俳優たちの熱演、雄大な自然、時代の逸話……
その魅力をスタッフ陣が誠実に最大限引き出した
静かな感動を呼ぶ正統派ストーリー
原作は「文学の金字塔」と大絶賛を浴びた1977年のベストセラー、チャールズ・フレイヤーによる同名の処女小説。その作品をニコール・キッドマン、ジュード・ロウ、レニー・ゼルウィガー共演にて、『イングリッシュ・ペイシェント』のアンソニー・ミンゲラ監督が映画化。南北戦争時代のアメリカを舞台に、ある男が故郷を目指してたどる長い長い道のりと心の旅。彼とその帰りを信じて待ちつづける女とのメロドラマをベースに、厳しい時代をひたむきに生き抜こうとする人々の姿を描き出した感動巨編である。
1864年、南北戦争の最前線で戦う南部の男インマンは、戦争のむなしさを実感し、瀕死の重傷を負って死に直面したことを機に、本当に大切なことを見出す。病院から抜け出して脱走兵となった彼は追っ手から逃れ、さまざまな事柄を乗り越えつつ、恋人エイダが待つ故郷コールドマウンテンをひたすらに目指す。一方エイダも父を亡くして独りになり、教養はあっても生活力のない彼女はひどく困窮していた。そこへ働き者のルビーが一緒に暮らすようになり、野良仕事や家事などの生きる術をエイダは学んでゆく。
男がさまざまな苦難を乗り越えて故郷へと向かう様、2人の女性が互いを補い合い、支え合って厳しい時代を生き抜いていく姿は、深く静かに感動を呼ぶ。熱演していた俳優陣のなかでも特に印象に残ったのは、たくましい流れ者のルビーを演じて、ゴールデングローブ賞助演女優賞受賞、アカデミー賞助演女優賞を受賞したゼルウィガー。作中で彼女はルビーの飾らない個性をストレートに表現。眉間にしわを寄せたり口は半開きだったり、乏しい表情による不細工っぷりはかなり堂に入っていて、ヒロインの典型的美人・キッドマンと並ぶとあかぬけた南部美人と粗野な田舎娘、という役柄そのもの。「常に美しくありたい。私こそが主役」というような女優としての自我はどうなんだろ? なんて私の老婆心などなんのその、この役について彼女は「ルビーは本当に気に入ってるの」と明るく話している。賞レースに向けての野心もあっただろうが、役の個性を愛して全身で演じたことももちろん本当だろう。スクリーンには生命力みなぎる鮮やかな彼女の姿が、くっきりと映し出されていた。
個人的に美青年の実力派俳優ジュード・ロウが好きなので、彼のことを書きたい気持ちもあったのだが、本作ではゼルウィガーの生き生きとした存在感で頭がいっぱいになってしまった。でもロウだって、生き埋めになったり鎖でつながれたり湿地に腰までつかったりと体当たりの演技を披露して、本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされている。ともかく、俳優らのアツい演技、大地に雄大にそびえ立つ正統派の感動ストーリーを味わえる……ということだ。
公開 | 2004年4月24日公開 日劇3ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2003年 アメリカ |
上映時間 | 2:35 |
配給 | 東宝東和 |
監督・脚本 | アンソニー・ミンゲラ |
原作 | チャールズ・フレイジャー |
出演 | 二コール・キッドマン ジュード・ロウ レニー・ゼルウィガー |
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