eHills Club 試写会日記

毎週、映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ! 傑作でもB級でも映画ってやっぱり素敵!!

居眠り磐音

佐伯泰英の人気シリーズを松坂桃李主演で初の映画化
温厚ながら剣が立つ好青年・坂崎磐音と周囲の人々が
つらく悲しい出来事を経てひたむきに生きる姿を描く

居眠り磐音©2019映画「居眠り磐音」製作委員会

累計発行部数2000万部を超え、〈平成で最も売れている時代小説シリーズ〉と呼ばれる小説家・佐伯泰英の人気作品を映画化。出演は、本作が時代劇初主演となる松坂桃李、『ザ・ファブル』の木村文乃、『散り椿』の芳根京子、柄本佑、杉野遥亮、佐々木蔵之介、陣内孝則、谷原章介、中村梅雀、柄本明ほか豪華な顔合わせで。監督は『超高速!参勤交代』シリーズ、『空飛ぶタイヤ』の本木克英、脚本はNHK木曜時代劇「ちかえもん」で第34回向田邦子賞を受賞、映画脚本は初となる藤本有紀が手がける。九州の豊後関前藩の武士、坂崎磐音は故郷で起きたある事件によって幼馴染2人を失い、許嫁を残して脱藩。江戸で浪人となり……。日中はうなぎ屋、夜は両替屋・今津屋の用心棒として働く、穏やかな人柄ながら剣が立つ磐音と、彼をとりまく人々との逸話を描く。事件を解決してゆく展開で引き付けつつ、人々のひたむきな生き様をしみじみと伝える良作である。

木村文乃,松坂桃李

坂崎磐音と幼馴染の小林琴平、河出慎之輔の3人は、江戸勤番を終えて3年ぶりに故郷の九州・豊後関前藩へと戻る。3人は同じ道場に通う修行仲間であり、琴平の妹・舞は慎之輔のもとに嫁いでいたため2人は義兄弟であり、磐音も琴平と舞の妹・奈緒との祝言を控え、3人は幼馴染以上の深い絆で結ばれていた。しかしある事件が起きたことにより、磐音は幼馴染2人を失い、奈緒を残して脱藩。浪人となって江戸の長屋で暮らし始める。長屋の大家・金兵衛の紹介もあり、昼はうなぎ屋、夜は両替屋・今津屋の用心棒として働くなか、穏やかで優しく誰に対しても礼節を重んじ、剣が立つ磐音は、今津屋の女中をつとめる金兵衛の娘・おこんをはじめ、次第に周囲から信頼されてゆく。そんな折、幕府が流通させた新貨幣をめぐる陰謀に巻き込まれ……。

老若男女に慕われる優しくて強い坂崎磐音と、彼に関わる人たちとの物語。最初にとても悲しい事件が起きるものの、つらく悲しい出来事に対して、登場人物たちが苦悩しながらもそれぞれに心を決めて健気に生きていく、という人情や機微がよく伝わってくるところが魅力だ。坂崎磐音の物語は、2007年〜2017年にかけてテレビで時代劇ドラマシリーズ『陽炎の辻〜居眠り磐音 江戸双紙〜』として山本耕史主演でドラマ化、2008年に『陽炎の辻 居眠り磐音』として漫画化も。2019年4月4日に東京・有楽町で開催されたプレミアイベントにて、松坂桃李は坂崎磐音の人物像と魅力について、このように語った。「自分の中で武士とは“男たるもの”というイメージでしたが、磐音は穏やかな面と、何かを守らなければいけない時の真の強さ持った、二面性があるところが魅力で、今までの武士像と違いました」

芳根京子,松坂桃李

剣の達人であるものの、その剣術が縁側で日向ぼっこをしながら居眠りをする老猫のようであることから“居眠り剣法”と呼ばれている温厚な青年、坂崎磐音役は松坂桃李が好演。一見頼りなげなほのぼのとした優しい人柄ながら、剣術はキレッキレでいざという時は頼りになる、なんてどこまで理想的な男性像か、というところも、松坂自身の雰囲気にとてもよくハマッている。磐音が暮らす長屋の大家の娘で、両替屋「今津屋」の女中おこん役は、木村文乃が情に厚いしっかり者として、磐音の許婚の小林奈緒役は、芳根京子が一途な思いを胸に秘める意志の強い女性として表現。本作の充実のキャストと2人の女優について、本木監督はこのように語っている。「本格的な時代劇に相応しく、しかも新鮮なキャストが揃ったと思います。この映画の軸が“悲恋の物語”でもあるため、女優の選択は特に重要でした。木村文乃さんは以前から時代劇が似合うだろうと思っていました。予想は的中し、磐音への想いを胸に秘めつつ、快活に振る舞う江戸市井の女性・おこんの心情を見事に演じて下さいました。いっぽう、磐音と離れる運命を背負いながら一途に彼を想う奈緒役の芳根京子さんは、何度テイクを重ねても同じ涙を流せる、驚異的な集中力と繊細さをお持ちでした。その演技に魅入られてしまい、カットをかけ忘れることもしばしばありました」
 奈緒の兄で磐音の幼馴染みの小林琴平役は柄本 佑が、奈緒の姉で琴平のもうひとりの妹・舞を妻にもつ磐音の幼馴染みの河出慎之輔役は杉野遥亮が、磐音の父・坂崎正睦役は石丸謙二郎が、磐音の母・照埜役は財前直見が、江戸幕府の老中・田沼意次役は西村まさ彦が、両替屋「今津屋」の主人・吉右衛門役は谷原章介が、磐音と琴平と慎之輔が通う佐々木道場の師範・佐々木玲圓役は佐々木蔵之介が、おこんの父で長屋の大家の金兵衛役は中村梅雀が、両替屋「阿波屋」の主人・有楽斎役は柄本 明が、それぞれに演じている。また「今津屋」の贔屓客として、遊郭「三浦屋」の主人・庄右衛門役は陣内孝則が、同遊郭の花魁・高尾太夫役は中村ゆりが、魚河岸「千束屋」の主人・甚兵衛役は橋本じゅんが、芝居小屋「中村座」の座元・邦右衛門役は早乙女太一が演じ、短い出番ながら濃い面子でおいしいところをさらっていくのも楽しい。さらに磐音の働く鰻屋「宮戸川」の親方・鉄五郎役のベンガルや磐音と対立する刺客・天童赤児役の波岡一喜をはじめ、実力派が顔をそろえている。関前藩の家老・宍戸文六役はピエール瀧の代役として奥田瑛二が演じ、撮り直して差し替えとなっている。

撮影は、京都の大覚寺、妙心寺の衡梅院、神光院、滋賀の彦根城、大分の大原邸、磯矢邸などにて。劇中でスタッフもキャストも特に気合を入れて臨んだシーンは、丸3日かけて撮影した磐音と琴平の対決シーンとのこと。原作者の佐伯泰英氏は“殺陣の意味”として、このシーンと映画化についてこのようにコメントを寄せている。「自分の書いた文章が映像に変わる、不思議な感じだ。とくに戦いの場景、それも幼なじみの友との決死の戦いの映像を見たとき、あの文章を一字一句、覚悟を持って認めただろうか、と己に質した。それほど映画『居眠り磐音』の、坂崎磐音と小林琴平の戦いは苛酷でリアルであった。この戦いがあったからこそ小説『居眠り磐音』も五十一巻の長大な物語になったのか。松坂桃李君の殺陣を見ながら感慨に耽った」

杉野遥亮,松坂桃李,柄本佑

佐伯泰英氏は1942年、北九州市生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒。時代小説の累計発行部数が6500万部を超えるベストセラー作家だ。映画化は今回が初であり、テレビドラマ化は『居眠り磐音 江戸双紙』『密命』『鎌倉河岸捕物控』など。デビュー作『闘牛』をはじめ、以前は滞在経験を活かしてスペインをテーマにした作品を発表。1999年に時代小説に転向してからは『密命』シリーズを皮切りに、すべて文庫書下ろしにて20年間で約260冊を出版。ほぼ1か月に1冊出版、というハイペースで作品を発表して高い評価を受け、〈文庫書き下ろし時代小説〉という新たなジャンルを確立したとも。2018年に菊池寛賞を受賞。主な著書は、『居眠り磐音』『酔いどれ小籐次』『密命』『吉原裏同心』など多数。20年前に作家活動を続けていくことが厳しい状態にあった時、思い切って時代小説家に転向したことで一躍人気作家となり、次々と作品を出版して長年ベストセラー作家として不動の地位を維持し続けている。不屈の精神と確かな実力で読者に熱く支持されている、という作家としての経緯も、どこか胸に響くものを個人的に感じた。

51巻の人気シリーズである小説『居眠り磐音』シリーズ、初の映画化である本作。邦画ならではの本格時代劇はひとつのジャンルとしてこれからも継続していってほしいと個人的に心から思うので、魅力的な原作とスタッフとキャストによるこうした良作は、映画でもシリーズ化を期待している。最後に、映画化発表の際の本木克英監督と松坂桃李のコメントをご紹介する。
 本木監督「あたかも娯楽時代劇の傑作に観入るかのような佐伯泰英原作の読み心地を、映画でも現出したいと思いました。松坂桃李さんという新鮮な才能を得て、本格派の時代劇がよみがえりました」
 松坂桃李「僕が演じた坂崎磐音は穏やかで静かな空気を纏いつつ心の奥底に青い炎を燃やしている、そんな男です。年寄り猫のような磐音、彼の中で時間がゆっくり流れているような。クランクイン前に殺陣や所作に加えて、鰻捌きの練習をしてきましたが、非常に難しく心が折れそうになりました。本木監督はじめ、アクションチーム、京都のスタッフさん、共演者の皆様に支えていただき、何とか最後まで演じきることができました。幅広い世代の方に楽しんで頂ける作品になっていると思いますのでよろしくお願いいたします」

2019年5月10日更新

作品データ

公開 2019年5月17日より丸の内ピカデリーほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2019年 日本
上映時間 2:01
配給 松竹
監督 本木克英
脚本 藤本有紀
原作 佐伯泰英
出演 松坂桃李
木村文乃
芳根京子
柄本佑
杉野遥亮
佐々木蔵之介
奥田瑛二
陣内孝則
石丸謙二郎
財前直見
西村まさ彦
谷原章介
中村梅雀
柄本明
ライター:あつた美希 CSホロス株式会社代表取締役。フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを担当。2015年よりフレグランスジャーナル社『アロマトピア』でコラム“シネマ・アロマ”を、2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。インタビュー記事の執筆も。