笑いとユーモアに満ちた「禅画」で仏の教えをひろめた江戸後期の禅僧、仙厓（1750〜1837）。数えで88歳と長寿を生き、還暦後に隠棲してから25年の間に2000点以上もの画賛や墨跡を生み出しました。老いを前向きに捉え、活発に動いた晩年の生活や画賛制作の秘密に迫る企画展です。

1789（寛政元）年、博多にある聖福寺の住持となり、法要、伽藍の修復、弟子の育成に活躍。還暦を過ぎて境内の一角にあった虚白院（きょはくいん）に隠棲し、禅画や書を制作するようになります。旅行や参詣、祭りや催し物の見物に積極的に出かけ、古器などを蒐集し、茶をたしなみ、周囲の人々との交流を大事にしながら、四半世紀もの長い間、隠居生活を謳歌しました。友人、知人たちには、僧侶の曇栄（どんえい）、豪潮（ごうちょう）、深慧（じんえ）に加え、秋月藩御用絵師の斎藤秋圃（さいとうしゅうほ）、書家の二川相近（ふたがわすけちか）など、当時の福岡を代表する文化人たちが多数おり、彼らとの共作で「涅槃図」が生み出されました。

本展は5章立てで展開。「第1章　長寿は天からの授かりもの−「老人六歌仙画賛」を中心に」では、長い人生の折々に感じた想いをまとめた作品を紹介。ユーモアを交えて描かれた前向きな人生観が読み取れます。「第2章　力を尽くせば、必ず報われる−仙厓画傑作選」では、禅の理解を深めるための禅画や、庶民の生活の充実を願った画賛などが集結。「第3章　楽しき思い出よ、いつまでも−「書画巻」をめぐって」では、旅先での情景や着想をまとめた下絵や思い浮かんだ漢詩・俳句・和歌を、のちに画賛に仕上げるといった、作品の制作過程に迫ります。スケッチ集「書画巻」と完成作である画賛類の比較も楽しめます。「第4章　悠々自適な隠居暮らし−旅行三昧・趣味三昧の日々」では、長い老後を趣味に生きた仙厓の多彩な楽しみをふり返ります。「第5章　愉快なり、友との日々−仙厓流ユーモアを育んだ面々」では、さまざまな人との交流の実態が見える作品群を展示。共作の「涅槃図」など、奇抜なユーモアにあふれた作品が多く、必見です。
 晩年の充実した生き方や、画賛制作の過程、仙厓流のユーモアなどが、仙厓遺愛の工芸品などとともに楽しめるほか、江戸時代の博多の風俗や九州の景色なども見ることができます。

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