オンネリとアンネリのふゆ

女の子のかわいい2人暮らしを描くシリーズ第2弾
クリスマスシーズンにこびと族の一家が訪れて……
社会的なテーマも含むほのぼのとしたフィンランド映画

  • 2018/11/07
  • イベント
  • シネマ
オンネリとアンネリのふゆ© Zodiak Finland Oy 2015. All rights reserved .

フィンランドの作家マリヤッタ・クレンニエミの児童文学を映画化した第2弾、小さな女の子オンネリとアンネリのクリスマスシーズンに起きたふしぎな出来事を描く。スタッフとキャストは2018年6月に日本で公開された第1作『オンネリとアンネリのおうち』と同じメンバーで、ヘルシンキで活躍しているサーラ・カンテル監督をはじめ、主演のアーヴァ・メリカントとリリャ・レフトほか。かわいいおうちで暮らす2人のもとに、プティッチャネンというこびと族の一家が訪れて……。北欧の家具やインテリア、食器や小物、カラフルなファッションといった美術や衣装もかわいらしく、意外と社会的なテーマもさりげなく含む、キュートなフィンランド映画である。

アーヴァ・メリカント,リリャ・レフト,ほか

クリスマスの近づくある日、バラの木夫人から買った家に2人で暮らすオンネリとアンネリのもとに、プティッチャネンというこびと族の一家がやってきた。森の家を失った彼らは、自分たちをつかまえようとする悪い人間たちから逃げていて、新しい住み家を求めてバラの木夫人を訪ねてきたという。そこでオンネリとアンネリは、留守にしている夫人の居場所がわかるまで、ドールハウスに一家をかくまうことに。しかし、経営不振のガソリンスタンドの奥さんがこびと一家の存在に気づいて……。

本国フィンランドではすでにシリーズ3作品がのべ100万人を動員し、国民の5人に1人が観たという大ヒットを記録している話題のシリーズ。小さなかわいい主演女優2人にカラフルでセンスのいい美術や衣裳、おとぎ話のようなイメージで撮影されているヴィジュアルは、観客をほんわかとしたハッピーな世界へ招き入れてくれる。物語としては、9人兄弟のまん中に生まれ、家族のなかでいつもひとりぼっちだったオンネリ、両親が離婚して新しい恋人と暮らすパパと、大学の先生のママの家を行き来していたアンネリ、森の開拓でこびと一家が住まいを失う、金儲けのためにマイノリティを利用しようとする人たち、弱い立場の者が逆襲し、良い魔女の助力で報われるなど、異文化への理解や人権、年齢や立場に関わらず助け合い支え合っていくことの大切さなど社会的な視点とおとぎ話をうまくミックスした内容で、子どもから大人まで幅広い層が楽しめる作品となっている。
 第1作に寄せてカンテル監督はこのシリーズのテーマについて、このように語った。「『オンネリとアンネリのおうち』は、友情と日常生活の中に存在する魔法への詩です。しかし、このユーモラスな物語の根底には、親たちが子どものためにじゅうぶんな時間をもつことができない、という深刻なテーマがあります。ふたりの女の子は両親にとって、ほとんど目に見えない存在なのです。幸いなことに、自分たちの家を持ったふたりは、その近所に、ふたりと一緒に時間を過ごそうとする、ふたりの生活に関わりをもとうとする大人たちに出会います。監督として、私が最もこの映画の中で重要視したのは、温かくユーモラスな人生観です」

アーヴァ・メリカント,リリャ・レフト

黒髪の女の子オンネリ(アーヴァ・メリカント)と、金髪の女の子アンネリ(リリャ・レフト)は、いつも色違いやおそろいの服を着て、お料理をしたりお掃除をしたり楽しく暮らしている。ラベンダーがかったグレーのコートに白いブーツ、フューシャピンクのワンピースに同色のポンポン付きニット帽、チュールのスカートやおませなバスローブと、2人のハイセンスなファッションも注目だ。魔法が使えるバラの木夫人(エイヤ・アフヴォ)は人々に幸せを届け、バラの木夫人の親戚で魔法が使える陽気な姉妹ノッポティーナ(エリナ・クニヒティラ)&プクティーナ(キティ・コッコネン)はオンネリとアンネリとお茶を飲み、お金がなくとものんきなアルスカ(サムエル・ヴァウラモ)は結婚して妻アデレと一緒にガソリンスタジオを経営、気難しい未亡人だったウメ・ボーシュ(ヨハンナ・アフ・シュルテン)は幼なじみのお巡りさんリキネン(ヤッコ・サアリルアマ)と結婚して幸せに過ごしている。

不思議なアイテムとしては、ノッポティーナ&プクティーナ姉妹のものが面白い。飼っているニワトリの金の卵を燃料に動く愛車、姉妹がオンネリとアンネリにふるまう色の変わるお茶(バタフライピーかな?)、とある効果のある薬やユニークな植物たち、カラフルなお菓子など、ユニークなものたちは見ていて楽しい。こうした“オンネリとアンネリ”シリーズの魅力的な世界観について、カンテル監督が2018年6月に来日した際にこのように語った。「映画の世界観は、私自身が子どものころ大好きだった原作のイメージがベースになっています。映画を監督するにあたって、私が幼い頃に読んだ時感じた原作の空気感を映し出したいと思いました。この色彩は私の記憶にありました。さらに撮影監督と私たちは、木漏れ日のような光も作り出そうと努めました」

アーヴァ・メリカント,リリャ・レフト,ほか

本作の原作はフィンランドの作家クレンニエミ・マリヤッタによるオンネリとアンネリのシリーズ2作目で、1968年に出版された児童文学『オンネリとアンネリのふゆ』。第1作は1966年に出版された『オンネリとアンネリのおうち』で、実写映画化作品は第1作が2014年、第2作である本作が2015年、そして第3作『Onneli, Anneli ja salaperäinen muukalainen』は2017年に製作された。カンテル監督は前述の来日の際、シリーズの製作について、このようにコメントしている。「映画はフィンランドで公開された途端にとても好評で、その年一番の成績となりました。私たちはヒットを本当に喜んで、さらにシリーズ続編の製作も可能になりました」。そして“オンネリとアンネリ”シリーズの最終となる4作目の撮影について、こんなほほえましいエピソードも。「(第1作の撮影時は7歳だった)2人の少女は今や14歳です。この夏、私はシリーズ4本目最終巻の撮影に入るのですが、新作の主役には9歳の新しい少女たちを選びました。でも、前のシーズンの2人も新しい2人に会って、師匠として指導してくれています」

本作は北欧ならではのものやあたたかな雰囲気がたっぷりとあるのも見どころのひとつ。ノッポティーナ&プクティーナ姉妹がオンネリとアンネリにふるまうグロッギという温かい飲み物、雪の結晶の形のヴィープリン・リンケリ(クリスマス・プレッツェル)、カウントダウンしながらめくっていくカレンダーなどいろいろなアイテムが登場している。フィンランドの冬は太陽の出ている時間が短く夜が長くなり、クリスマスは人々にとって楽しみで大事なイベントとのこと。クリスマスシーズンは“聖アンデレの日(11月30日)”に最も近い日曜日の待降節(アドヴェント)から12月24日のクリスマスイブまで約4週間あるとも(プレステキストのフィンランド大使館勤務の木村正裕氏のコメントより引用)。日本でもディスプレイやイルミネーションがきらきらとしてくるこの季節。“オンネリとアンネリ”シリーズの第3作、第4作の日本公開も楽しみにしつつ、まずは本作で冬〜クリスマスシーズンのほのぼのとした気分を先どりで味わうのはいかがだろう。

作品データ

オンネリとアンネリのふゆ
劇場公開 2018年11月24日よりYEBISU GARDEN CINEMA、ほかにて全国順次ロードショー
制作年/制作国 2015年 フィンランド
上映時間 1:21
配給 アット エンタテインメント
原題 Onnelin ja Annelin talvi
監督・脚本 サーラ・カンテル
脚本 サミ・ケスキ=ヴァハラ
原作 マリヤッタ・クレンニエミ
出演 アーヴァ・メリカント
リリャ・レフト
エイヤ・アフヴォ
ヤッコ・サアリルアマ
ヨハンナ・アフ・シュルテン
エリナ・クニヒティラ
キティ・コッコネン
サムエル・ヴァウラモ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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