あなたはこの男を知っているか――?
エッシャーが命懸けで守った、知られざる画家の全貌
オランダでデザインや版画の指導者として教鞭をとるかたわら、さまざまな技法を用いて個性的な版画を数多く制作した、サミュエル・イェスルン・デ・メスキータ(1868〜1944)。ナチスによって家族もろとも連れ去られ、全員強制収容所で亡くなってしまったが、自宅に残されていた作品は、だまし絵で知られるM.C.エッシャーら教え子たちが必死に守ったという。本展は、日本ではまだ聞き馴染みのない稀有なアーティスト、メスキータの全貌を紹介する日本初の展覧会となる。
ポルトガル系ユダヤ人の家庭に生まれ、ハールレムやアムステルダムで、画家、版画家として、また、装飾美術の分野でデザイナーとしても活躍したメスキータ。その一方で、美術学校の教師として多くの学生を指導し、中でもM.C.エッシャーは、彼から最も大きな影響を受けた画家として知られている。1944年に強制収容所に送られ、そこで家族もろとも殺されたメスキータだが、アトリエに残された彼の作品は、エッシャーや友人たちが持ち帰って命懸けで保管し、戦後すぐに展覧会を開催。今日、その名前が忘却されずに残っているのは、エッシャーらの尽力によるところが少なくない。
メスキータの最大の魅力は、木版画の力強い表現にある。鋭い切れ味の線描による大胆な構成、明暗の強烈なコントラストを生かした装飾的な画面は、見る者に強い印象を与える。デザインの分野では、幾何学的な構成を生かし、雑誌の表紙や挿絵、染織デザインなどを手がけ、アートの分野では、主に木版画で人物や動物、植物を題材に白黒のコントラストを強調した作品を数多く残した。単純化された構図と明快な表現、装飾性と平面性が溶け合った画面には、しばしば日本の浮世絵版画の影響が指摘されることも。一転して、ほとんど無意識の状態で浮かんでくる映像を作為なく描いたと言われるドローイングは、表現主義との親近性を感じさせるとともに、シュルレアリスムにおけるオートマティスム(自動筆記)の先駆けともとれる。
没後75年を迎える2019年、知られざる画家メスキータの画業を、版画約180点、油彩や水彩など約60点、総数約240点の作品で、本格的に紹介する日本での初回顧展。初めてにして、一生記憶に残るアーティストになりそうな予感大だ。
展覧会名 | メスキータ |
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会期 | 2019年6月29日(土) 〜 8月18日(日) |
休館日 | 月曜日(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火) |
時間 | 10:00〜18:00(金曜は20:00まで) ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京ステーションギャラリー 千代田区丸の内1-9-1 |
入館料 | 一般 1,100円、高大生 900円、中学生以下無料 |
公式サイト | http://www.ejrcf.or.jp/gallery/ |
問合せ | 03-3212-2485 |
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