全米のティーンの心をわしづかみ
予想を超えるヒットを果たした、人気ラッパー エミネム初主演作
全米公開1週目の興行収入は約61億円、大作をしのいで一時は興行成績第1位(R指定では『ハンニバル』に次いで歴代2位)を記録、2002年に全米で最も多く売れたサントラ、アカデミー賞最優秀楽曲賞受賞……と、驚きのデータをはじき出したエミネムの初主演作。圧倒的人気を誇る白人ラッパーである彼の半自伝的ストーリーを『L.A.コンフィデンシャル』のカーティス・ハンソン監督が手がけた作品だ。
スター主演の自伝的映画というと、存在を美化して成功までのすばらしき道のりを描くサクセスストーリー・・・を想像してしまうが、本作はそうでもない。キツいユーモアに攻撃的で煽情的なノリ、特に1stや2ndにある下品で差別的なリリック(歌詞)が社会的に問題視され、さまざまな方面からは激しい抗議を受けることもしばしばである彼だが、地元クラブのステージに上がった途端すくんで一言も発することができない、黒人ラッパーたちに「ニセ者の白人ラッパーはひっこめ」とたたみかけられて引き下がる、というシーンも一度や二度じゃない。脆弱な精神や最悪の生活に苦しめられ、それらを乗り越えたからこそ今がある、可能性は誰にでもある、というメッセージがはっきりと伝わってくる。ほぼ自分のキャラクターだったこともあるのだろうが、演技は初挑戦でありながら観づらいこともなく、自然に演じられていた。
男にだらしない母親から愛する妹を守り、寝かしつけたりあやしたりするシーンには心がなごむ。ずいぶん手慣れていると思ったら、それもそのはず。14歳年下の弟がいるだけじゃなく、離婚した元妻との間には7歳になる愛娘がいて、彼はとても大切に育てているという(エミネムは現在30歳)。
本作に主人公の元カノとして出演している、女優にして兄妹ユニット“ブームキャット”でシンガーデビューを果たしたタリン・マニングは、エミネムからこう言われたという。「周りに振り回されるな、振り回せ。妥協は禁物。わかりやすくなるな」。誰にでも当てはまる助言では決してないが、さまざまなストレスの中を生き抜こうとする都市生活者にも、あるシチュエーションにおいては当てはまるかもしれない、かなり響く言葉だ。
見せ場はもちろん路上やステージで展開されるラップ・バトル。重みのあるストリート・ムービーのため基本的にはヒップホップファン向けの作品だが、入門編としてミーハーに観るとしても、価値はそれなりにあるだろう。
公開 | 2003年5月24日公開 日比谷スカラ座1ほか |
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制作年/制作国 | 2002年 アメリカ |
上映時間 | 1:50 |
配給 | UIP |
製作総指揮 | スティーヴン・ソダーバーグ ジョージ・クルーニー |
監督 | カーティス・ハンソン |
出演 | エミネム キム・ベイシンガー メキー・ファイファー ブリタニー・マーフィー エヴァン・ジョーンズ オマー・ベンソン・ミラー |
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