サハラ−死の砂漠を脱出せよ−

マシュー×ペネロペの熱愛で世界が注目
30年以上も続く人気シリーズを遂に映画化した
新世代アドベンチャー・ムービーの評価やいかに

  • 2005/06/03
  • イベント
  • シネマ
サハラ−死の砂漠を脱出せよ−

全世界で1億2000万部突破。人気作家クライブ・カッスラーの大ベストセラーシリーズが遂に映画化された。海洋保全に務める米国政府の特殊機関NUMA(National Underwater & Marine Agency 国立海中海洋機関)のエージェントにしてトレジャー・ハンターのダーク・ピットが、広大なサハラ砂漠で謎の疫病と伝説の秘宝に迫る。主演に安定した演技力で知られるマシュー・マコノヒー、ヒロインは本格的なアクション作品は初出演のペネロペ・クルス。世界中のカッスラー・ファンが注目しているであろう冒険活劇の仕上がりやいかに?

ナイジェリアとマリ共和国の国境付近で発見された一枚の金貨に、ある秘宝の存在を確信したダーク。彼は相棒アルとともに、秘宝を発掘すべくボートでマリ入りを計画する。一方、死を招く疫病の感染源がマリにあると予測したWHO(世界保健機関)の研究員エヴァは、原因を究明すべくマリを目指す。内紛のため国境が封鎖されているマリへの入国は水路が確実と知ったエヴァは、ピットとアルに同行を志願する。

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原作小説はカッスラーのデビュー作として1973年に始まり、現在17作が発表されている“ダーク・ピット”シリーズ。本作はその中でも最高傑作といわれる第11作『死のサハラを脱出せよ』である。ずば抜けた知力・体力をもつ美丈夫なヒーローによる派手なアクション、グラマー美女とのロマンス、悪の陰謀に宝探しが絡み、エンタメ要素が満載でハリウッド映画にうってつけ。のはずなのだが、今回はどうも、こぢんまりとまとまりすぎているような。もちろんこれはこれで普通に楽しめる作品だが、原作の魅力が生かしきれていない感覚は否めない。個人的には、もっと想像力をかきたてたり高揚感を高めたりするカメラワーク、静と動のメリハリを効かせた演出など、もっとディテールを丁寧に作り込むべきだったのでは、と思った。

サハラ−死の砂漠を脱出せよ−

実は本作で原作者カッスラーは、映画を製作したクルセイダー・エンターテインメントを訴えている。彼曰く、クルセイダー・エンターテインメントは原作者に無許可で映画のストーリーを15カ所も変更した、とのこと。この件でカッスラーは1000万ドル(約11億円)の損害賠償を請求した、と報道されている。

監督はスティーブン・スピルバーグに見出され、TVシリーズ『TAKEN』でエミー賞を獲得した新鋭ブレック・アイズナー。劇場映画は初という彼には、本作は少し手に余ったのかもしれない。もしや脚本や撮影も力不足だったのでは、と思いスタッフリストを確認すると、なんと資料にその表記がない。カッスラーによる提訴と、何か関わりでもあるのだろうか。

サハラ−死の砂漠を脱出せよ−

ともあれこの映画で一番の話題は、なんといってもマコノヒーとクルスの熱愛だろう。そのラブラブぶりは来日記者会見でもかなりのもので、特にマコノヒーのあけっぴろげな溺愛ぶりには思わず笑ってしまった。“プライベートな質問はNG”としておきながらも彼はのろけたくて仕方ないらしく、クルスの美しさの秘訣について質問があると「一緒にいる人によるんじゃないかな(笑)」と自らそのネタにつなげていた。すでに婚約したという噂もある2人。トム・クルーズと別れ、“共演者キラー”の異名が囁かれていたクルスもこれで落ち着くだろうか。

原作同様、映画でもシリーズ化が予定されているという本作。第1作である今回はいろいろ問題もあったが、せっかくなので第2弾につなげてほしい。原作は30年以上も続いている人気小説なのだから、次回からはその世界観に惚れ込んでいるベテランの監督や撮影スタッフを起用し、その魅力をスクリーンでどこまで表現できるかを徹底的に追及することもできるはず。そしていつかはカッスラーも小説の読者も映画の観客も、すべての人たちが心から満喫できるような作品が完成するよう、今後に大いに期待している。

作品データ

サハラ−死の砂漠を脱出せよ−
公開 2005年6月11日公開
全国松竹・東急系にてロードショー
制作年/制作国 2005年 アメリカ
上映時間 2:04
配給 ギャガ・コミュニケーションズ
原題 原題
監督 ブレック・アイズナー
原作 クライブ・カッスラー
出演 マシュー・マコノヒー
ペネロペ・クルス
スティーヴ・ザーン
ウィリアム・H・メイシー
:あつた美希
ライター:あつた美希/Miki Atsuta フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。
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