ユーロトレインの出会いから9年
あの恋愛映画の続編が同じメンバーで完成
若かった2人も分別と苦味を知る大人になり……
初々しい2人のリアルな恋を描き、1995年のベルリン映画祭銀熊賞を受賞した恋愛映画『恋人までの距離(ディスタンス)/原題:Before Sunrise』の続編が届けられた。現実と同じく劇中でも時は流れ、9年後となる2004年の2人の姿を描く。旅の途中で恋に落ちたアメリカ人青年ジェシーとソルボンヌ大の学生セリーヌ。半年後にウィーンでの再会を約束し、別れた2人は――? 前作と同様、とてもアメリカ映画とは思えない、フランス映画ばりに恋愛に深くフォーカスした作品である。
今や作家となったジェシーは2004年、セリーヌとの出会いを小説にして出版した。その宣伝のため、ジェシーがパリの有名書店を訪れていると、セリーヌが現れる。彼がアメリカに帰る飛行機が発つまで85分。2人は店を抜け出し、街をさまよいながらさまざまなことを語り始める。
9年前に約束した半年後の再会、今の自分、過ぎ去った9年間の互いへの思い。前作から引き続き主演を演じるイーサン・ホークとジュリー・デルピーの会話にある自然なニュアンスや勢いは、アドリブ? と思ってしまうほど。それもそのはず、本作の製作時はリチャード・リンクレイター監督とホークとデルピーがとてもよく話し合い、脚本は監督のだしたテーマに2人が答えを返し、そこからデルピーが練り上げた台詞をたたき台にホークが脚本の一部を書く、というスタイルでまとめたとのこと。ドキュメンタリー風を得意とするリンクレイター監督の手腕が冴え、引き潮のように遠のいたり親密度をグッと増したりする2人の微妙な距離感や、押し問答のような会話など、普段着の男と女をそのまま描いた雰囲気に共感を覚えた。
結婚とか付き合うとかの約束より、一緒にいることがただただ楽しくて仕方ない。2人でいるのがあまりにも当然すぎて、離れてしまうことや会えなくなることが予測できないし、忘れてしまう。たとえ85分後に別れの時間がくると知っていても、一緒にいると互いのいま以外のことが頭からはずれてしまう。そんな切ない感覚は、いくつになっても変わらない。台詞にもあるように、そういう相手にめぐり合う幸運は、一生に1度あるかないか。だから出会ってしまった2人の物語を観ていると、どんな状況であれ手放しで応援したくなるのだろう。
本作を観た後、『恋人までの距離』を改めてもう一度観て、「いい映画だ」と噛みしめた。実は前に観たときには、物語の機微がまったくわからず共感もできず、2人の会話ばかりで大きな展開のないこの物語がどうしてそんなに高く評価されるのだろう、とかなり不思議に思っていたのだ。今ならわかる。ジェシーとセリーヌの物語は、心から誰かを恋しいと思ったことがあるなら誰にでもわかる、とてもシンプルな物語なのだ。
もともと考えていた続編が、リンクレイター監督とホークとデルピー3人の再会により遂に実現したという本作。ジェシーとセリーヌの行方は、このまま立ち消えてしまうわけにはいかなくなってきた。「2人の一生を追っていけば、愛や恋に関する一大ドキュメントができるんじゃないかな」とホークが語るように、ぜひ同じメンバーで地道にシリーズ作を製作していってほしい。愛のたどる道、行き着く先とは? 一生かけて、最後の最後まで、みせてもらいたいものである。
公開 | 2005年正月第2弾ロードショー 恵比寿ガーデンシネマほかにて上映 |
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制作年/制作国 | 2004年 アメリカ |
上映時間 | 1:21 |
配給 | ワーナー・ブラザース映画 |
監督 | リチャード・リンクレイター |
脚本 | リチャード・リンクレイター ジュリー・デルピー イーサン・ホーク |
出演 | イーサン・ホーク ジュリー・デルピー |
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