戦場のピアニスト

アカデミー賞3部門受賞
日本でのロングラン上映決定。
ポランスキー監督が描く戦争の現実

  • 2003/04/07
  • イベント
  • シネマ
戦場のピアニスト

’02年カンヌ国際映画祭にてパルムドール(最優秀作品賞)受賞。そして’03年 第75回アカデミー賞にて監督賞、主演男優賞、脚色賞と3部門を受賞し、『シカゴ』の6部門に次いで受賞部門数第2位となった本作。日本でも2月15日から公開されているこの作品は、5月末〜6月上旬くらいまで公開延長となります。

戦場のピアニスト

戦争は人や街や社会をどのように変えていってしまうのか。それが怖いくらいによく描かれているのが、この映画だ。原作はポーランドの名ピアニスト、W・シュピルマンの回想録。ユダヤ人である彼(エイドリアン・ブロディ)がナチスの弾圧から逃れ、家族や友人が犠牲になるなか戦場を独り生き抜いた姿が、スクリーンに淡々と映し出される。一貫して伝わってくるのは、戦場にはヒーローはおらず、耐えがたい現実があるだけ、という事実。死んだ敵国の市民を道端に枯葉のようにかき集めて積み上げ、火をつけた後、燃える様を見ながら食事をとる兵士たち。民間人が死んだまま放置されている様子、年老いた労働者が用無しとみなされて射殺されても驚かない周囲の人々……。

シュピルマンは節度や道徳やユーモアのある品のいい芸術家だったが、最後には食べて生き延びる本能だけの生き物になる。そして皮肉なことに、芸術家の本能である表現=ピアノを弾く感覚は研ぎ澄まされていく。それはドイツ将校に促され、彼が久しぶりにピアノを弾くシーンによく表されていた。暗く静かでまばらな音から、少しずつ少しずつ、いずれ堰を切った洪水の濁流のように強く哀しく、いつまでも続いていくかのように終わらない音色。それが彼の体験すべてを物語る。

戦場のピアニスト

10数キロの減量、ピアノの猛特訓を受けて撮影に臨み、演奏シーンまで代役なしでこなしたブロディ。幼いころ、自身もポーランド系ユダヤ人としてゲットーで暮らし、収容所で母を亡くした記憶をもつポランスキー監督。彼らが注いだ心血は受賞につながり、作品が広く認知されるきっかけになった。多くの人々に観てもらうことこそ、彼らの望むところだろう・・。

この映画を観ているとき、現在の情勢に漫然と「反戦」と思いながらも、戦争は自分たちの世界とつながっていないような気持ちがいつのまにか心にあったことに気づき、恥じました。気づかせてくれたことに本当に感謝しています。本作は今このとき、観ておくべき作品なのではないでしょうか。

作品データ

戦場のピアニスト
公開 公開中(ロングラン上映決定)
全国東宝洋画系にてロードショー
制作年/制作国 2002年 ポーランド、フランス合作
上映時間 2:28
配給 アミューズピクチャーズ
原作 ウワディスワフ・シュピルマン
監督 ロマン・ポランスキー
出演 エイドリアン・ブロディ
トーマス・クレッチマン
フランク・フィンレイ
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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