鏑木清方と鰭崎英朋 近代文学を彩る口絵 ―朝日智雄コレクション

清方、英朋が描く明治の美しい女性の口絵から 時代の狭間で忘れられた木版口絵の世界を再評価

明治から昭和にかけて活躍した日本画家・鏑木清方(1878〜1972)と、同時期に人気の双璧をなしていた日本画家・鰭崎英朋(1881〜1968)が描く、明治の美しい女性たちの口絵を紹介する展覧会。

1975年以来44年もの間所在不明となっていた幻の名作「築地明石町」が、昨年再発見されたことでも話題の鏑木清方。日本画家として今でも広く知られているが、明治30年代後半から大正5年頃にかけては、文芸雑誌や小説の単行本の口絵というジャンルで活躍していた。その時、清方と人気の双璧をなしていたのが鰭崎英朋で、2人は月岡芳年の系譜に連なると共に、烏合会という美術団体に属した友人同士でもあったのだ。
 物語の世界を華やかに彩る木版口絵は、江戸時代から続く浮世絵版画の系譜に連なるだけでなく、江戸の技術を遥かに上回る精緻な彫りや摺りが施されている。しかしながら、現在の浮世絵研究ではほとんど顧みられることがなく、忘れられたジャンルとなってしまっている。本展では、木版口絵のコレクターである朝日智雄氏の所蔵品の中から約110点を厳選し、歴史に埋もれた口絵の美しさにスポットをあてる。
 特に注目したいのは、鰭崎英朋が泉鏡花の小説『続風流線』の巻頭に付した口絵。竜巻に襲われて船が転覆し、湖に落ちた美樹子を、多見治が救助するという場面が描かれており、画面いっぱいに流れる水の迫力と、水の中の2人の体がうっすらと見えるという、斬新な構図と高度な摺りの技法を兼ね備えた名品だ。

一方、口絵はさまざまな絵師たちによって手掛けられており、その人数は100人以上におよぶ。清方と英朋以外にも、武内桂舟(1861〜1943)、富岡永洗(1864〜1905)、水野年方(1866〜1908)、梶田半古(1870〜1917)の4人の知られざる挿絵画家たちの作品も鑑賞できる。中でも、水野年方は鏑木清方の師匠であり、清方の画業を考える上で欠かすことのできない人物として要注目だ。

鏑木清方 菊池幽芳・著『百合子 後編』口絵 大正2年(1913) ©Akio Nemoto
鏑木清方 菊池幽芳・著『小ゆき 後編』口絵 大正2年(1913)  ©Akio Nemoto
鏑木清方 小杉天外・著『にせ紫 後編』口絵 明治38年(1905)  ©Akio Nemoto
鰭崎英朋 柳川春葉・著『誓 前編』口絵 大正4年(1915)
鰭崎英朋 泉鏡花・著『続風流線』口絵 明治38年(1905)
鰭崎英朋 泉斜汀・著『深川染 前編』口絵 明治40年(1907)

開催概要
展覧会名 鏑木清方と鰭崎英朋 近代文学を彩る口絵 ―朝日智雄コレクション
会期 2020年2月15日(土)〜3月22日(日)
休館日 月曜日(ただし、2月24日は開館)、2月25日(火)
時間 10:30〜17:30 ※入館は閉館時間の30分前まで
会場 太田記念美術館
渋谷区神宮前1-10-10
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入館料 一般 1,000円、高大生 700円、中学生以下 無料
公式サイト http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
問合せ 03-5777-8600 (ハローダイヤル)
2020年2月更新