江戸の凸凹 ―高低差を歩く

変化に富んだ江戸の地形を、浮世絵を通して散歩しよう

昨今、高低差や坂道、スリバチ地形など、ちょっとユニークな視点での街歩きがテレビや書籍で取り上げられ、静かな人気となっている。また、江戸と現在の東京を比べた時、町並みは大きく変われど、地形の特徴は当時からほぼ変わらないという事実にも、ロマンを感じる人は多いのではないだろうか。本展は、愛宕山や駿河台などの山や台地、神田川など河川の周囲に広がる谷、築地や深川などの水辺に広がる低地、江戸見坂や九段坂などの坂といった、浮世絵に描かれた江戸の凸凹(地形の高低差)に焦点を当て紹介する。

東京は西側に武蔵野台地が、東側に低地が広がり、神田川、目黒川などの川や、大昔の河川の跡に沿っていくつもの谷が広がる地形が特徴であり、高低差を感じながら歩くと楽しい都市といえる。江戸時代の歌川広重をはじめとする浮世絵師たちもその面白さに着目し、しばしば地形の高低差を意識した構図で江戸の町を描いた。
 浮世絵の風景画では、山や台地など、高所からの眺めが絵の題材となることが多い。愛宕山の愛宕神社や湯島天神のように、小高い山の上や、台地の端の眺めの良い場所には神社仏閣も多く、それらは名所として親しまれた。他にも、人工の山である富士塚や、五百羅漢寺の三匝堂さざいどうなど、人の手によって作られた眺めの良い名所も合わせ、“江戸の凸”を表現した浮世絵を紹介する。
 一方、江戸の町の東側には、江戸湾や隅田川などに面して海抜の低い地域が広がり、西側の台地との際や、河川の周囲には谷状の地形が多く見られた。また、当時盛んに行われた海岸の埋め立てでは日比谷や築地が誕生するなど、こちらでも自然と人の手が加わった低地の風景“江戸の凹”の浮世絵を鑑賞できる。
 そして、地形に高低差があれば、その間を結ぶために必ず存在するのが坂。現在でも江戸時代の坂の名前がそのまま残っている場所が多くあり、浮世絵にも市中の有名な坂は題材として多く取り上げられた。さらに、浮世絵師たちが想像力を駆使して描いた、空から見下ろすような構図の俯瞰図からも、江戸の町の変化に富んだ地形を実感することができる。

地形の高低差に着目したユニークな切り口の本展が、新たな浮世絵の楽しみ方を提示してくれそうだ。

歌川広重「東都名所 御殿山花見品川全図」
昇亭北寿「東都芝愛宕山 遠望品川海」
歌川広重「東都名所 王子瀧の川」
左:歌川広重「名所江戸百景 昌平橋聖堂神田川」、右:現在の昌平橋
開催概要
展覧会名 江戸の凸凹 ―高低差を歩く
会期 2019年6月1日(土) 〜 6月26日(水)
休館日 月曜日
時間 10:30〜17:30 ※入館は閉館時間の30分前まで
会場 太田記念美術館
渋谷区神宮前1-10-10
入館料 一般 700円、高大生 500円、中学生以下 無料
公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
問合せ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
2019年5月更新