ワイルドな実力派コリン・ファレル主演
アカデミー賞受賞監督オリバー・ストーンが挑む
伝説的な青年王の劇的な生涯を描くスペクタクル大作
2300年前――。20歳で王となり、10年間の進軍で前人未到の大征服を成し遂げた伝説の英雄アレキサンダー王。その32年間の劇的な生涯を、アカデミー賞受賞監督であるオリバー・ストーン監督が映像化した一大スペクタクル。主演にコリン・ファレル、共演にアンジェリーナ・ジョリーやアンソニー・ホプキンスと、存在感あるキャストが出演する話題作である。
紀元前356年、マケドニアの国王フィリッポス(ヴァル・キルマー)と妻オリンピアス(ジョリー)との間に誕生したアレキサンダー(ファレル)。武芸と学問に秀でる彼は、父王の亡き後に20歳で王位を継ぎ、世界最強といわれたペルシア帝国を制圧。アジア侵攻に乗り出すが……。
理想社会の実現を目指し、自らの一生を懸けて世界統一という見果てぬ夢を追いつづけた青年王の栄光と影。約2300年前の史実にまつわる資料を調べ上げ、各方面の専門家と検証を重ねての製作は、容易なことではなかっただろう。ただ正直なところ、映画そのものとして楽しむには少々物足りなさを感じた。壮大な映像とエピソードばかりが前面に押し出され、繊細な感情表現や俳優の個性などは埋没してしまっているような。史実に基づく製作の場合、当事者による記述が少ないと人物の思いや感情は憶測になってしまうため、それを避けたのかもしれないが、大局を描くばかりで心理的な動機や背景がざっくりとしすぎているように思えた。またファレルとジョリーといえば、2人ともセクシーで本能的な演技をするアクの強い俳優として知られているが、あくまでもストイックな展開に、彼ららしいエモーショナルな見せ場はほとんどナシ。そのためか人物や展開にあまり共感できず、大きな感動には及ばなかった。屈指の英雄アレキサンダー伝説入門として観ると、概要を知る上で役立つかもしれない。
本作で見るべきはきっと、歴史に忠実に再現された芸術的な調度品や衣装の数々、大規模な戦闘シーンだろう。瀟洒なバビロン宮殿や世界的遺産であったアレキサンドリア図書館の再現、艶やかなドレスや戦闘用の甲冑などの衣裳、父王が編み出し、アレキサンダーが完成させた古代の戦術フォーメーション“方陣”による激しい戦闘シーンは、本物感が伝わってくる仕上がりだ。アメリカ、アジア、ヨーロッパ、アフリカの4大陸を回り、総製作費200億円をかけたビッグ・プロジェクトだけのことはある。
アレキサンダー伝説に魅了されたストーン監督が、並々ならぬ熱意を注いで遂に映画化したという本作。これだけの大作で贅沢なことかもしれないが、本作はきっと貴重な通過点。監督も出演者もスタッフも、本作の製作によって大いに得たものがあったに違いない。特に才能あふれるタフなファレルは、ここまで滅私奉公的に俳優業に打ち込んだのは本作が生まれて初めてだったのでは?初来日したファレルは会見でこう語っていた。「この映画で確実に何かを得た。けれど何を得たのか、今はまだ客観的に表現することができない。これから少しずつそれが生かされていくと思う」。何かとセクシャルなトークで話題をさらう彼も、今回ばかりはマジメな面持ち。会見も終わる頃に少しだけ、「やっぱりスネ毛はそらない方がいい」などと軽めのジョークで会場の雰囲気をほぐし、いつものやんちゃな素顔をチラリと垣間見せた。個人的には若手の実力派にして超有望株のファレルが、この作品を経て今後どう成長していくか、それがとっても楽しみである。
公開 | 2005年2月5日公開 丸の内ピカデリー1ほか全国ロードショー |
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制作年/制作国 | 2004年 アメリカ |
上映時間 | 2:53 |
配給 | 松竹、日本ヘラルド映画 |
監督・脚本 | オリバー・ストーン |
出演 | コリン・ファレル アンジェリーナ・ジョリー ヴァル・キルマー ロザリオ・ドーソン ジャレッド・レト ジョナサン・リース・マイヤーズ アンソニー・ホプキンス |
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