eHills Club 試写会日記

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コレット

K・ナイトレイ主演、仏文学史のアイコンの半生を描く
ベル・エポックのパリで作家となり、恋愛遍歴を重ね、
自分らしい生き方と表現を模索し自立してゆく姿を映す

コレット© 2017 Colette Film Holdings Ltd / The British Film Institute. All rights reserved.

創作に恋愛に、あらゆる表現に生涯情熱を注ぎ続けたフランスの作家コレットの半生を描く。出演は『プライドと偏見』のキーラ・ナイトレイ、『300〈スリーハンドレッド〉』のドミニク・ウェスト、舞台を中心に活躍するアイルランド出身のデニース・ゴフほか。監督・脚本は『アリスのままで』のウォッシュ・ウェストモアランドが手がける。20歳になる年に14歳年上の人気作家ウィリーと結婚したコレットは、夫のゴーストライターをするようになり……。1890年代の活気あふれる“ベル・エポック”のパリで才能が開花し、浮気と浪費を続ける夫と複雑な関係にありながらも恋愛遍歴を重ね、表現者として模索し突き進む姿を映す。男性優位の時代にジェンダーにとらわれず、当時のパリでも抜きんでた存在となってゆく、ドラマティックな生き様を伝える作品である。

キーラ・ナイトレイ,ほか

フランスの田舎町サン・ソヴールで生まれ育ったコレットは、豊かな自然のなか心優しい両親と平穏に暮らしていた。そして1893年に父の友人だった14歳年上の人気作家ウィリーと結婚。“ベル・エポック”のパリで夫と暮らし始めたコレットは、芸術家の集うサロンへ夫婦で通うように。最初は抵抗のあった享楽的な世界にだんだんとなじむなか、ウィリーが昔の愛人と続いていて、浪費による借金がかさんでいると知る。ウィリーは自分名義の作品をほかの作家たちに執筆させるなか、コレットの文才に気づき、自身のゴーストライターとして彼女に自伝的な小説『クロディーヌ』を書かせる。『クロディーヌ』はベストセラーとなりシリーズ化、ヒロインのファッションが流行するなど社会現象を巻き起こす大ブームに。ウィリーは本の出版のみならず舞台化し、ブランドを立ち上げて商品を展開。コレットとウィリーがベストセラー作家とその妻というセレブ夫妻として注目されるなか、自身が作者と認められないコレットの葛藤と、ウィリーの度重なる浮気により、夫婦関係は冷え切ってゆく。

田舎町で暮らす少女からパリのセレブ妻になり、作家として表現者として才能を開花させてゆく、19〜34歳のコレットを描く本作。リスクを恐れずに気持ちの向くまま突き進む強靭さ、多くの著名人たちから認められ多彩な交流で知られる女流作家となる前、20代の頃から自身の表現を追求し続けていた姿に圧倒される。ウェストモアランド監督はコレットの魅力について語る。「彼女は困難を生き抜いた人だ。前に進み続け、状況を打破し、彼女の内側から湧き出るアーティストとしての声に忠実であり続けた。まさに僕が目指している生き方だ。だからこの映画作りを通して、僕はコレットから非常に多くのことを学んだ」

キーラ・ナイトレイ,ドミニク・ウェスト,ほか

コレット役はキーラが、かわいらしくコケティッシュな少女から、自らの道を模索し個性的な表現者となってゆくさまを好演。早い結婚と複雑な夫婦生活のなかでも完全に支配され自身を見失うということなく、かえって生来の個性や才が研ぎ澄まされ、いろいろな意味でタフになってゆく経緯が伝わってくる。フランスの有名な人物をイギリス人のキーラが演じることについて、プロデューサーのエリザベス・カールセンは語る。「英語の映画でフランスのアイコンを演じるのは、ものすごいチャレンジだと思う。しかし、キーラはフランスで人気もあり、ヨーロッパ人としての意識がとても高い」
 コレットの夫で作家ウィリーことアンリ・ゴーチエ・ヴィラール役はドミニクが、いかにもなモテおやじとして。女にだらしなく浪費好き、ゴーストライターの多用にも悪気なく、儲かるなら妻でもなんでも利用する。男性としても夫としても残念な性質ながら、ドミニクの愛嬌や持ち味もあってどこか憎めない、コレットの才能を最初に見出して育てた人物としてうまく表現している。貴族の血を引く男装の麗人ミッシーことマティルド・ド・モルニー役はデニース・ゴフが、コレットの母親シド役はフィオナ・ショウが、コレットとウィリーの両方と愛人関係をもつジョージー・ラオール=デュヴァル役はエレノア・トムリンソンが、それぞれに演じている。

コレットことシドニー=ガブリエル・コレットは、19世紀末の1873年に生まれ、1900年にウィリーの名義ながら処女作『学校のクロディーヌ』を執筆。クロディーヌシリーズ3作を執筆した後、1910年に『さすらいの女』を出版しウィリーと離婚する。3度の結婚、同性を含む数々の恋愛、ジャン・コクトーやジャン=ポール・サルトル、ココ・シャネルら多くの著名人から敬愛され、1926年にモーリス・ラヴェルが、コレットが台本を手がけたオペラ「The Child and the Spells」を上演(その2年後に彼は『ボレロ』を発表)、1951年に自身の小説『ジジ』をブロードウェイで舞台化する際にオードリー・ヘプバーンを自ら抜擢した、といったエピソードで有名だ。しかしそうした華やかな面のみならず、1914年に第一次世界大戦が開戦すると「ル・マタン」紙の記者としてコレットは前線からレポートする初の女性の1 人となり、後にその戦争報道を1冊にまとめて『Les Heures longues』(英題:The Long Hours)として出版したという逸話もあり、気骨のある人物だったとわかる。主な作品は1920年の『シェリ』、1922年の『青い麦』、1945年の『ジジ』など。1917 年には「クロディーヌ」シリーズが映画化、『ジジ』を映画化した1958年の『恋の手ほどき』は、1959年の第31回アカデミー賞にて作品賞を含む9つの賞を受賞。1954年に81歳でコレットが他界した時は、フランス人女性で初めて国葬が執り行われた。

デニース・ゴフ,キーラ・ナイトレイ

この映画の企画は、もともとはウェストモアランド監督が、公私ともにパートナーであり本作の脚本家としてクレジットされているリチャード・グラッツァーから約20年前に薦められて伝記本などを読んだことから始まったとのこと。グラッツァーは2011年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)と診断され、ウェストモアランド監督とグラッツァーは2013年に結婚。彼らは2001年の『ハードコア・デイズ』や2014年の『アリスのままで』など共同で脚本・監督を手がけ、グラッツァーは闘病生活のなか映画を作り続け、2015年3月に63歳で他界した。本作の企画を進めているなかで最愛のパートナーを亡くしたウェストモアランド監督は、本作を初めて単独で監督。その時の気持ちと本作への取り組みについて、ウェストモアランド監督はこのように語った。「とにかくつらかった。目の前が真っ暗になり、深い悲しみに沈んでいたが、映画に集中することが僕の支えとなった」
 脚本は、2001年の夏に2人でアメリカからフランスへ赴いて初校を執筆。その際に場所を貸してくれた友人のおばがコレットの孫娘アンヌ・ド・ジュヴネルと親しい友人だったことから、2人はド・ジュヴネル男爵夫人とパリで面会。脚本に登場するコレットが執筆した書物すべてを含む遺品の使用許可を得た、という不思議な幸運があったそうだ。そして脚本は16年かけて第20稿まで手直しされ、最終稿を仕上げるのに『イーダ』のレベッカ・レンキェヴィチが参加。ウェストモアランド監督は「ストーリーに必要だった女性の視点をもたらしてくれた」とコメントしている。
 コレットとウィリーの関係について、監督は「いろいろな意味で現代のセレブ・カップルのような存在」とコメント。プロデューサーのカールセンは語る。「お互いに相手から得るものが多かった。18歳だったコレットは、力のある年上の男性に導かれ、創作の世界に入る。そして才能が開花し、自分らしさと独立のために戦い、若い女性作家として成功していく。本当にドラマティックなストーリーだ」
 またコレットとウィリーの関係を、ウェストモアランド監督は自身とグラッツァーとの関係に重ねたこともたびたびあったとも。「脚本で誰かのことを書くたびに、自分たちとの共通点を見つける。僕らは共同で脚本を執筆していたので、コレットとウィリーの関係性に通じるところがあり興味深かった。もちろん言い争うこともあったよ。どっちがコレットでどっちがウィリーかってね!」

小説の執筆やパントマイムなどさまざまな創作や表現に取り組み、ジェンダーにとらわれず恋愛をしたコレット。本作ではキャスティングで、ガストン・ド・カイヤヴェ役にトランスジェンダーの男性俳優ジェイク・グラフを、小説家のラシルド役にトランスジェンダーの女優レベッカ・ルートを、そして実際は白人だったピエール・ヴェベール役にアジア系イギリス人俳優のレイ・パンサキを、白人男性だったポール・エオン役に黒人俳優のジョニー・K・パーマーを起用。ウェストモアランド監督はコレットの生き方や主張を配役に取り入れたと語る。「こういうキャスティングは歴史ドラマの作品では異例であり、現代ドラマでさえめったにない。慣習を破り、保守的な役割を壊し、世界の扉を開いたコレットの時代。キャスティングにはその精神が反映されている」
 そしてこの映画のテーマ性、コレットの半生が投げかけることについて、監督はこのように語っている。「本作には、人を奮い立たせるメッセージが描き込まれている。これは現在の“#MeToo”ムーブメントにかなり通じるものがあると感じるよ。1人の女性が抑圧された状況を克服し、自分自身の声を上げていく――類似点は明らかだね。コレットの物語には、気持ちを奮い立たせる力があるんだ」

2019年4月15日更新

作品データ

公開 2019年5月17日よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2018年 イギリス・アメリカ
上映時間 1:51
配給 東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
原題 Colette
監督・脚本 ウォッシュ・ウェストモアランド
脚本・原案 リチャード・グラッツァー
脚本 レベッカ・レンキェヴィチ
オリジナル音楽 トーマス・アデス
出演 キーラ・ナイトレイ
ドミニク・ウェスト
デニース・ゴフ
フィオナ・ショウ
エレノア・トムリンソン
ロバート・ピュー
レイ・パンサキ
ライター:あつた美希 CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを担当。2015年よりフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を、2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。インタビュー記事の執筆も。