陽気なギャングが地球を回す 試写会日記 毎週、熱田美希から映画ファンの皆さんへ熱いメッセージ!傑作でも愚作でも、映画ってやっぱり素敵!!
陽気なギャングが地球を回す

© 2006「陽気なギャングが地球を回す」製作委員会
特殊能力をもつ4人が強盗チームを結成
豪華メンバーがクールにコミカルに立ち回る
和製ギャング・エンタテインメント!



 ファンから映画化を切望されていた小説が、遂にスクリーンに登場。出演は大沢たかお、鈴木京香、佐藤浩市、そして本作が映画デビューとなる故・松田優作の次男、松田翔太。原作は1970年代生まれで初の直木賞候補となったことでも知られる若手人気作家・伊坂幸太郎の同名小説。ユニークで格好いい強盗4人組の顛末を描く、スタイリッシュな和製エンタテインメントである。


 他人の嘘がわかる成瀬(大沢)、秒単位で正確な体内時計を刻む雪子(鈴木)、演説マニアの響野(佐藤)、天性の凄腕スリ師・久遠(松田)。実社会では役に立たない特殊能力をもつ彼らはひょんなことで出会い、銀行強盗チームを結成。大胆かつ周到な準備で、計画を成功させている。が、ある日の強盗帰り、奪った金を謎の覆面野郎に強奪されてしまう。
陽気なギャングが地球を回す

 日本版『オーシャンズ11』、実写版『ルパン三世』。美術やファッション、音楽と映像のスタイリングが気持ちいい作品だ。キメキメではない、ほどよく抜けている感覚が楽しい。テーマ曲のひとつが『オーシャンズ11』そっくり、という確信犯ぶりも素直で好い。前田哲監督は『ルパン三世』が大好きとのこと。車が跳ぶありえないカーチェイスはまさにそれ風だ。そして物語の中盤にさらりと入る、成瀬と雪子の恋愛ドラマも魅力的。ベタベタドロドロしなくとも、2人のちょっとしたやりとりや会話、静かで熱い成瀬の態度でその愛が観客に伝わってくるところがスマートだ。
陽気なギャングが地球を回す
 鈴木京香のコケティッシュなシングルマザー姿はもちろん、とりわけ大沢、佐藤、松田による銀行強盗シーンが実に痛快。スラッとスタイルのいい3人が、最後に必ず壇上から気取って挨拶する様は、確かに思わず拍手をしたくなる。また脇を古田新太、大杉漣、篠井英介、松尾スズキなどの個性派が固め、キュートな加藤ローサが彩りを添えている。


 美術と衣裳には特にこだわったという本作。“地面から5cm浮いた感じの世界観”という前田監督のイメージが巧く作り上げられている。美術では、行定勲監督や堤幸彦監督の作品でも活躍する佐々木尚が手腕を発揮。響野の経営する喫茶ロマンのキッチュな内装、武器や仕掛けを手配する田中商店のアイテム類など遊び心があふれている。強盗シーンの衣裳には、サーカス風というグラムロックにも通じる派手な色柄のセットアップ、禁酒法時代のシカゴ・マフィアを思わせるピンストライプのスーツなどを用意。古きよき銀幕の女優を髣髴とさせる雪子のファッションも見どころだ。


 愛と金と妄執と信念と。最後に笑うのは誰? 仕掛けられた罠の行方とその目的は? ドキドキワクワクが手際よく調理された、軽くともクセになる味わいである。
『陽気なギャングが地球を回す』 2006年日本映画
データ
2006年4月更新

陽気なギャングが地球を回す

2006年5月13日公開
池袋シネマサンシャイン、渋谷アミューズCQNほか全国ロードショー

■2006年 日本映画
■上映時間1:32
■松竹配給
■監督/前田哲
■原作/伊坂幸太郎
■出演/大沢たかお
鈴木京香
松田翔太
佐藤浩市
大倉孝二
加藤ローサ
三浦知紘
吉田新太



プロフィール
 
あつた美希 あつた美希
あつた美希
フリーライター、アロマコーディネーター、クレイセラピスト インストラクター/インタビュー記事、映画コメント、カルチャー全般のレビューなどを執筆。1996年から女性誌を中心に活動し、これまでに取材した人数は600人以上。近年は2015〜2018年に『25ans』にてカルチャーページを、2015〜2019年にフレグランスジャーナル社『アロマトピア』にて“シネマ・アロマ”を、2016〜2018年にプレジデント社『プレジデントウーマン』にてカルチャーページ「大人のスキマ時間」を連載。2018年よりハースト婦人画報社の季刊誌『リシェス』の“LIFESTYLE - NEWS”にてカルチャーを連載中。