西桜公園

西桜公園港区虎ノ門1-17-4

「愛宕山からつながる緑」をコンセプトに整備された都心の公園は、フェンスや段差が無いプレーンでオープンな雰囲気。
虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーから連続する階段植栽や展望台を特徴とし、春には5種類の桜が代わるがわる咲く花見のスポットに。

2020年に竣工した虎ノ門ヒルズ ビジネスタワーの北側に位置する「西桜公園」。虎ノ門ヒルズ駅への地下通路入口やバスターミナルに隣接する、約1200㎡の長方形の敷地に整備されており、フェンスなどを設けず歩道との段差もないシームレスな造りから、公園というよりは、ちょっとした広場といった雰囲気だ。
 港区が所有する区立公園だが、隣接するビジネスタワーのデザインや外構、照明に携わった建築・デザイン事務所が、こちらの設計やデザインも担当したことで、街全体に一体感が生み出されている。

「愛宕山からつながる緑」のイメージ。西桜公園が完成したことで、グリーンネットワークの範囲が広がった。

西桜公園は、虎ノ門ヒルズという一つの街が緑化のコンセプトに掲げる「愛宕山からつながる緑」の一端を担っている。隣接する愛宕山と愛宕グリーンヒルズからの緑道の延長線上に、レジデンシャルタワー(2022年1月竣工予定)低層部の緑、森タワーのオーバル広場、そしてビジネスタワーの壁面緑化や西桜公園が、歩行者デッキで連結。さらに、将来的にはステーションタワー(仮称)や虎ノ門・麻布台プロジェクトなど、周辺の大規模な緑の創出計画も一体となり、虎ノ門ヒルズエリアに、新たなグリーンネットワークが構築される予定だ。
 歩行者目線では分かりづらいが、実はこのエリアの一体感を表現するために、ビジネスタワーとレジデンシャルタワーの特徴的な白い庇の角度はちょうど一直線上に並ぶように設計されているほか、ビジネスタワーの壁面から西桜公園の階段部分の垂直方向にも、連続的な起伏がつけられている。

西桜公園内の階段上から公園を見下ろした様子。
歩行者ネットワークの起点として、気持ちよく散策ができるようにさまざまな工夫がなされている。

さて、園内に注目してみると、真っ先に目に飛び込んでくるのは、側面に植栽が施された中央の階段だろう。上った先には、ビジネスタワーへの入口や森タワーへと繋がる歩行者デッキが続いている。実はこちら、都市公園法上、階段施設として公園内に設置することが困難であったため、階段以外の機能も設けた“展望台”として整備されている。そのため、階段を上った中腹には緑に包まれて休憩できるベンチが2か所設けられたほか、景色を楽しめるように柵はガラス張りになるなど、訪れた人がゆったりできるような機能が備わっている。

展望台に設けられたベンチは、見晴らしが良いのはもちろん、
緑に包まれながら桜が間近で楽しめるという点でもオススメ。

また、階段は蹴上が11センチと通常より低く、その分踏面が広く取られているため、あまり足元に気を取られすぎずに、景色も楽しみながらスイスイ歩けるのもポイントだ。そして、展望台の側面には、段状の植栽が施されており、それが地上36階建ての高層タワー壁面の緑と一体化し、まるで空まで続く緑の絨毯のように迫力ある景観を作り出している。

園内には、5種の桜をはじめ、クチナシ、ヤマボウシ、シラカシ、アベリア、
シャリンバイ、トベラ、ヤブランなど、20種近くの植栽がある。

次に注目したいのは、園内に植えられた植物。ビジネスタワーの北側に位置し、周りにも高いビルがあることから、日照条件が良いとは言えない西桜公園。また、冬でも緑に包まれる景色をつくるため、植っているのは基本的に耐陰性のある常緑樹がメインだ。アセビ、ヤツデ、アベリアなどの低木樹や、ヤブラン、タマスダレなどの背丈の低い植物は、公園と歩道の間や階段植栽部分に多く植えられており、圧迫感を生まない工夫がされている。また、所々にヤブニッケイ、シラカシなどの高木を配することで、単調になりがちな常緑樹の景色にアクセントをつけている。「愛宕山からつながる緑」というコンセプトを表現し、エリア全体に一体感を生むため、愛宕山に自生している植物と同じ種類のものをいくつか植えているのもこだわりだ。

2020年春に咲いた桜の様子。桜の木の成長と共に、この街も発展していくことだろう。

そして、西桜公園という名前が表すように、シンボルツリーとなっているのが、5種類の桜の木。現在はビル群の谷間に位置する西桜公園だが、江戸時代にまでさかのぼると、この辺りには桜川という川が流れており、両岸には美しい桜並木があったという記録が残っているのだそう。桜川町会というこの地域の名称もそれに由来する。
 公園の設計を担った森ビルの設計部は、計画段階で地域の人々からこの話を聞き、桜を中心的な存在として整備することを港区に提案。地域の声を活かしたこの桜の木々が、このエリアの過去と未来、そして心をつなぐ証のような存在として、今後大きく成長していくことに期待したい。

ウッドデッキベンチの周辺には、特に多くの桜の木が植わっている。
高さの違うベンチは、あらゆる世代の人々がざっくばらんに好きな高さで座れるようにという想いが込められている。

できるだけ長い期間桜を楽しめるよう、早咲きのカンヒザクラから遅咲きの関山まで、多種を植えているのも特徴だ。特に、公園奥には、桜の木がウッドデッキのベンチを取り囲むように植えられており、これはベンチに数人で腰掛けながら、花見ができるようにとの配慮から出てきたアイディアだそう。竣工間もない2021年4月にも、まだ枝ぶりは頼りなげながら、しっかり桜は満開となり、休憩する人々の目を楽しませた。今後、虎ノ門ヒルズエリアの発展とともに、地域の人々に愛されながら成長していく桜たちの姿が楽しみだ。

地域とのつながりを意識した部分という意味では、広場もその一つだ。一見変哲もないオープンスペースのようだが、地域のお祭りやイベントなどに今後活用できるように、テントを固定するアンカーや電源が、普段は目立たないように地面や植栽の裏に設置されている。また、ウッドデッキベンチは実は災害時に使用できるかまどベンチになっており、もしもの時に活用できる備えがあることは心強い。

公園のあちこちに、このように有機的な形状が活かされている。
特に、公園の奥側は、コンクリート部と植栽部が複雑に入り組んでおり、より自然に近い景色に感じられる。

また、細かいところだが、植物の植え込み部と、それを囲うコンクリート部が、凸凹とランダムな形状になっていたり、細いすき間にもわざわざ植物を植えていることにもこだわりがある。ビシッと直線で囲えば工事の労力もかからない上に、凸凹にすることで足元が危なくなるのではという懸念の声もあがったそうだが、歩いていると植え込みにぶつかって迂回するというような一見効率の悪い導線をつくることで、普通に歩いているだけでは感じられない、自然が身近にある感覚、自然と触れ合う機会を創出できるのではというデザイナーの狙いが隠されている。

場所柄、子どもが遊ぶことを想定していないため、公園を区切るフェンスが無く、視界も開けたプレーンでオープンな雰囲気の西桜公園。ゆったりと散歩をしたり、人目を避けてリラックスするというよりは、仕事の合間のちょっとした時間に気軽に立ち寄って、クイックリフレッシュするのに最適な公園といえるだろう。その際は、ぜひ各所に散りばめられたこだわりにも注目してほしい。

区立公園という縛りの中でも最大限の“ヒルズらしさ”を
街との調和や自然との共生がテーマ

清水一史氏
Interview
森ビル株式会社 設計部
設計監理部 監理2グループ 外構担当
兼 タウンマネジメント事業部 パークマネジメント推進部
清水一史氏
地域の声で実現。5種の桜が土地の記憶を呼び起こす
西桜公園を設計するにあたり、町会長さんや住民の方から、どんな公園にしたいかというお話しをお伺いする機会を得ました。その際、「かつてこの場所にあったという桜並木の景色を、後世に残していきたい」との皆さんの強い想いをお聞きして、ぜひ桜を中心に据えて公園の計画を立てていこうと考えました。また、そのお話の中で「でも桜は1週間ぐらいで散ってしまうから寂しい。できるだけ長く楽しめる方法はないかな」というご意見もあったので、植える桜の種類を増やすことをご提案しました。3月上旬から咲くカンヒザクラを皮切りに、4月初旬にはソメイヨシノや舞姫、そして元々この辺りに自生していたヤマザクラ、最後は大ぶりの花がつく遅咲きの関山と、敷地内外に5種類の桜の木を植えたことで、長く春を楽しめるようになっています。
公園としては広くない敷地だが、春には長く桜を楽しめることが自慢。
オープンして間もない2021年春に咲いたカンヒザクラには、早速野鳥の姿が。
「虎ノ門ヒルズ」という街の一体感を生み出すためのさまざまな工夫
西桜公園は区立公園なので、さまざまな制約はありましたが、描いた構想を極力実現できるようにデザイナーの皆さんや港区の担当者の方と一緒に、さまざまなアイディアを出し合い、協議を重ねました。展望台と階段をセットで整備したのも、一つの大きなアイディアでした。他にも、虎ノ門ヒルズには「虎ノ門グレー」というテーマカラーがあるのですが、それを西桜公園にも極力取り入れるように行政と交渉して、一部ですが採用しています。また、「愛宕山からつながる緑」のイメージの中で、照明は木々の間から柔らかい月明りが照らすような配置やデザインにしたり、特徴的な階段植栽を夜でも目立たせるために、プランターの下にLED照明を仕込んで、ビジネスタワーの庇と呼応するような夜景を作り出したり。虎ノ門ヒルズの街の一部として私たちが整備する以上、責任とこだわりを持って進めました。
見どころは、公園の中心部から見上げる立体的な緑
公園の真ん中辺りに立って、ビジネスタワーを見上げると、手前の階段植栽とビジネスタワーの壁面緑化がグーンと上まで続いて、体が緑に包まれるような心地良い感覚になります。これは、高層ビルに隣接し、連続性を考えたデザインだからこそ生まれた見どころですので、訪れた際はぜひ体感していただきたいポイントです。特に、植物が旺盛に茂る6・7月頃は本当に美しいのでオススメです。
まるで緑に全身を包まれるような、高層ビルの形状を活かした植栽。
中心部にあるベンチに座って見上げると癒し度抜群。
自然との共生を身近に感じられる場所として、気軽に利用してほしい
近年オフィス内でも魅力的な空間はすごく増えていて、積極的に外に出なくてもいいのではという傾向も確かにありますが、オフィス内と公園の一番の違いって、そこに人間以外の生きものが住んでいて、生態系が育まれていることだと思っているんです。鳥の声を聞いたり、昆虫がいたり、植物が元気に育っていたり、多様な自然を感じられる公園は、やはりリラックスできる場所として大事だなと考えています。ですので、ワーカーの皆さんが日々の業務の中で、フラッと立ち寄ってベンチに腰掛けて休んだり、地域の方々が気分転換で訪れるような、そんな公園になったらいいなと思っています。
西桜公園の歴史
2015(平成27)年
虎ノ門一丁目地区第一種市街地再開発事業の都市計画決定
2017(平成29)年
着工
2020(令和2)年
竣工
港区立西桜公園(虎ノ門)
港区虎ノ門1-17-4
03-6406-6192(虎ノ門ヒルズインフォメーション)
03-3578-2032(芝地区総合支所まちづくり課土木担当)
日比谷線「虎ノ門ヒルズ駅」、銀座線「虎ノ門駅」直結
webサイト
2021年10月取材