オリバー・ツイスト 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
オリバー・ツイスト

© 2005 Oliver Twist Productions LLP
文豪ディケンズの名作をポランスキー監督が映画化
混沌とした19世紀初頭のイギリスを生き抜く
いたいけなオリバー少年の心の旅を描く



 恐慌状態の19世紀イギリス。孤児である9歳のオリバーは些細なきっかけで救貧院を追われ、新たな奉公先でもイジメに遭う。奉公先を飛び出したオリバーは身ひとつでロンドンを目指し、100km以上もの道のりを踏破。ようやくロンドンにたどり着くも、行き倒れ寸前だったオリバーはスリの少年ドジャーと出会い、うながされるまま隠れ家へ。そこで、老獪な老人フェイギンが仕切るストリートキッズたちとともに暮らすことになる。


 信じる者は救われる。因果応報。まっすぐな心を持ち続けていれば悪は滅び、善は幸福へと導かれる、という王道の古典的テーマが描かれている真っ当なヒューマンドラマである。苦難の連続に翻弄され、悪に染まりかけながらも善を貫ぬこうとするオリバー少年の清廉なさまが心を洗う。また悲哀と赦しなど、善と悪だけでは割り切れない要素も表されているところが今回の映画版の特徴だ。現代社会ではなかなか信じきることが難しい、ある意味ファンタジーの域にある正道を真摯に描いた監督の姿勢に心を打たれた。
オリバー・ツイスト

 1937〜39年に発表された原作小説には、産業革命で貧富の格差が顕著になり、貧しい人々を苦しめる社会に対するディケンズの強い批判が込められているとのこと。とはいえ生真面目なだけでなく、ひとりの少年の冒険と成長を描くこの作品について、「英国的なユーモアや皮肉がたっぷりあるところがとても気に入っている」とポランスキー監督は語る。そもそも監督が本作を選んだ理由は、「自分の子どもたちのために1本撮らなくては」と思ったからとか。そのポランスキー監督の実の娘と息子が端役で出演、というのもご愛嬌だ。
 どこかもの憂げなオリバーを演じたのは本作が映画初主演のバーニー・クラーク(撮影当時11歳)。強い個性があるわけではないが、弱すぎることなく、物語にちょうど良くハマっている。共演はサーの称号をもち、舞台俳優として高く評価されているベン・キングズレー(フェイギン役)など、イギリスの第一線で活躍する英国人俳優が名を連ねている。


 19世紀ロンドンの街並を忠実に再現した一大セットをプラハの撮影所に制作、正確な時代考証に基づいた大量の衣装作りなど、製作費に『戦場のピアニスト』の2倍である80億円を投入したという本作。芸術性を高める正しい投資がなされたわけだが、地味なせいかアメリカではあまりウケず、興行収入はいまひとつとのこと。ポランスキー監督をはじめ、質の高い誠実な映画作りをする人々がこれからもハリウッドで積極的に活動できるよう、本作が全世界の幅広い層に支持されることを祈っている。
『オリバー・ツイスト』 2005年 フランス・イギリス・チェコ映画
データ
2005年12月更新

オリバー・ツイスト

2005年1月28日公開
日比谷スカラ座ほか
全国ロードショー

■2005年 フランス・イギリス・チェコ映画
■上映時間2:09
■東芝エンタテインメント東宝東和配給
■監督/ロマン・ポランスキー
■脚本/ロナルド・ハーウッド
■原作/チャールズ・ディケンズ
■出演/ベン・キングズレー
バーニー・クラーク
ジェイミー・フォアマン
ハリー・イーデン リアン・ロウ



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。