ここ数年国内外で非常に人気が高まっているアーティスト・MADSAKI（マッドサキ）の個展が、Kaikai Kiki Galleryで開催中。
 本展では、1980年代にアメリカでブームになったマテル社製の玩具「マスターズオブザユニバース」を題材に、絵画や彫刻の新作を発表。実物のフィギュアを15倍にした迫力の立体や、コミックの表紙をイメージした鮮やかな絵画などが目をひく。

 1980年、6歳の頃に英語を全く話せない状態で、日本の大阪からアメリカのニュージャージへ移住したMADSAKIは、周りに馴染めず家で1人テレビアニメを見ることが多かったという。とりわけ熱中したのは、マスターズオブザユニバースを基にしたアニメ番組「ヒーマン＆ザマスターズオブザユニバース」。たくましい体躯をもつ金髪のヒーロー「ヒーマン」の有無を言わさぬ調子で繰り出す教訓めいた解説は、MADSAKIにとっては英語の教材であり、それを何度も聞くうちに、自分の思いを英語で声に出して伝えられるようになっていった。つまり、ヒーマンこそ、MADSAKIにとって文化の架け橋を作ってくれた作品であり、彼の人格形成の中核を担っているともいえるのだ。ゆらゆらと頼りなく見えるスプレーの軌道も、離れてみると全体的に力強く迷いのない印象をまとっていることが分かる。
 今も抱く自身のアイデンティティや帰属への問いに、幼少期の自分と絶対的ヒーローが道を示してくれるような、そんな潔い新作ではないだろうか。

【会期】9月11日（金）〜10月1日（木）
【休廊日】日月祝
【時間】11:00〜19:00
※入場人数が一定数を超えた場合、入場制限の可能性あり