グラフィックに衣装にレトロフューチャー感覚満載
人気俳優とスタイリッシュな映像がカッコいい
人物以外すべてをCGで作り上げた実験的SF映画
ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロウ、アンジェリーナ・ジョリーら、人気俳優の共演による注目のSFムービー。実はこの作品、出演俳優と彼らがまとう衣裳以外は、背景もセットもほぼすべてがCG。とはいえ、手抜きの低予算映画というわけでは決してない。本作で初めて長編の監督・脚本を手がけた若手作家ケリー・コンランの緻密な世界観を具現化した、実験的な作品である。
1939年のNY。突如現れた無数の巨大ロボットからの襲撃を受け、街はパニック状態に陥った。勇敢なパイロットのスカイ・キャプテンことジョー・サリバンは、人々を守るべく反撃を開始。その頃、ジョーのもとへ元カノにして敏腕新聞記者のポリーが訪れ、巨大ロボットにまつわる情報を提供する。
セピアがかった映像は、まるで古いフィルムを観ているかのよう。全編にレトロなニュアンスが漂い、画面の質感のすみずみに至るまでこだわりを感じさせる仕上がりだ。そのレトロフューチャーな趣からか、タイプはまったく違うものの、エッチでキッチュ、スタイリッシュな1967年のB級SF映画『バーバレラ』をなぜか思い出した。
パイロット姿が爽やかなロウ、クラシックなスーツを着こなす記者のパルトロウ、アイパッチがクールな謎の女艦長のジョリーと、俳優たちのコスプレ姿が格好いいのは、言わずもがな。特に主演2人の衣装は、“'30年代の服を現代のデザイナーの視点で”というコンセプトのもと、人気デザイナーのステラ・マッカートニーが手がけ、一流のスタイリングが施されている。
ロボットや飛行機などのウィットを効かせたデザイン、グラフィックのインパクトや面白さは画期的。コンラン氏は、ミュージックビデオの製作にも向いているに違いない。
それにしても、さほど予算もかけていない無名の新人のデビュー作に、なぜこれだけの俳優とスタッフが集まったのか。それはやはり、コンランの作品に懸ける純粋な情熱が呼び寄せたよう。まず本作の前身となったのは、コンランが自前のパソコンで4年かけて作った6分間の映像“World of Tomorrow”。この完成度の高さがプロデューサーの目にとまり、長編製作がとんとん拍子に決まっていったのだそう。そして本作の製作の際には、まずこの6分間の映像と、俳優たちが演じるキャラクターを入れ込んだ本編のCGアニメーションを俳優陣に見せて、シチュエーションや動きなどを指導。その後、ブルースクリーンをバックに収録した俳優たちの演技と、そのほかの映像すべてをデジタル処理。トータルにして6年の歳月をかけて、コンランは自らの構築した世界を納得いくまで、こつこつと手間と時間をかけて、遂に作り上げたのである。
さて、ひとつおことわりを。本作はあくまでも、画期的な映像とこだわりの世界観、豪華俳優の共演を楽しむ映画だ。なぜなら、人以外のすべてがCGのため、やはりリアルなスケール感には欠けるし、初脚本でこなれていないせいか、ひとつひとつの要素はいいのに展開がどことなくぎこちない点は否めない。しかしそうした未熟さを補って余りある、監督の熱意や作家性を応援したいと思い、本作をご紹介することにした。ケリー・コンラン氏の今後の活躍を期待して、ここに大きなエールを送りたい。
公開 | 2005年晩秋公開 日劇3ほか全国東宝洋画系にてロードショー |
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制作年/制作国 | 2004年 アメリカ |
上映時間 | 1:47 |
配給 | ギャガ・ヒューマックス共同 |
監督・脚本 | ケリー・コンラン |
衣装 | ステラ・マッカートニー |
出演 | ジュード・ロウ グウィネス・パルトロウ アンジェリーナ・ジョリー バイ・リン ジョヴァンニ・リビシ |
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