アド・アストラ

B・ピット製作・主演、T・L・ジョーンズ共演
ミッション中に消息を絶った父を捜す宇宙飛行士の
SFアドベンチャーにして、男の心の旅を描くドラマ

  • 2019/09/18
  • イベント
  • シネマ
アド・アストラ© 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

ブラッド・ピットとトミー・リー・ジョーンズの初共演によるシリアスなSF大作。共演は、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのリヴ・タイラー、『ハンガー・ゲーム』シリーズのドナルド・サザーランド、『ラビング 愛という名前のふたり』のルース・ネッガほか。監督・脚本は『リトル・オデッサ』『エヴァの告白』のジェームズ・グレイ、共同脚本はドラマ『FRINGE/フリンジ』のイーサン・グロス、製作はブラッド・ピットが代表を務める製作会社PLAN B が手がける。宇宙飛行士ロイ・マクブライドはある日、太陽系の彼方で行方不明となった父が生きていると告げられ……。グレイ監督が、「アーサー・C・クラーク(『2001年宇宙の旅』の作者)は、“宇宙にいるのが我々だけか、そうでないか、どちらにしても恐ろしい”と言っている」と語り、その考えに研究への執念や父と息子のストーリーなどを取り入れたというオリジナルの物語。人々の宇宙旅行が夢ではなく日常となっている世界で、ひとりの男がある出来事を機に、自身と深く向き合う姿を映す。スペース・アドベンチャー大作であり、哲学的な示唆を含む心の旅を描くドラマである。

アド・アストラ

近い未来。人類は地球外知的生命体との出会いや豊かな資源を求めて宇宙へ旅立ち、月や火星に滞在や移住をしている。ある時、巨大な“サージ電流”が地球全体を襲い、世界各地で火災や飛行機の墜落事故が発生。国際宇宙アンテナの製造チームを率いて作業を行っていた宇宙飛行士のロイ・マクブライド少佐も巻き込まれ、命を落としかける。回復したロイは、アメリカ宇宙軍の上官から呼び出され、極秘情報として、43 億km離れた太陽系の彼方で行方不明となった父クリフォードが生きていると告げられる。クリフォードは初の太陽系有人探査計画、通称“リマ計画”の司令官として、クルーを率いて宇宙へ出発し16年後に消息を絶った。だが地球を襲った問題のサージは、クリフォードが海王星周辺で行っている実験のせいである可能性があるという。“クリフォードを探し出せ”という指令がロイに下され、月と火星を経由し、海王星へと向かうべく地球を出発するが……。

「映画をできる限り信じられるものにし、科学的に正確にするために、リサーチを大量に行った」とグレイ監督が語り、科学と事実にもとづいて設定や物語、衣装や美術などを練り上げたという本作。監督は語る。「多くの素晴らしいSF映画が作られてきたけれど、感動を呼ぶものは何本ある? 人類は、本当は宇宙に適していないかもしれないという事実を探求し、これまでのスペース・アクションとは正反対の作品を作りたいと思った。魅力的なエイリアンや地球外知的生命体に出会う物語ではなく、もっとリアルな未来を描いた作品だ」
 脚本家のイーサン・グロスは、「本作で描かれている未来は、唯一無二のものではなくひとつの仮説だ。必ずしもこうなるとは限らないし、本作は予言的な映画でもない」とコメントしつつ、この物語に含まれる思想について、このように語っている。「登場人物が変身や成長を遂げる旅を描くという考え方だ。ホメロスの『オデュッセイア』が吹き込まれた『2001年宇宙の旅』や、ジョーゼフ・キャンベルの理論“Monomyth, The Hero’s Journey.”に、明らかに則っている『地獄の黙示録』のようにね」
 また2019年9月13日に東京で行われた本作のジャパンプレミアにて、ブラッドはキャリア初となる宇宙飛行士役について、このように語った。「SF はずっとやってみたかったけれど、なかなかユニークな作品と巡り合えなかった。(本作で)SFというジャンルに貢献できたことを誇りに思っているよ。この映画はほかのSF ものとは違う、ユニークなものになっているんだ」
 そしてさまざま要素を含む本作のテーマについて、同イベントでブラッドはこのように語った。「テーマは本当にいくつもあるんだ。親子の関係を理解すること、自分自身を理解すること。アドベンチャー作品でもあるけれど、本当は(主人公が)自分自身を探す物語だと思うよ」

ドナルド・サザーランド,ブラッド・ピット,ほか

優秀な宇宙飛行士ロイ役はブラッドが、宇宙や孤独と向き合い内省し、葛藤しながらも前進しようと模索する心情を真摯に表現。ブラッドは当初にグレイ監督とさまざまに話し、ロイというキャラクターが伝えるものを見出したという。「人と人のつながりとは何かについて話し合った。他人と関係をもつことが、必ずしも得意ではない人物にスポットライトを当てようと考えたんだ。タワーの上や宇宙などで危険な目にあった時には非常に有能だが、人と親しくなるためには努力が必要な人物だ。ジェームズとは、傷つきやすさとは何か、反対に強さとは何か、その強い力はどこから生まれるのかについて話し合った。そして、我々の力は、実は傷つきやすいところから生まれるという結論に達したんだ」
 そしてこの物語に込めた思いについてブラッドは語る。「本当の自信とは、人が自分の弱点や欠点、不安を認め、それを隠したり守ったりしないで、オープンにすることから生まれるのだと思う。それが人生に平安をもたらし、力はそこから生まれるんだ」
 また2019年9月12日に東京で行われた来日記者会見にて、本作で主演と製作を務めたことについて、ブラッドはこのように語った。「プロデューサーも演技も両方やることは責任が増えること。共同で取り組むスポーツみたいなものだ。毎日が挑戦の連続で失敗や間違いもあったが、とてもエキサイティングだった。この映画では昼間は俳優、夜はプロデューサーをするのが僕のスタイルだった」
 ロイの父クリフォード役はトミー・リー・ジョーンズが謎の多い存在として、生まれ育った火星の施設の主要スタッフであるヘレン役はルース・ネッガが、ロイのもと恋人イヴ役はリヴ・タイラーが、ロイの上司で父クリフォードの友人、引退した宇宙飛行士であるブルーイット大佐役はドナルド・サザーランドが、それぞれに演じている。

監督は本作の製作にあたり、宇宙の専門家や関係者の協力を得て徹底してリサーチをしたとのこと。製作には、もと宇宙飛行士のギャレット・リーズマン(2度のスペース・シャトルのミッションで、国際宇宙ステーションに滞在)、航空宇宙エンジニアのロバート・ヨーウェル(1989年にNASAのエンジニアとなり30年間スペース・プログラムに携わるベテラン)が、アドバイザーとして参加。またアメリカの航空機・宇宙船の開発製造会社であるロッキード・マーティン社にもリサーチし、監督はNASAやジェット推進研究所(JPL)スペースX社(アメリカのロケット・宇宙開発・打ち上げ企業)などから宇宙飛行士や専門家を招いて夕食会を開いたとも。参加者との対話から「大いに学んだ」という監督は、その時のことについてこのように語っている。「彼らがこれまでの経過と、今後のことに関して考えていることについて、目を見張るような洞察やアイデアを教えてもらうことができた」
 また本作の映像は、舞台のほとんどが宇宙でありながら、グリーン・スクリーンやCGを多用せず、ロケ地の撮影がメインであることが特徴。劇中の火星の地下のシーンは、ダウンタウン・ロサンゼルスの使われていない列車の駅にある巨大なトンネルにて、月旅行の出発ステーションは、オレンジ郡にあるロサンゼルス・タイムズの旧印刷所にて、また月面を特殊な専用車で移動するシーンは、カリフォルニア南部にあるモハーヴェ砂漠のデュモン・デューンズにて撮影が行われた。“できる限り本物にこだわるアプローチ”による劇中の設定ついて、グレイ監督は語る。「月を、とても高度に開発された一連の入植地として考えた。それから火星は、本作では最後の有人開拓地に近いもので、現在の南極大陸にある科学基地の画像を参考にした」
 そしてブラッドは2019年9月12日に東京で行われた来日記者会見にて、本作の映像についてこのように語った。「なるべくCG に頼らずに撮りたいと思い、実際の撮影と最低限のCG を組み合わせて撮影した。そのおかげで、体感的で臨場感と真実味のある映像になったんだ」

ブラッド・ピット

2019年8月29日(現地時間)にイタリアで行われた第76 回ベネチア国際映画祭の記者会見にて、ブラッドが「これまで自分が手がけてきた作品のなかで最もチャレンジングな作品」と語った本作。グレイ監督はSF作品としての本作の魅力を語る。「いまだかつて観たことのないリアリティのあるスペース・アドベンチャー作品を創ることが私のミッションだ。本作(で描いているの)は『ブレード・ランナー』『2001 年宇宙の旅』のような、人類の次の大きな一歩を可能にしようと動いている世界だ。壮大なコンセプトと圧倒的なビジュアル、そしてチャレンジが待っているよ」
 そして前述の来日記者会見にて、本作の人間ドラマとしての見どころと、自身の今後の活動について、ブラッドはこのように語った。「この映画は自分を探す旅。深遠な宇宙が人間の心を表しているような気がするんだ。ロイが押し殺してきた葛藤は、自分と向き合う物語を描くうえでピッタリだと思ったよ。ひとりの男の繊細な物語を演じることは難しかったけれど、満足いくものになった。(俳優業をセーブするというニュースもあったが)僕は今まで通り、プロデュースも俳優業も、自分が心惹かれるものには挑戦していくつもりだ」

作品データ

アド・アストラ
公開 2019年9月20日よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー
制作年/制作国 2019年 アメリカ
上映時間 2:20
配給 20世紀フォックス映画
原題 『Ad Astra』
監督・脚本 ジェームズ・グレイ
脚本 イーサン・グロス
製作・出演 ブラッド・ピット
出演 トミー・リー・ジョーンズ
ルース・ネッガ
リヴ・タイラー
ドナルド・サザーランド
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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