として、それぞれの持ち味を生かして表現している。入庁2年目の検察事務官で沖野の担当に着任した橘 沙穂役は吉高由里子が、ある事情をもつ若手事務官として(今夏のドラマ『正義のセ』では新人検事役、本作では検察事務官役というのも面白い)、最上とつながりのある闇社会のブローカー諏訪部利成役は松重 豊がうさん臭くもそれなりの情をもつ男として、諏訪部の指示で動く運び屋役は芦名 星が、最上の学生時代からの親友である衆議院議員・丹野和樹役は平 岳大が、老夫婦刺殺事件の被疑者(容疑者)のひとり弓岡嗣郎役は大倉孝二が、同事件のもうひとりの被疑者・松倉重生役は酒向 芳が、国選弁護人として松倉の弁護を担当する弁護士・小田島誠司役は八嶋智人が、小田島を後援し松倉の弁護団を結成する人権派の大物弁護士・白川雄馬役は山﨑 努が、老夫婦刺殺事件を担当する警視庁捜査一課の刑事・青戸公成役は谷田 歩が、最上が常連として通う割烹の女将・桜子役はキムラ緑子が、最上の血のつながらない娘・奈々子役は山崎紘菜が、それぞれに演じている。個人的に、原田監督の女性の描き方は観ていて心地よく感じる場合が多いと思っていたら、“強い女性像”がお好みとのこと。男性のドラマである本作でも、それぞれの立場の女性たちが彼女たちなりの芯をもち、物語のなかで生きている。

注目のシーンは、捜査方針を巡り最上と沖野がサシで対峙する後半のシーンだろう。それぞれの立場と信念のもとでせめぎ合う2人をしっかりと見せてゆく。また特に沖野が被疑者の松倉を取り調べ詰問するシーンでは、二宮の冷徹な気概は迫りくるものが。そんななかにも、検察事務官・橘 沙穂の特異な事情やロマンスがあったり、小田島弁護士と元気で口の悪い妻がいる事務所はキッチュで遊び心ある空間であったりと、シリアスな物語の合間にユーモアや甘みのある部分があるのも観ていてホッとする。最上と諏訪部のつながりはダーティな面が増長するような特性がありながらも、弱さや暗部も含めて人の依頼を請け負うことや(それが弱みとなり泥沼から抜けられなくなる)、実際に現代社会の裏を思わせる動きが興味深く。個人的には、ラストシーンを締めるタイミングの潔さが好みだった。あの部分が間延びしてメランコリーになったりすると、後味がまったく変わってしまう。サッと引くことで、切れ味と深みが瞬間的に濃く染みる、という感覚が響いた。

二宮和也,木村拓哉

事件の真相究明とともに、捜査と冤罪、検察や刑事ら現場の人間たちの葛藤、そこにするりと入り込む闇社会の人間たちといったドラマを重厚に描く本作。ミステリーの場合は特に、物語の内容やキャラクターの事情を詳しく明かすのはややはばかられるので、特異な状況にある、吉高演じる検察事務官・橘 沙穂というキャラクターの面白さについては観ていただくとして。最後に、2018年8月6日に東京で行われた完成披露試写会にて、原田監督、木村拓哉、二宮和也が観客に伝えたメッセージをご紹介する。
 原田監督 「まず、一番強調しておきたいのは、俳優たちの演技合戦がトーナメントのようで、見どころです。最終的に木村さん、二宮さんの対決に“誰が勝ち残っていくのか?”、演者たちのぶつかり合いは、僕も現場で見ていて、楽しかったです。すごく刺激をもらいました。観てもらって、今、権力の座にいて、不正を犯し続ける人間がのさばっているこの日本で、正義というものを考えるなら、『テクニカルな正義なのか?』それとも心の中からくる『エモーショナルな正義なのか?』そういうところを考えていただけたら最高です。そんなことを論議しながら作ってきました。心ゆくまで味わってください!」
 二宮和也 「非常にズシっとくる作品になっていると思いますので、そこもコミコミで楽しんでいただけたらと思います」
 木村拓哉 「考えさせられる時間を過ごしていただくと思いますが、最後まで……本当に最後の最後まで受けとめてほしいなと思います!」

作品データ

検察側の罪人
劇場公開 2018年8月24日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国東宝系にてロードショー
制作年/制作国 2018年 日本
上映時間 2:03
配給 東宝
監督/脚本 原田眞人
原作 雫井脩介
出演 木村拓哉
二宮和也
吉高由里子
平岳大
大倉孝二
八嶋智人
音尾琢真
大場泰正
谷田歩
酒向芳
矢島健一
キムラ緑子
芦名星
山崎紘菜
松重豊
山﨑努
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
XInstagram

記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。