日本画の素材感と魅力をリアルに体感できる専門美術館
山種美術館
地下に広がる展示室は、床の間に掛けられた日本画のイメージに沿うよう壁は布クロス、床は木材で優しい雰囲気だ。専門家と学芸員の協議により世界初の照明設備が実現。展示によってろうそくの灯から障子越しの自然光まで変幻自在に演出できる。1Fカフェ椿では老舗菊家に特注した展示作品モチーフのオリジナル和菓子も楽しめる
©Koike Norio 2014
奥村土牛、速水御舟、川合玉堂など近代に活躍した画家の日本画を中心に、浮世絵、洋画、書、素描など約1800点を所蔵する日本画専門の美術館。
収蔵品は山種証券の創業者である山崎種二氏と2代目山崎富治氏が集めたもの。若いころに買った酒井抱一の掛軸が偽物と分かって以後、現存画家の作品に傾注した山崎種二氏は、戦前・戦後を通じて私財で画家を支援。こうした交流が信頼へとつながり、質の良い作品、大作を優先的に購入できたという。横山大観らの薦めで1966年に日本橋兜町に開館した山種美術館は、2009年広尾に移転。3代目山崎妙子氏が館長を務め、企画展以外に所蔵品の調査研究、子どもや外国人向けツアーなど普及活動に主力を置いている。
日本画は傷みやすいため常設展示は行わず、企画展を年5〜6回実施。地下展示室は、天井の溝に照明を埋め込み、壁面は4mの一枚ガラスを使って接続部を減らすなど、鑑賞を妨げない工夫を随所に施した。墨の濃淡や顔料に含まれる鉱物の輝きまでリアルに体感できる。テーマや季節に合わせて奥村土牛の《醍醐》や速水御舟《名樹散椿》(重要文化財)などを展示する企画展が用意されているのもファンにはうれしい。図録ではわからない日本画の魅力、心ゆくまで堪能したい。
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上村松園《牡丹雪》 1944年 絹本・彩色 |
小林古径《清姫》のうち「日高川」(部分) 1930年 紙本・彩色 |
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速水御舟《炎舞》【重要文化財】 1925年 絹本・彩色 |
竹内栖鳳《班猫》【重要文化財】 1924年 絹本・彩色 |
横山大観《心神》 1952年 絹本・墨画淡彩 |
山種美術館(広尾)
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2012年6月取材/2014年4月更新
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