83歳から描き始めた風景画、貧困と孤独の中で残した日記映画…
自らを取巻く“障壁”を、可能性を持つ“橋”に変えた5人の表現者
表現への飽くなき情熱によって、自らを取巻く障壁を、展望を可能にする橋へと変え得た5人のつくり手たちを紹介する企画展。
5人の生涯に共通するところはほとんどない。しかし、その異なる生き様から生まれた作品のアンサンブル――絵画、彫刻、写真、映像――には、記憶という言葉から導かれる不思議な親和性があるように思われる。
東勝吉(1908〜2007)は、木こりを引退し、老人ホームで暮らしていた83歳のときから本格的に絵筆を握り、大分県由布院の風景画の制作に没頭。99歳で亡くなるまでの16年間で、珠玉の水彩画100余点を描いた。
生前「カメラばあちゃん」の愛称で親しまれた増山たづ子(1917〜2006)は、故郷の岐阜県旧徳山村と村民を記録するため、還暦を過ぎてから写真の撮影に挑戦。10万カットにも上る撮影を行うが、彼女の没後にダム建設によって村は消滅した。
ジョナス・メカス(1922〜2019)は、リトアニアの農家に生まれ、難民キャンプを転々とした後、ニューヨークに亡命。貧困と孤独のなか、中古の16ミリカメラにより身の回りの撮影を始め、類例のない数々の「日記映画」を残す。
敬虔なクリスチャンであったシルヴィア・ミニオ=パルウエルロ・保田(1934〜2000)は、彫刻家であった夫・保田春彦を支え、家事と育児に専念しつつ、寸暇を惜しみ、彫刻と絵画の制作にいそしんだ。
ズビニェク・セカル(1923〜1998)は、反ナチス運動に関わった結果、投獄の憂き目にあい、強制収容所での日々を経て、後年アーティストとなった。40歳を過ぎて取り組んだ彫刻作品は、名状しがたい存在への問いを湛えている。
何ら交わることのなかった個の軌跡が、ともにある世界へと見るものを誘う想像/創造の連鎖。本展が生きるよすがとしてのアートの深みにふれる機会となるだろう。
展覧会名 | Walls & Bridges 世界にふれる、世界を生きる |
---|---|
会期 | 2021年7月22日(木・祝)〜10月9日(土) |
休室日 | 月曜日(ただし7月26日、8月2日・9日・30日、9月20日は開室)、9月21日(火) |
時間 | 9:30〜17:30 ※入室は閉室時間の30分前まで |
会場 | 東京都美術館 ギャラリーA・B・C 台東区上野公園8-36 |
観覧料 | 一般 800円、65歳以上 500円、学生以下・80歳以上・外国籍の方無料 |
公式サイト | https://www.tobikan.jp/wallsbridges |
問合せ | 03-3823-6921 |
記載内容は取材もしくは更新時の情報によるものです。商品の価格や取扱い・営業時間の変更等がございます。