なぜ今、民藝が注目されるのか?ローカルでモダンなその魅力をひも解く
「民衆的工芸」を略した言葉「民藝」。およそ100年も前に柳宗悦、濱田庄司、河井寬次郎が作り出した新しい美の概念で、柳らは若くして西洋の情報に触れ、モダンに目覚めた世代でありながら、それまで見過ごされてきた日常の生活道具の中に潜む美を見出し、工芸を通して生活と社会を美的に変革しようと試みた。そして今、約100年の時を経て、民藝が再び注目を集めている。
本展は、柳らが蒐集した陶磁器、染織、木工、蓑、籠、ざるなどの暮らしの道具類や大津絵といった民画のコレクションとともに、出版物、写真、映像などの同時代資料を展示し、総点数450点を超える作品と資料を通して、民藝とその内外に広がる社会、歴史や経済を浮かび上がらせる。
今回とりわけ注目するのは、「美術館」「出版」「流通」という三本柱を掲げた民藝のモダンな「編集」手法と、それぞれの地方の人・モノ・情報をつないで協働した民藝のローカルなネットワーク。古民藝の調査・蒐集・展示、雑誌の出版、新作民藝の製作からショップ経営まで、それぞれの地域に根ざした人々との協働に注目する。
まず第1章では、のちの民藝運動の揺籃の地となった我孫子の芸術家村での活動に触れる。『白樺』誌上での美術紹介、蒐集のはじまりと美術館建設の夢、それが縁となる友人との出会いと交流など、人とモノが集まる「場」をつくることから始動した民藝運動の前夜を体感する。
そして、1910年代後半〜1920年代、交通網の発達とともに起こった旅行ブームにのって、国内外を精力的に移動し、各地の民藝を発掘・蒐集していった創設メンバーらの旅の軌跡にも注目。柳が、山梨県甲府の旧家で偶然出会い、その後数年に渡って調査の対象とした、木喰上人が彫った仏像なども展示される。
さらに、日本の近代化の矛盾が露呈してきた大正末から昭和の初期にかけて活発化していった、地方の伝統的な生活文化を再評価する動きを紹介。「都市」に対する「郷土」という概念が成立したのもこの時代である。
1930年代〜1940年代に入ると、各地の多様な民藝をひとつの日本に束ねる民藝運動の実践は、戦時下の国内外において、日本文化を表象する役割を担うようになる。そして日本が敗戦から国際社会に復帰する過程で、民藝は再び国際文化交流の最前線に立つ。本展では、戦時から戦後にかけての社会的・文化的な背景を踏まえて、この時期の民藝運動が遺したもの、そしてライフスタイルの変化に合わせて衣食住をトータルに提案していくような民藝運動の拡張の動きをみていく。
展覧会名 | 柳宗悦没後60年記念展「民藝の100年」 |
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会期 | 2021年10月26日(火)〜2022年2月13日(日) ※会期中一部展示替えあり |
休館日 | 月曜日(ただし1月10日は開館)、12月28日(火)〜1月1日(土・祝)、1月11日(火) |
時間 | 10:00〜17:00(金・土曜日は20:00まで) ※入館は閉館時間の30分前まで |
会場 | 東京国立近代美術館 千代田区北の丸公園3-1 >> 会場の紹介記事はこちら |
観覧料 | 一般 1,800円、大学生 1,200円、高校生 700円、中学生以下無料 ※詳細は公式サイトをご確認ください |
公式サイト | https://mingei100.jp |
問合せ | 050-5541-8600(ハローダイヤル) |
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