1年半の休館を経て、リニューアルオープンした国立西洋美術館。その記念として、ドイツを代表するフォルクヴァング美術館の協力を得て、自然と人の対話（ダイアローグ）から生まれた近代芸術の展開をたどる展覧会を開催する。

優れた近代美術の個人コレクターとして知られる、松方幸次郎（1866-1950）とカール・エルンスト・オストハウス（1874-1921）。本展は、それぞれのコレクションを礎に設立された、日独を代表する美術館による初のコラボレーション企画となる。
 両館の開館から現在にいたるまでのコレクションから、印象派とポスト印象派を軸にドイツ・ロマン主義から20世紀絵画までの100点を超える絵画や素描、版画、写真を通じ、近代における自然に対する感性と芸術表現の展開を展観する。
 産業や社会、科学など多くの分野で急速な近代化が進んだ19世紀から20世紀にかけて、芸術家たちも新たな知識とまなざしをもって自然と向き合い、この豊かな霊感源から多彩な作品を生み出している。

なかでも見どころは、ドイツより初来日するゴッホ晩年の代表作《刈り入れ（刈り入れをする人のいるサン＝ポール病院裏の麦畑）》。麦を刈る人物に「死」を、刈られる麦のなかに「人間」のイメージを見たと言われる本作は、ゴッホの死の12年後にオストハウスが購入し、フォルクヴァング美術館開館を飾った記念碑的作品である。
 また、ドイツ・ロマン派の巨匠フリードリヒやドイツが生んだ現代アートの巨匠リヒターなど、知る人ぞ知る魅力的な作品群が数多く出品されるのも今回の見どころ。国立西洋美術館の新規収蔵品で、世界的に注目を浴びている北欧作家ガッレン＝カッレラによる作品も本邦初公開され、日本ではめったに見られない作品が多数展示される貴重な機会となる。
 あわせて、今回のリニューアルにより、ル・コルビュジエ設計による、創建当時の姿に近づいた美術館前庭や西門にも注目したいところだ。

展示では、2つの美術館がともに世界大戦中に数奇な運命をたどり、再建され、それぞれの国を代表する美術館へと発展した歴史をも垣間見ることができる。
 民族紛争や環境破壊などの幾多の問題に向き合わねばならない今だからこそ、作品に描かれる自然と人の対話にそっと心を傾けたい。

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1. フィンセント・ファン・ゴッホ 《刈り入れ（刈り入れをする人のいるサン＝ポール病院裏の麦畑）》
   1889年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館 © Museum Folkwang, Essen
2. カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ 《夕日の前に立つ女性》 1818年頃 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館
   © Museum Folkwang, Essen
3. ゲルハルト・リヒター 《雲》1970年 油彩・カンヴァス フォルクヴァング美術館 © Gerhard Richter 2022 (13012022)
   © Museum Folkwang, Essen
4. アクセリ・ガッレン＝カッレラ 《ケイテレ湖》 1906年 油彩・カンヴァス 国立西洋美術館