バレエ・カンパニー 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
バレエ・カンパニー

名匠アルトマン監督によるバレエ団の群像劇
『スクリーム』の主演女優ネーヴ・キャンベルが
自らの実体験を元に企画・製作・主演した意欲作



 どこまでが現実で、どこからがフィクションなのか。『ザ・プレイヤー』『ショートカッツ』『プレタポルテ』『ゴスフォード・パーク』などで知られ、79歳の今も精力的に創作活動を続ける名匠ロバート・アルトマンの最新作。バレエ団を舞台に、お得意の群像劇でダンサーからスタッフまで関係する人々の姿を映し出した物語。実在するアメリカのバレエ・カンパニーの全面協力を得て完成した、本物のステージもたっぷり楽しめる、ドキュメンタリー風の作品である。

バレエ・カンパニー
 若い女性ダンサーのライは、ダンスと私生活ともにパートナーだったフランキーの心変わりにより、ペアを解消することに。強い悲しみや憤りを感じながらもレッスンに打ち込む彼女に、大きなチャンスが到来。著名な振付家ラー・ルボヴィッチの演目『マイ・ファニーヴァレンタイン』の代役だった彼女は、女性ダンサーの故障により、メインのパートを踊ることになったのだ。舞台で大成功したライは、シーズン最後の作品『青い蛇』でソロを与えられる。
バレエ・カンパニー
 ダンサーは全員本当に踊っているし、映像はとても自然なタッチ。観ている時、「これは実在するバレエ団のドキュメント? でもこの部屋は明らかにセットだし……」と、首をかしげた。それもそのはず、ライ役のネーヴ・キャンベルは9歳から名門ナショナル・バレエ・オブ・カナダのスクールに入学し、15歳でダンサー間の競争によるノイローゼからやめるまでの6年間は、ダンサーを目指していたのだそう。そもそも本作は、キャンベルが製作会社に企画を持ち込み、脚本家とともにジョフリー・バレエに2年間密着して脚本を練り上げ、9年のブランクからバレエダンサーとしての身体や動きを取り戻し、アルトマンが監督を引き受けて、ようやく出来上がった作品……というからすごい。それに加えて、出演しているダンサーたちは俳優ではなく、ジョフリー・バレエの現役メンバー。日々のハードなレッスンはもちろん、団員たちの会話や暮らしぶり、ロッカールームの喧騒などがとてもリアルなのは、こうした理由からだろう。そのため本作では、華やかなステージの舞台裏を覗き見している感覚を楽しめる。


 ドキュメンタリー風といっても、やはりアルトマン作品。だらだらと映しているのではもちろんない。ライのダンサーとしての挑戦、恋や生活などのエピソードによって観客を物語に引き込み、舞台に賭けるダンサーたちの厳しくて地味な日常もしっかりと映し出す。苦しみや辛さを乗り越え、永遠に主役でいられるわけではないからこそ、ダンサーたちは舞台の一瞬で強烈に輝く。その瞬間に対するアルトマン監督の賞賛が、淡々とした映像から、愛情のような空気感とともにやさしく伝わってきた。アルトマンの視点にはいつでも極めて真っ当な部分があり、作品を観ているとなぜかとても安心する。そうしてまた、アルトマン作品を観たくなるのである。
『バレエ・カンパニー』 2004年アメリカ映画=ドイツ映画
データ
2004年5月更新

バレエ・カンパニー

今夏公開
日比谷シャンテシネ、Bunkamuraル・シネマにて
ロードショー

■2003年 アメリカ映画=ドイツ映画
■上映時間1:52
■エスピーオー配給
■監督/ロバート・アルトマン
■脚本/バーバラー・ターナー
■原案/ネーヴ・キャンベル
バーバラ・ターナー
■出演/ネーヴ・キャンベル
マルコム・マクダウェル
ジェームズ・フランコ




プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。