館蔵コレクションの中から明治期の作品に焦点を当て、洋画、屏風、工芸作品など幅広いジャンルで近代化へと邁進した時代の美と技を展観する企画展です。

三菱創業者である岩崎彌太郎の弟で、第2代社長の岩崎彌之助と、その息子で第4代社長の岩崎小彌太が蒐集した古典籍・美術品を収蔵する同館には、古典籍20万冊と東洋古美術品約6,500件がコレクションされています。中でも、近代の作品は彼らと同時代ということもあり、幅広い分野から多様な作品が集められました。

本展では、コレクションから厳選された明治の美術品が登場。近代日本画を代表する大家、橋本雅邦の代表作「龍虎図屏風」は、1895（明治28）年に京都で開催された第4回内国勧業博覧会に出品された作品。同博覧会の出品作である、鈴木松年「群仙図屏風」とともに紹介されます。東京美術学校（現・東京藝術大学）で教鞭をとった黒田清輝が描き、論争に発展した“ヌード”の先駆的作品「裸体夫人像」も展示。この絵は、ジョサイア・コンドル設計の岩崎家高輪本邸のビリヤード・ルームに飾られていました。また、“近代日本画の祖”とも評される菊池容斎が中国の史実に基づいて描いた名画「呂后斬威夫人図」（7月16日〜8月12日展示）も、「阿房宮図」や「馮昭儀当逸熊図」（8月14日〜9月2日展示）などとともに並びます。
 工芸も注目作品が目白押し。無線七宝を考案した濤川惣助（なみかわそうすけ）、京都の七宝家 並河靖之（なみかわやすゆき）、金工家 鈴木長吉といった帝室技芸員の作品も登場します。明治を代表する彫金家である海野勝珉が、興福寺に伝わる鎌倉時代の彫刻「天燈鬼、龍燈鬼立像」に基づいて小型に制作した青銅の置物「燈台鬼（天燈鬼・鉄鉢鬼、龍燈鬼）」、高輪本邸（現・開東閣）の応接室に掛けられていた菅原直之助の作品も必見。写真のようにリアルな刺繍はまさに超絶技巧の世界です。また、伊藤若冲「動植綵絵（どうしょくさいえ）」の｢池辺群虫図｣を原画とする綴織（つづれおり）作品も登場。1904（明治37）年、米国セントルイス万国博覧会当時に製作された模写画や織下絵と共に近年の復元品が特別公開されます。屏風、油彩画、刺繍、金工、七宝、漆芸、陶磁器など、明治時代に生まれた名品が一堂に会する貴重な機会です。

1. 黒田清輝 「裸体婦人像」　明治34 年（1901）　静嘉堂文庫美術館蔵　【全期間展示】
2. 【特別出品】「池辺群虫図　綴織額」（原画：伊藤若冲「動植綵絵」より「池辺群虫図」） 平成22年（2010）
   日本伝承染織振興会所蔵 【全期間展示】
3. 河鍋暁斎 「地獄極楽めぐり図」（盛り場）（１帖40図）　明治2〜5年（1869〜72）
   静嘉堂文庫美術館蔵　【全期間展示】（※場面展示替あり）
4. 濤川惣助（渡邊省亭 下絵）　「七宝四季花卉図花瓶」一対　明治時代（19〜20世紀）
   静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】
5. 海野勝珉　「天燈(燈台)鬼 ・鉄鉢鬼・龍燈鬼 」　明治33〜34年（1900〜01）
   静嘉堂文庫美術館蔵　【全期間展示】
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