喜びと波乱を生き抜いた天才ミュージシャン
レイ・チャールズの半生を描くヒューマンドラマ
フォックスの熱演と熱いサウンドが胸を打つ
「GEORGIA ON MY MIND」をはじめ数々のヒット曲を生み、R&Bやソウルミュージックの基盤を築いた天才ミュージシャン、レイ・チャールズの伝記映画。12回のグラミー賞受賞、ブルースの殿堂入り、黒人の慈善活動といった成熟のときを迎える以前、7歳で失明、愛する女性との結婚、麻薬中毒、愛人関係やトラウマなど、波乱と喜びの双方に満ちた劇的な半生を描く。ほとばしる感情を40の名曲で彩った、熱いヒューマンドラマである。
ジョージア出身の盲目の青年レイは、シアトルでミュージシャンとしてブレイク。最初は騙されたりしながらもショービズ界のビジネスを覚え、ゴスペルシンガーのデラと結婚して息子が生まれ、彼の生活は順風満帆そのもののように見えた。が、その頃すでに彼は、重度の薬物依存へと陥りつつあった……。
周知のとおり、レイはリズム&ブルースとゴスペルを融合した新たなジャンル“ソウル”を音楽界に確立し、人種差別が横行していた1960年代に公民権運動の先駆者となった偉大なミュージシャン。その反面、ヘロイン中毒になり、愛人をつくり、私生児をもうけ、決して聖人ではなかった。少年時代に弟の事故死を食い止められなかったことで罪の意識に苛まれ、長い間トラウマを抱えていたことも含め、弱さやずるさも美化しすぎずに語られる、その率直さが感動を呼ぶ。
主演は『コラテラル』の好演も記憶に新しいジェイミー・フォックス。実は彼もまた3歳からピアノを始め、ピアノの奨学金で大学に進学したほどの腕前の持ち主とのこと。この役を決める際、レイからの連弾の申し入れを受けてその場で一緒に弾き、レイの演奏にフォックスがようやくついていけるようになったとき、「彼に決まりだ」とレイが言い、フォックスに自分の役を与えたのだそう。もともとコメディアンとして知られるフォックスだが、本作の熱演により演技派として高く評価され、早くもアカデミー賞主演男優賞の有力候補と噂されている。
ジャズ、カントリー、R&B、ゴスペル、ソウル……劇中に流れるサウンドやレイの初期のライヴ演奏曲や代表曲はどれも素晴らしい。なかでも「HIT THE ROAD JACK」「WHAT'D I SAY」などのパワフルで扇情的なナンバーになると、身体が自然にリズムを刻み、気持ちいいグルーヴ感がこみあげてくる。2005年1月26日にはサントラ盤『Ray - Super Best』が発売されるため、こちらも楽しみだ。
本作の完成を誰よりも楽しみにしていながら、その完成を待たずに2004年6月10日、肝臓疾患のため73歳で他界したレイ。しかし、テイラー・ハックフォード監督によるレイ本人への15年にわたるインタビューをもとに製作された本作では、さまざまなエピソードが彼の思いや体験をそのままに、映し出されているに違いない。亡くなる数ヶ月前のインタビューで、彼はこのように語ったという。「自分がどこへ行きたいかを知っていて、諦めずに頑張れば、逆境から立ち直れることを人々に知ってほしい」。これは本作を観る人すべてに宛てた彼からのメッセージ。現実にそうしてきたからこそ説得力のある、シンプルで温かい言葉である。
公開 | 2005年1月29日公開 みゆき座、シネマライズほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2004年 アメリカ |
上映時間 | 2:32 |
配給 | UIP映画 |
監督 | テイラー・ハックフォード |
脚本 | ジェームズ・L・ホワイト |
オリジナル&新録音 | レイ・チャールズ |
出演 | ジェイミー・フォックス ケリー・ワシントン レジーナ・キング クリフトン・パウエル ハリー・レニックス |
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